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SquareのAfterpay買収からBNPLマーケットを考える

2021年8月1日、Square社がオーストラリアのAfterpayを買収すると発表しました。

この買収はすごくイケてるなーと個人的に思ったので、BNPL(Buy Now Pay Later)のマーケットの面白さと主要各社を整理してみます。

1. BNPLの新しさ
Buy Now Pay Laterとは、文字通り「今買って、あとで支払う」というサービスです。このようなサービスができた背景として、クレジットカードによる分割払いだとカードの限度額を消費してしまうため、異なる方法で分割払いを可能にできないか?という消費者のニーズがあります。そのようなニーズに答える形で、ヨーロッパとオーストラリアを中心に成熟しつつある市場がBNPLマーケットです。ヨーロッパでは2020年におけるECマーケットの10%をBNPLが占めるようになりました。とりわけ、BNPLの代表企業Klarnaを持つスウェーデンでは23%までマーケットサイズを拡大しています。一方で、アメリカでは、ECに占めるBNPLの割合はまだ2%に過ぎません。しかし、今年の第一四半期でBNPLの成長率は前年同期比は約130%と急成長を見せており、マーケットサイズは6000億ドルのポテンシャルがあると言われています。

では、BNPLという新しいマーケットは従来のクレジットカードによる分割払いと何が異なり、なぜこれほどまでに注目されているのでしょうか?
従来のカードローンと異なる点は、大きく二つあります。
第一に、BNPLで分割払いをしても、消費者は利子の支払いが不要であること。そして第二に、カードごとの与信管理から店舗ブランド毎の与信管理が可能になることです。

1-1. 消費者は利子の支払いが不要
BNPLの最も革新的な点は、分割払いをするにもかかわらず、消費者は利子の支払いをする必要がないビジネスモデルであるという点です。一般的なクレジットカードによる分割払いは当然、利子の支払義務が生じるわけですが、BNPLは利子分の支払いを店舗に負担させるビジネスモデルです。結構、?な人が多いと思うので、ここでBNPLの実際の画面を貼り付けて、そのビジネスモデルを説明します。

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これは、テキトーに思いついたのがブーツのDr.MartinsだったのでHPに飛んだのですが、ここでもBNPLのKlarnaが導入されていました。右下らへん見えますかね。

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利子なしの4回払いで購入ができると書いてありますね。こんな感じでBNPLは使われます。では、話をビジネスモデルに戻しますが、BNPLは導入している店舗から決済手数料をもらうビジネスモデルです。店舗側としては、一定程度の単価の高い製品の購入を売るためには、20%OFFとかよくやってる戦法だと思うのですが、それとは別に分割にすることで購入のハードルを下げる戦法として、つまり販促ツールとしてBNPLを使用しているのです。

このように、企業の公式ECサイトに一種の支払い方法として埋め込まれているのがBNPLの通常の使われ方です。しかし、AffirmとAfterpayに関しては特質すべきその他の使われ方もあるので後述します。

1-2. 店舗ブランドごと(製品ごと)の与信管理が可能
従来のクレジットカードによる与信管理は、ある個人の一枚のカードごとに行われていました。なので、ある個人が払えないことになってしまう場合には、購入される製品がなんであれ買えなくなるということを意味していました。しかし、BNPLのサービスでは店舗ブランドごとの与信管理が可能になります。店舗にとって、与信管理とは「うちへの支払いが可能かどうか?」が問題なのであって、自社への支払いさえ耳を揃えて払ってくれるならば、他社への支払いなどはどうでもいいはずです。
これによって、これまでごっちゃにされていた個人の与信管理がブランド毎への与信管理を可能にします。

2. BNPLの注目すべき会社
以上に見たように、BNPLは与信を頼りにした貸し付けに大きなビジネスモデルの転換をもたらしていると言えるのではないでしょうか。
従来の「貸付の金利は借り手が支払う」という常識を壊し、その金利分を販促支援に回すというかなり抜本的な転換なように思えます。

ここからは、このような本質的な転換を推し進める代表的な、一方で全く方向性が異なる2つの企業を簡単に紹介します。

2-1. Affirm
Affirmは、アメリカを代表するBNPLの会社です。つい先日8月4日、AppleがカナダにてAffirm導入を検討してるのでは?というのをBloombergが報じましたね。先月半ばに、同じくBloombergがAppleはGoldmanと組んでBNPLに進出すると報じたばかりだったので、このニュースにはかなり驚かされました。

AffirmがBNPLのリーディングカンパニーであることは疑いのない事実です。Affirmは1.2万社のクライアントを持つBNPLカンパニーですが、この会社を特別な存在にしている原因が二つあるのではないかと考えています。

第一に、AffirmはShopifyと連携しており、Shopifyを運用する店舗がAffirmのサービスを導入することが可能になっています。これは、全Shopifyユーザーがポテンシャルクライアントになるわけですから、非常に重要な連携になります。また、これは単なる業務提携にとどまらず、株式の持ち合いも行っているため、今後さらなる連携が加速されるのではないかと言われています。一部では買収の噂も立ってたりします。

第二に、Affirmはトランザクションの約30%がクライアントのECからではなく、Affirmが運営する独自のモールを経由したものになっているという点が他社にない強みになっています。

ご覧いただけるように、こちらのShopでは数多くの商品がカテゴリーごとに分けれています。そして、最大の特徴は、ある商品のブランドが分割払いに対応していなくても、このAffirmショップ経由での購入に関しては全商品が分割払い可能になっているということでしょう。

2-2. Afterpay 
Affirmとはまた毛色の異なるBNPLの企業が、今回Square社による買収が決まったオーストラリアのAfterpayです。Afterpayは、分割払いとは言っても4回払いのみの1択しか選択肢がなく、かつ比較的単価の低い商品の支払いに対応しているBNPL企業です。

また、AfterpayがBNPL in storeに注力していることは注目に値するでしょう。BNPLのマーケットはECに占める割合が非常に多いのですが、今後マーケット全体としては各社がin Store(店舗決済領域)にも進んでくるのではないかと考えられています。このようなマーケットに先行してそこに着手しているのがAfterpayなのです。

さて、少額決済と店舗決済に強いAfterpayをSquareが買収と聞いて、僕はとんでもなく親和性が高い買収報道だと思いました。なぜかと言うと、ご存知の通り、SquareはSMB(Small and Medium Business)企業の店舗決済を助けるサービスから立ち上がっている会社だからです。今でこそ、SquareといえばCash appのイメージですが、mPOSシステムと店舗決済端末のマーケットシェアは以前として大きいです。

また、Squareが分割払いに対応しているのはアメリカの一部地域のみであり、利率も9.99% APRとのことなので年利で10%という感じですね。日本のスクエアではまだ分割には対応していません。これまで競合であるpaypalなどに遅れて、SquareはBNPL市場にまだ参入していなかったのですが、今回の買収は、そんな遅れをとるBNPL市場で絶好のパートナーを見つけた格好になったのではないかと思います。

3. 日本でのBNPL企業
今回のニュースを見て、僕の頭に浮かんだのは「Paidyの株主どこや」です。日本のアップルストアオンラインに行くと、Paidyが使われているのに気付きますよね。

今年の春、日本のBNPL企業として圧倒的にリードしているPaidyがシリーズDの調達をしているニュースを見た気がしていました。132億も調達してたんですね。

どこが出資しているのか気になって調べてみました。

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なるほどなと思いました。
いろんな会社がいろんなシナジーを考えながら投資しているのが思い浮かびます。今後も、BNPL市場がどのように成長していくのか引き続きウォッチしていきたいと思います。特に、与信管理や貸し倒れリスクの管理で各社差が出てくるはずなので、その辺りに注目していきたいと思います。

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