子育て①新生児と「だっこ」

生まれる、母体(胎内)から外の世界に出るということは、赤ちゃんの側から見ればまさに大転換だ。

・暗中模索の状態から光の世界にいきなり投げ出される。
・ヘソを通して与えられていた栄養は自分の口から摂り、空気も自分の鼻から取り込まなくてはならなくなる。
・胎盤に守られていた体は急に自由で無防備になる。

もはや生きているだけでも尋常ではないほどの大転換が、一夜にして行われる。車のギアで言えば、1速から、2速を飛ばして、急に3速に入れるようなものだ。生み落とされた直後の不安、恐怖、不快は、推し量り知れない。ふたたび同じレベルの環境変化があるとしたら、それは「死ぬ」ということくらいだと思う。死後の世界は、ぼくには想像できない。赤ちゃんの目には、それと同じくらい想像できない世界が今まさに広がっているのかもしれない。

赤ちゃんはよく泣くもので、それは単に生存手段というだけではなくて、いままでの「安らかな受動的環境」を突然取り上げられ、新しい世界への不安かもしれない。新生児期の親の仕事にひとつは「2速の世界」を作ってやること。できるだけ赤ちゃんが光の世界で安心していられるように、生きることに慣れさせてやることだと思う。それが「抱いてあげる」ということだとおもう。「お腹の中じゃなくても大丈夫なんだよ」と。だっこは、赤ちゃんが胎内を思い出すことができる数少ない手段の一つだ。「抱きグセがつく」なんて言っていないで、よく抱いてあげたらいい。

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