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“知る”ことで、見える世界が変わってくる!

今年の3月に公開された『燃えるドレスを紡いで』は、ファッションデザイナー中里唯馬さんのドキュメンタリー映画です。

この映画は、服を作るというスタート地点にいるデザイナーの中里唯馬さんが、作った服の最終地点の現実を知ることで、ゴミ同然の衣類をもとに最新のテクノロジーを駆使してパリのオートクチュールコレクションで発表する作品の制作プロセスを描いています。
なお、中里唯馬さんは、森英恵さんに次いで二人目の日本人として、2016年からパリオートクチュールファッションウィークに公式ゲストデザイナーとして参加されている世界的に有名なデザイナーです。


1枚のTシャツを作るために必要な綿の量は?

この映画は最近、様々な方の話題に上がります。
まず、4月にアカデミーヒルズで開催したイベント「『欲望』以外が資本主義のエンジンとなり得るのか?」の中で、ご登壇いただいた鎌田安里沙さんからご紹介がありました。

鎌田安里沙さんご自身もファッション産業が抱える構造上の問題を見つめ、課題の解決に向けたアクションを起こしていらっしゃいます。その一つに「服のたね」があります。綿を種から育て、それを集めて服にするプロジェクトです。

このプロジェクトで一人が育てて収穫できる綿の量は手のひら程度です。それから出来る綿生地は数センチ程度の大きさだということです。1枚のTシャツを作るためには、イメージ的には当日のセミナー会場程度の広さ(約150㎡)が必要だそうです。
それを知ると、価格では測れない別の意味合いでの価値が1枚のTシャツに見えてきました。例えば、その広さを耕して綿を育ててくれている人たちの労働など。


自己表現としてのファッション

また先日、Stanford Social Innovation Review日本版 (SSIR-J) のコミュニティに参加されていた方々が主宰されている読書会へ行ってきました。
テーマは「アパレル業界の循環ビジネス」でしたが、ここでも『燃えるドレスを紡いで』の映画が話題に上がりました。
その中で、「アウシュビッツの強制収容所では同じ服を着て、髪の毛は刈られてしまい、個性が無くなっていくことで精神的に病んでしまったらしい」という発言から、暑さ・寒さを凌ぐ機能だけではなく自己表現の1つとしてのファッションも我々には大切な存在だという話に展開しました。
一方で、2013年のバングラディシュのラナ・プラザ崩壊事故で明らかになった劣悪な労働条件で働く多くの労働者の存在の上に成り立っていたことを知ることも重要だという意見も出ました。

「服を買う」ことは日常生活の一部として何気なく行っている行為ですが、「服を購入することの自分にとっての意味合いは何か?」を考える良い機会となりました。


“服を着る行為”が社会に与える影響

そして、SSIR-Jの創刊編集長を経て現在は同志社大学客員教授の中嶋愛さんに、「『着ること』が社会に与える影響を考える~ファストファッションとサーキュラーエコノミー~」をテーマにアカデミーヒルズのpodcastでお話を伺いました。
このトークの中でも『燃えるドレスを紡いで』の話題が出ています。
知ることの一歩として、是非ご視聴ください!


知ることで見える世界が変わる!

知ることの大切さについて、私の例を紹介します。
2015年にゼロ・ウェイスト宣言をしている徳島県上勝町へ視察見学に行きました。

実際に町民の方々が分別している現場を見学し、お話を伺ったところ、「ゴミの分別が大変だから、商品を購入するときに、分別することをイメージしながら商品を選ぶ」という声がありました。
この体験から私もゴミの分別をしっかりと行うことや、最低限の包装やエコバックを使うなど自分が出来ることから少しずつ始めました。
そしてもう着なくなった服は捨てるのは忍びないので、古着回収などを利用していました。自分の中では「ゴミにはしていない!」という自負がありました。
ところが、『燃えるドレスを紡いで』でゴミの山を見たときに、「自分の行動は、知らず知らずのうちに、あのゴミの山を作っていたかもしれない!」と衝撃を受けました(善かれと思ってやっていたことが仇になった感じでしょうか!?)。
正に、“知る”ことで世界が変わった瞬間でした。

また、中里唯馬さんもケニアの現状を知ることで、「服を作る」という行為が今までとは違う世界に見えてきて、新しいことにチャレンジをされて、ファッションの新たな可能性を広げられたのだと思います。

ファッション・アパレル業界は、原材料調達から製造にいたるまで、服一着あたりCO2排出量は500mlペットボトル約255本とも言われるなど環境負荷の高い産業である上に、計画的陳腐化で購買行動を促す戦略など課題が多い分野です。業界全体でも変わろうという動きはありますが、消費者である私たちも消費行動(服を買うことの意義)を考える必要があると思います。
私たちは、悪気がある訳ではないのですが、自分の行動によって何が起きているかを知らないことが課題だと思います。
まずは、“知る”ことから始めてみませんか。


着る人とともに存在する服

ところで、中里唯馬さんには六本木アートカレッジへご登壇いただいたことがあります。「服は服だけで存在するのではなく、着る人とともに存在するもの」など、服と人との関係性・可能性を真摯に追及されている方という印象を私は持っています。
下記の記事をご一読ください。

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

#アカデミーヒルズ #サーキュラエコノミー #燃えるドレスを紡いで #ゼロ・ウェイスト #上勝町 #StanfordSocialInnovationReview #中里唯馬


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