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あのときの一言(7)「これだけは負けないっていうことは何ですか?」

挨拶

こんにちは。みっつと申します。工学部化学系の研究室で博士課程を修了したのちに、現在は国内の消費財メーカーで仕事をしています。
この連載では、大学院生活や社会人として過ごす中で出会った、印象的だった言葉について振り返っています。言葉をかけてくださった方や自分の当時の状況、その時の気持ち等を振り返りながら、その言葉が自分にとって重要だった理由や、今の自分にどう影響しているのかについてあらためて考えてみています。
どれも些細なN=1の体験かもしれませんが、自分にとっては重要な出来事でした。できるだけ生々しく書けたらいいなと思っています。この記事を読むことを通して、なにか気づいたり考えたりするきっかけになったら幸いです。


今回紹介する一言

今月は「これだけは負けないっていうことは何ですか?」という言葉について、振り返ってみようと思っています。大学院の修了間近の頃、研究室の飲み会の席にて、同じ研究グループだった後輩から問いかけられた時のものです。
自分の得意なことがわからなくなったり、自分のことを他人と比べてしまって落ち込みそうになるときなどに、今でもふと思い出すことがある、印象的な質問でした。


あの時

博士論文の審査や公聴会も終わり、修了に向けての準備をしていた頃のことでした。研究室で開催された打ち上げの二次会だったと思います。指導教官の先生と、後輩数人と、座敷の端でテーブルを囲んで話しているときのことでした。

どういう話の流れだったのかはあまり覚えていませんが、後輩の一人が上記の質問を投げかけてくれました。
彼は学力や研究能力、発想力などもさることながら、いわゆるコミュニケーション能力や人柄も兼ね備えた、紛うことなき次世代のエースという後輩でした。

そんな後輩からの問いだったので、(正直お前にゃかなわんよ…)といったようなことも胸の中でちらついたものの、本人がそのような答えを求めているわけではないのが分かっていたので、少し間をおいて「少なくとも僕らしさであれば君には絶対負けないよ」と伝えました。
肩透かしのような回答に思われてしまったかもしれませんが、就職活動や、最終年次の研究生活を過ごす中で考えていたことだったので、なにか伝わってくれたらいいなと思って答えたものでした。

それなりにお酒も飲んでいましたし、その他の話題は何も覚えていませんが、このやり取りだけはその後もずっと頭に残っています。
返答を受け取った彼が何を思ったか、そもそも会話を覚えているかどうかも不明ですが、修了直前のタイミングであらためて真正面から問いかけられたことで、僕としても考えるきっかけをもらえたので訊いてくれて良かったと思っています。

今の解釈

その後輩と僕との関係性の補足として、研究室では同じグループの研究テーマを扱い、数年間は席も隣り合わせで遅くまで議論を交わすこともしばしばという距離感でした。深夜に資料を作りながら「ポケモン言えるかな?」を一緒に歌っていたのはいい思い出です。
誕生日の関係から「実は数ヶ月しか年齢かわらないよね」ということもよく話していたこともあり、学年の違う後輩というよりは尊敬できる同僚、もしくはライバルのような目で彼のことを見ていました。

そういう間柄の上であらためて問われたことだったので、単に修了前の先輩に好きなことを聞くコーナーというわけではなく、彼も何かしら思うことがあった上で質問してきているのだろうと思いました。

「これだけは負けないこと」については、特に就職活動中によく考えさせられました。
研究成果がどれだけあるとか、〇〇が得意だとか、自分の特徴を表そうと数字や事実、実績をいくら並べても「上には上がいる」という感覚がつきまとってきます。何をやったとしても、1番になれることはそうそうありません。
こうしたことを考える中で最終的には、一つの特徴だけで自分を表すことを止めて、できること・できないこと、そしてそれぞれのレベル感まで含めて、そのバランスを見せる、表現することを意識して目指していました。こうしたバランス感については簡単に優劣をつけることは難しいので、自分ならではの独自性を見てもらえるだろうと考えて、就職活動期を過ごしていました。

これは就職活動だけにとどまることではないとも思っています。研究や仕事、その他のことにおいても、目の前の事に対して自分の持っているものを複合的にぶつけることが大切であるということです。
過去に経験したことや身につけたもの、知ったことの合わせ技で取り組んで初めて、自分が実行する価値があるのではないかと感じています。そして「自分なりの取り組み方で価値を出す」という点においては、自分はきっと他人には負けないと思えるようになりました。

そういう経緯があったので、後輩の問いかけに対しては
「僕らしさであれば君には絶対負けない」
という回答をしました。
同時に「その後輩らしさについては、間違いなく自分は敵いっこない」と感じていたと思います。

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