ティンパニ用練習台を作る

この記事は2022年2月に公開した記事に加筆修正しました。

コロナ禍はすでに2年間に及んでいる。そんな中、開催できるかどうか見通しにくい状況ではあるが、個人的に今後控えている演奏会もある。こんなときこそ家の中でもティンパニの練習ができたらいいという思いから、練習台を作った。

「作ってみたい」というお方はこの記事を参考にして、より良いものを作ってくださいね。

要件

・スネアだけでなくティンパニの練習ができる
ティンパニマレットで従来の練習台を叩くと、バウンドの感覚があまりに実器と違いすぎたり(それはそれで、練習になる)。あるいは、メッシュヘッドに擦れてフェルトがすぐに摩耗してしまったり。ティンパニマレットで叩いてもバウンドの感覚が失われず、さらに極端にフェルトが消耗してしまったりしないという打面が欲しい。

・軽くて小さい
ティンパニの練習となると、台数分(2~4個)ほしい。持ち運びを考えると、一個一個ができるだけ軽くコンパクトであるべきだ。

・静かである
集合住宅住まいの身であるので、練習中うるさくて下の階の住民がすっ飛んでくるようだと困る。

この三つの要素を満たせば、より快適にトレーニングができる。さらに、複数台の練習台を用意するにあたって導入費用が低いこと(安い)も欠かせない。

このようなことから、以下のように要件を定めた。

・重量要件:500~700g
軽いに越したことはないが、軽すぎてちょっと叩いただけでズレるようでもまた困る。気軽に持ち運べることを考えると、重さは「500mlペットボトル」くらいが望ましい。

・大きさ要件:口径20~30cm、高さ8~10cm
サイズはできるだけ小さくしたいのもやまやまだが、あまりに小さすぎても練習がしにくい。一方で、カバンの多くはA4サイズが収納できるようにできているので、持ち運びを考えると「A4サイズの長辺」程度がせいぜいだ。となると、20cm~30cmくらい。

学校の音楽室や、公共施設・ホールの練習室には、たいてい同じ高さの椅子がたくさんある。自分が座る椅子と同じ高さの椅子に練習台を置いて自然な高さに打面が来てほしいので、少し嵩張るけども高さは8~10cmとした。

・静音性要件:40~50dB
一般的なオフィスや話し声相当の40~50dB程度(深夜の住宅街で30dB、飛行機のエンジン音が120dB)。

・コスト要件:約6000円/1台
現実的であることを心がけた。問題は何をもって現実的とするかだが、ざっくりと「バチを買うような価格」で複数(2~4台)の練習台を揃えられるような金額感覚ならば現実的であるとした。2台で12,000円前後。4台揃えて、24,000円前後。

完成イメージ

さっそく作ってみた。

血の滲む試作過程はすっ飛ばす


仕様

・直径(実測値)約24cm
・高さ(実測値)約9cm
・重さ(実測値)約635g

こだわった点

・アサプラ「ブーム」で打感と耐摩耗性を確保
・ヘッド交換の容易さ(フープのサイズが合えば本皮も張れる)
・軽いパーツを使うこととムダなパーツを減らすことによる軽量化
・5本のチューニングボルト&ゴム足による安定性

材料と費用

・ボルト:535円
・足ゴム:368円
・シェル:605円
・ヘッド:1,760円
・フック:1,100円
・カウンターフープ:1,650円
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計6,018円
 ※2022年1月時点で材料価格を基にしています

使用した印象

・アサプラの新製品Boomヘッドが秀逸。楽器により近いタッチで練習ができるようになった。また、従来のメッシュヘッドをティンパニマレットで叩くとフェルトの消耗が気になったが、このヘッドなら体感的には2倍以上長持ちする。

・口径が小さいので、打点がズレるとバウンドの感覚や、「ポッ」という接地の音色が変わる。打点を狙う練習になる。

・練習台全般に言えることだが、置き場所によって消音性能は大きく変わる。スネアスタンドに乗せるなどして、下に振動を伝えるものが何もなくするのがいちばん消音効果は高い。

作ってみたい人へ

メッシュヘッドを使った練習台を作るにあたってまず考えるべきことは、「ヘッドに張力をかける仕組みをどうするか」だ。この例では、
①シェル(園芸フィルターをひっくり返したもの)に、
②フック(バスドラム用)をひっかけて、
③フックとカウンターフープに通したボルトでカウンターフープを引っ張る

これが、張力をかける仕組みである。言葉で説明すると難しい。上の画像をよく見たほうがわかると思う。

・シェルはAmazonで購入
シェルは、カウンターフープから垂直にぶらさがったフックがちょうどよく引っ掛かるように、台形の形をしていてほしい。「高儀 園芸フィルター直径21cm」の胴を試したら、ピッタリだった。

・ボルトもAmazonで購入
チューニングキーではなく六角キーで張力調整をするネジ。長さは、園芸フィルターシェルの深さにフィットするものを探した。

・フック⇒Aliexpress
バスドラム用フックを5個購入。

・ゴム足付きナット⇒Amazonで購入。
ボルトとフックだけでは、フックは固定されず、落ちてしまう。ボルト(雄ネジ)に対応したナット(雌ネジ)が必要だ。ナットは、ゴム足付きナットを採用。このナットは、ヘッドに張力をかける仕組みと床と接する仕組みを兼ねている(色々調べた末に発見した部品。世の中いろんなモノがあるなと感心した)。


・メッシュヘッドは、アカデミアマレットで取り扱いあり。

以上で材料紹介、終わり。

組み立てかたは、そもそもここまでの記述を理解できた人であれば「ここをこうしてこうじゃ」レベルで組み立てられると思うので説明しない。工具も百均で売っている4mmの六角キーのみ。

海外からの取り寄せに慣れていない人はAliexpressがややハードル高いかもしれない。たまに、購入した商品を送って来ない劣悪な業者もいる。そのうち届くかなと放っておくといつのまにか返金期限が切れてしまいかねないし、期限内であっても為替変動などが理由で100%はお金が戻ってこない場合がある。それでもやはり、国内で手に入りにくいパーツが売っていたりするので、何だかんだ有力な調達先なんである。

以上です。興味のある人は、是非自分のアイデアを盛り込んで自分だけの練習台を作ってみてください。個人的には、色々なサイズを普段使っているハードウェアにマウントして、ドラムセットの練習ができるようなアイデアがあったら面白いんじゃないかなと思います。

丁度いいサイズと形状の園芸フィルターと、バイクパーツであるゴム足付きのナットを発見したことが、今回の形に仕上げることができた大きな要点です。このような「代用・誤用のモノヅクリ」をレヴィ・ストロースという人が「ブリコラージュ」と呼びました(ぼく自身がたいへん心を動かされた概念です)。ブリコラージュの基礎を覚えると、ありあわせのパーツで色々なものを作れるようになります。生活もかなり楽しくなるかもしれません。いまはインターネット検索が便利になり、日進月歩でブリコラージュしやすい時代になってきています。ぼくなりにいま掴みかけているその方法論は、整理でき次第改めて投稿します。

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