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加速者です。たいてい失敗しています。 映画と音楽から受け取るものを形にするため、not…

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加速者です。たいてい失敗しています。 映画と音楽から受け取るものを形にするため、note開始。

記事一覧

『まともじゃないのは君も一緒』普通さより大事なもの

 数学一筋の予備校講師・大野は、普通の結婚を夢見ながらも「普通」が何なのかを分からずにいた。そんな時、彼の前に自らを恋愛上級者だと思いこむ女性が現れる。彼女は実…

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13時間前
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『タクシードライバー』名優ロバート・デ・ニーロ、キャリア最高の怪演

 デ・ニーロ出演作品で最も好きなのは『ディア・ハンター』なのだが、この映画のデ・ニーロは凄すぎる、どうしたらいいの?ってくらいすごい。銃撃シーンの動きは脱帽する…

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1日前
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世界情勢も日本の状況も大変になってきたけど、それと相対的に文化が面白くなってる。特にアメリカ!それと、new jeansの最期のきらめき。コロナは文化的隆盛を生まなかったが、世界中で貧富の差が拡大し、戦時下であることが、確実に響いてきているのを感じる。

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1日前
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『スワロウテイル』映画的自殺と感動的な詩情

 小林武史のテーマ曲が響き渡ると、「円都」にまた私は帰って来て、切なさでいっぱいになる。すぐに、演技に対して行き届いていない演出、無駄にブレるカメラ、逆光ばかり…

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2日前
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『バービー』架空の世界よりも現実が素敵なすべての理由

 グレタ・ガーウィグがこんな最高な娯楽大作を撮ると予想していた人は、前作の時点で一人もいなかっただろう。バービーワールドはとても良く作られているが、それ以上に素…

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5日前
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『アメリカン・ハッスル』詐欺師が捨てられなかった友愛とは?

 引きから何度も効果的にクローズアップされる主人公たちを、ラッセルは狂おしくもリアルかつエモーショナルに描く。役作りで激太りにして髪を引き抜いたクリスチャン・ベ…

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10日前
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『セブン』観る者の心に傷を残す7つ目の大罪の恐ろしさ

 引退を控えたベテラン刑事サマセットは、新米刑事ミルズと共に殺人事件を捜査することになる。2つの現場には、同様に文字が残されていた。それを見た彼は、キリスト教に…

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2週間前
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『ほつれる』明らかになる終わりとずっと続いていた終わり

 加藤拓也監督の2作目『ほつれる』について。今自分が夢中になっている行為が過ちだと分かっているときの苦しさ。それがずっと続いていく映画。夢中になっていたことが終…

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3週間前
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今を生きるセックス・シンボル、デュア・リパの強烈な魅力

 デュア・リパの最新曲のビデオを観て彼女の魅力について感じたのが、性的エナジーの解放、男性とのそのシェア、声色・音の美的センスの追求、ファッションを含めたセクシ…

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4週間前
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『エイリアン』おぞましい恐怖に支配されるSFホラーの金字塔

 鑑賞時、精神状態が悪かったこともあるが、静謐の中で感覚が研ぎ澄まされ、かつてない恐怖に襲われた。リドリー・スコットは、監督2作目にして、焼き直しの決してできな…

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1か月前
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『ブロークバック・マウンテン』恋により失い、恋により得た人生

 アメリカ中西部の広大な山地を舞台にした、2人の男のフラジャイルな恋。結婚生活が上手くいかなかったのは、彼ら2人の気質か?それとも、秘密の恋の時間があったからか?…

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1か月前
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『グラン・トリノ』血の繋がりとは異なる大きな友情

 イーストウッドの登場とともにビビる。スクリーンで観てきたどの彼よりも、怖い。ずっと怒ってる。上手く子どもたちとやってこれなかった。足りないものばかり。  そん…

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1か月前
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『アイズ・ワイド・シャット』キューブリック最終作にして彼の新たな魔法

 数多の傑作を世に出してきたキューブリックの遺作。夫婦の関係性についてのドラマでありつつ、正体の分からない敵からの恐怖を描くサスペンスとしても一級。  また、ト…

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1か月前
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『羊たちの沈黙』美しき捜査官と天才的凶悪犯の深い繋がりとは?

 観ている間、ずっと夢中だった。完璧な映画。悪いところが見当たらない。ジョディ・フォスターの最高傑作。彼女の聡明さ、美しさ、繊細でありながら大胆な演技。魅了され…

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1か月前
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私たちは感情により思考を歪曲させられる。不安や絶望のなか、ポジティブな思考をするのは難しい。明けない闇はないから、今を生きつつもっと先を見よう。幸せのドアは何年も先で開かれている。未来の破片を拾って、周りと助け合っていこう。

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1か月前
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『イングリッシュ・ペイシェント』戦時下の後悔と旅立ちの叙事詩

 第二次世界大戦下の、北アフリカを舞台にした作品。撃墜されたイギリスの飛行機から、全身に火傷を負った男が助け出された。記憶を失っていたために英国人の患者と呼ばれ…

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1か月前
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『まともじゃないのは君も一緒』普通さより大事なもの

『まともじゃないのは君も一緒』普通さより大事なもの

 数学一筋の予備校講師・大野は、普通の結婚を夢見ながらも「普通」が何なのかを分からずにいた。そんな時、彼の前に自らを恋愛上級者だと思いこむ女性が現れる。彼女は実際には恋愛経験が無いにも関わらず、普通の恋愛に憧れる大野に対して思いつきでアドバイスをする。そして、大野が自分の言葉を信じて行動する姿を見た彼女は、彼を利用したある計画を思いつく。
 清原果耶のコメディエンヌぶりがめっちゃ強烈で、しかもso

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『タクシードライバー』名優ロバート・デ・ニーロ、キャリア最高の怪演

『タクシードライバー』名優ロバート・デ・ニーロ、キャリア最高の怪演

 デ・ニーロ出演作品で最も好きなのは『ディア・ハンター』なのだが、この映画のデ・ニーロは凄すぎる、どうしたらいいの?ってくらいすごい。銃撃シーンの動きは脱帽するほどリアルでイマジネイティブ。デ・ニーロに釘付けになる。狂気と哀愁の演じ分けも巧みで、表情で繊細に表現されている。
 また、デ・ニーロ演じるトラビスのベッツィーに対しての言動が、今じゃストーカーで、自分と照らし合わせて、めっちゃ応援してしま

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世界情勢も日本の状況も大変になってきたけど、それと相対的に文化が面白くなってる。特にアメリカ!それと、new jeansの最期のきらめき。コロナは文化的隆盛を生まなかったが、世界中で貧富の差が拡大し、戦時下であることが、確実に響いてきているのを感じる。

『スワロウテイル』映画的自殺と感動的な詩情

『スワロウテイル』映画的自殺と感動的な詩情

 小林武史のテーマ曲が響き渡ると、「円都」にまた私は帰って来て、切なさでいっぱいになる。すぐに、演技に対して行き届いていない演出、無駄にブレるカメラ、逆光ばかりの照明、功を奏さない暗い映像で、魔法は解ける。そんなときに訪れる、信じられないほど美しい映像にまたムーブされる。その連続。良い面と悪い面がこんなにはっきりしている映画も珍しい。
 超豪華キャストの中で最高の演技を見せた、当時少女にして新人の

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『バービー』架空の世界よりも現実が素敵なすべての理由

『バービー』架空の世界よりも現実が素敵なすべての理由

 グレタ・ガーウィグがこんな最高な娯楽大作を撮ると予想していた人は、前作の時点で一人もいなかっただろう。バービーワールドはとても良く作られているが、それ以上に素晴らしい現実世界。生きて死ぬ世界がこんなに美しいとは。対比により顕になる世界のかけがえなさ。あらゆる醜さを含めて美しい。それを体現するマーゴット・ロビーの変わりゆく演技の素晴らしさ。全てを決定づけるビリー・アイリッシュの主題歌の美しさ。感動

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『アメリカン・ハッスル』詐欺師が捨てられなかった友愛とは?

『アメリカン・ハッスル』詐欺師が捨てられなかった友愛とは?

 引きから何度も効果的にクローズアップされる主人公たちを、ラッセルは狂おしくもリアルかつエモーショナルに描く。役作りで激太りにして髪を引き抜いたクリスチャン・ベールの演じる詐欺師の生き様のかっこよさ、エイミー・アダムスのフェロモンたっぷりのセクシーさ&タフネス、ハイ・エナジーな狂気のブラッドリー・クーパー、ビッチでイルなジェニファー・ローレンスなど、俳優陣の魅力を余すことなくスクリーンに焼き付けて

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『セブン』観る者の心に傷を残す7つ目の大罪の恐ろしさ

『セブン』観る者の心に傷を残す7つ目の大罪の恐ろしさ

 引退を控えたベテラン刑事サマセットは、新米刑事ミルズと共に殺人事件を捜査することになる。2つの現場には、同様に文字が残されていた。それを見た彼は、キリスト教における「七つの大罪」に絡めた犯行と気づき、殺人が続くことを予測するのだが。
 今観て思うのは、ブラッド・ピットには現在ほどの表現力がない。ただそれはミルズの未熟さを際立たせていて、この映画の中で上手く機能している。そして、むちゃくちゃかっこ

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『ほつれる』明らかになる終わりとずっと続いていた終わり

『ほつれる』明らかになる終わりとずっと続いていた終わり

 加藤拓也監督の2作目『ほつれる』について。今自分が夢中になっている行為が過ちだと分かっているときの苦しさ。それがずっと続いていく映画。夢中になっていたことが終わりを迎えても、過ちは続いていく。その苦しみに決着が着くときがタイトルで、それがラストなんだけど、何も解決しておらず、ただ終焉を迎えたという。一瞬の解放感とやり場のない憂鬱。
 事実を回避しながら会話をしていた夫婦が、事実を話したとき、堰を

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今を生きるセックス・シンボル、デュア・リパの強烈な魅力

今を生きるセックス・シンボル、デュア・リパの強烈な魅力

 デュア・リパの最新曲のビデオを観て彼女の魅力について感じたのが、性的エナジーの解放、男性とのそのシェア、声色・音の美的センスの追求、ファッションを含めたセクシーさというふうにオーソドックスなのだが、そのビジュアルのセクシーさと曲のエナジーの強さで、問答無用の魅力を放っている。
 私はオリヴィア・ロドリゴも好きだが、彼女をシンガーソングライターとして愛聴しても、彼女にアイコンとしての魅力を感じない

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『エイリアン』おぞましい恐怖に支配されるSFホラーの金字塔

『エイリアン』おぞましい恐怖に支配されるSFホラーの金字塔

 鑑賞時、精神状態が悪かったこともあるが、静謐の中で感覚が研ぎ澄まされ、かつてない恐怖に襲われた。リドリー・スコットは、監督2作目にして、焼き直しの決してできない、SFホラーの金字塔を立ち上げた。本作以降、続編だけでなく、後発のSFホラーは数多く作られたが、この映画には遥かに及ばないだろう。
 それにはH・R・ギーガーのエイリアンのおぞましいデザインも影響しており、その登場の恐怖をスコットは巧みに

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『ブロークバック・マウンテン』恋により失い、恋により得た人生

『ブロークバック・マウンテン』恋により失い、恋により得た人生

 アメリカ中西部の広大な山地を舞台にした、2人の男のフラジャイルな恋。結婚生活が上手くいかなかったのは、彼ら2人の気質か?それとも、秘密の恋の時間があったからか?その両方か?
 ヒース・レジャーはほぼ表情を変えず、ときに変えた瞬間、エモーションが爆発していた。ギレンホールはすぐに所作にあらわれる役で、2人の交錯する演技と一線を越える際のリアルさが最大の見もの。
 同性愛を異質なものというより、誰で

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『グラン・トリノ』血の繋がりとは異なる大きな友情

『グラン・トリノ』血の繋がりとは異なる大きな友情

 イーストウッドの登場とともにビビる。スクリーンで観てきたどの彼よりも、怖い。ずっと怒ってる。上手く子どもたちとやってこれなかった。足りないものばかり。
 そんなとき隣に住んでいるモン族の家族と親しくなる。自然に国や世代を越えた友情が生まれる。イーストウッド演じるウォルト自身も変わっていく。その表現は一筋縄にはいかない。言葉遣いも表情も、観客から観てほとんど変わらないのだ。男は行動で示すべき、とイ

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『アイズ・ワイド・シャット』キューブリック最終作にして彼の新たな魔法

『アイズ・ワイド・シャット』キューブリック最終作にして彼の新たな魔法

 数多の傑作を世に出してきたキューブリックの遺作。夫婦の関係性についてのドラマでありつつ、正体の分からない敵からの恐怖を描くサスペンスとしても一級。
 また、トム・クルーズの魅力でいっぱいの作品でもある。彼の表情、仕草はとても繊細で、彼自身の優しさが役に表出している。
 ポルノとしての側面では、官能的に思えるシーンと、性的に何も感じないシーン、グロテスクなシーンと、様々だったが、これはもちろんキュ

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『羊たちの沈黙』美しき捜査官と天才的凶悪犯の深い繋がりとは?

『羊たちの沈黙』美しき捜査官と天才的凶悪犯の深い繋がりとは?

 観ている間、ずっと夢中だった。完璧な映画。悪いところが見当たらない。ジョディ・フォスターの最高傑作。彼女の聡明さ、美しさ、繊細でありながら大胆な演技。魅了されっぱなしだった。アンソニー・ホプキンスは、レクター博士が本当に存在するかのような怪演。また、ハワード・ショアの荘厳な劇伴も、この映画をアップグレードさせている。そして、ジョナサン・デミはカメラワークの流麗さでもって、この映画の力を決定づけて

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私たちは感情により思考を歪曲させられる。不安や絶望のなか、ポジティブな思考をするのは難しい。明けない闇はないから、今を生きつつもっと先を見よう。幸せのドアは何年も先で開かれている。未来の破片を拾って、周りと助け合っていこう。

『イングリッシュ・ペイシェント』戦時下の後悔と旅立ちの叙事詩

『イングリッシュ・ペイシェント』戦時下の後悔と旅立ちの叙事詩

 第二次世界大戦下の、北アフリカを舞台にした作品。撃墜されたイギリスの飛行機から、全身に火傷を負った男が助け出された。記憶を失っていたために英国人の患者と呼ばれることになった彼は、収容された野戦病院で看護婦ハナの介護を受け、少しずつその記憶を回想する。それは人妻との、砂漠での熱狂的な恋の物語だった。
 サハラ砂漠での広大な撮影に魅せられる。見事だった。アンソニー・ミンゲラの演出に特筆すべきものは感

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