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山崎貴監督セレクション 歴代ゴジラ上映会その2

ついにスクリーンで観られた『三大怪獣 地球最大の決戦』

まもなく公開される、“国産”ゴジラの最新作
『ゴジラ-1.0マイナスワン』。


その監督である、山崎貴監督が選んだ、
4つのゴジラ映画を公開する
「ゴジラ映画セレクション」が、
池袋ヒューマックスシネマズで行われています。

トークショー付きの、このイベント。

先日の第2回では、
『三大怪獣 地球最大の決戦』
が上映されました。


この「三大怪獣」とは、
ゴジラ、モスラ、ラドンのこと。

それぞれ単独の映画の「主役」であり、
人間にあだなすものであった三体の怪獣が協力して、
宇宙から飛来した最強の新怪獣・キングギドラと対戦する、
というストーリーは、当時の子どもたちを
どれだけワクワクさせただろうか、と思います。

自分自身、子どもの頃にレンタルビデオで見ましたし、
おそらくその後も、ケーブルテレビの映画チャンネルで
放送されたものを見ているはずなのですが、
こんなにストーリーを忘れているものか、
と改めて驚きました。

トークショーは、「ゴジラアナ」こと、
笠井信輔アナウンサーの司会で、
山崎貴監督と、本作で怪獣の造形を手掛けた、
村瀬継蔵氏がゲスト。

村瀬氏の発案により、キングギドラの首やゴジラの尻尾の、
中心部を空洞にすることができたとのこと。

そのために柔らかな動きを実現。

特にギドラの首の動きは、
劇中でもグニャングニャンと動いていて、
それぞれの首が独自に動き、
ただひたすら破壊する狂気を感じさせ、
不気味さが増していました。


排斥する大人達

以下はネタバレとなります。

古い作品ですので、いまさら気にされる方は
いないとは思いますが、念のため。

ここではあらすじというよりも、
自分の雑感を記すのに関係する部分を抜粋します。

今回観ていて驚いたのが、怪獣の戦闘が始まってから、
そのシーンとドラマ部分とがあまりに乖離しているように見える、
ということでした。

ドラマの方では大人向けに、
ちょっとロマンスのニュアンスが見られたり、
完全に破壊される故郷を見て嘆き悲しむ
人たちの姿などが描かれていました。

ですが、特に印象的だったのは、
怪獣達が出現する前の、
ドラマ中心の展開の中で描かれた、
自分たちの「常識」から外れる人に対する大人の姿です。

各地の不思議な出来事を追う番組の取材のため、
星由里子演じるラジオ局の記者が、
空飛ぶ円盤を呼ぶ会に参加。

しかし円盤はなかなか現れず、
「お前がいるからだ」と糾弾されます。

「円盤を信じていない、その脳波が伝わるのだ」

というわけです。

さて一方、金星人と称する女性が街頭に現れ、
「予言」を告げます。

取り囲んでそれを聞いていた人からは
嘲笑と共にからかい、貶める言葉が放たれる。

しかしその後、次々にその予言が的中。
各地で大きな被害が発生しました。

これは、「大人の世界」を象徴的に
表しているのかもしれません。


子供の象徴としての怪獣

一方で怪獣の側。

予言に従い阿蘇山で目覚めたラドンは、
一旦はどこかに飛び去りますが、
その後上陸したゴジラに戦いを挑みます。

両者が戦う理由は描かれません。

ただお互いに、くちばし?で突っつくラドン、
岩を投げつけるゴジラ、と少々コミカルに戦闘を続けます。

その間に夜になり、黒部山中に落下していた隕石から
キングギドラが出現。

松本の街を破壊し、やがてゴジラたちが戦う、
箱根方面に近づいてきます。

劇中でキングギドラに破壊される松本城(2023年8月 著者撮影)

ゴジラとラドンに対して、
これは地球規模の危機だから協力する必要がある、
とモスラが説得に当たります。

モスラと人間の媒介者である小美人という妖精が、
その様子を人間たちに解説して伝えるのですが、
その間のゴジラとラドンの様子は不貞腐れた子どもそのもの。

「そんなこと、俺たちの知ったこっちゃない」

というわけです。

やむを得ず一人、キングギドラに挑むモスラ。

モスラといっても幼虫なので、飛ぶことは叶わず、
一方的に光線で弾き飛ばされるばかり。

それを見ていたゴジラとラドンも、
ついに重い腰を上げ……という展開です。

キングギドラの光線にやられてアチチチ、
といった体でやられた部分をさすりつつも、
岩を投げつけるゴジラ。
モスラを乗せて飛ぶラドン。
ラドンの背から糸を吹き付けるモスラ。

この部分は、展開といい怪獣たちの所作といい、
完全に子ども向けの描かれ方です。

しかし、意地を張り続けるのではなく、
目的のために協力し合うことの大切さを、
制作者は子供達に伝えたかったのかもしれません。


大人になってしまった今は

後半はこの怪獣パートと人間ドラマが
交互に切り替わるのですが、
深刻度合いも全く違うし、時系列も違うのでは?
と思うような流れでした。

最終的には、3本の首をモスラの糸で
ぐるぐる巻にされたギドラが、
ついに宇宙へと逃げ帰って行くのですが、
かつて文明が発達していた金星を死の星に変え、
今また地球文明そのものを滅ぼしかねない、
と言われたにしてはあっさりと撃退されたように
見えてしまいました。

当然ながら娯楽作品なので、
ドラマ部分は大人向け、怪獣の戦いは子ども向け、
ということをおそらく徹底したのでしょう。

自分自身、子どもの頃に作品を見ていたときは、
ドラマ部分はどうでもいいから早く怪獣出てこないかな、
と思いながら見ていたものです。

大人に……というか、すっかりオジサンになってから見ると、
このチグハグさがかえって気になってしまったのでした。

これも、自分の普段の思考、思想と異なると
受け入れようとしない、
場合によっては蔑むことさえしてしまう、
愚かな大人になってしまった証拠なのかもしれません。

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