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これから社会にでる後輩の皆さんへ  コロナが加速する「世界の5つの変化」⑤ 地球規模の課題に取り組む 世界の共通善を目指して

5. 地球規模の課題に取り組む 世界の共通善を目指して
最後になりますが、地球規模の課題について触れておきます。
国連は2015年にSDGsという略称で知られる「持続可能な開発目標」を採択し、貧困をなくす、飢餓をゼロに、地球環境を守るなど17のゴールを2030年までに達成する目標を掲げました。教育や健康、ジェンダー平等に関する目標も含め地球上「誰一人取り残さない」社会の実現を世界に呼びかけ多くの国や企業が賛同しこの課題に取り組んでいます。

同様に国連が提唱したESGという略称も近年注目を浴びており、年金などを運用する機関投資家や世界の資産運用業界で「環境・社会・企業統治」の視点を組み入れる投資方針が広がるようになりました。理想主義的な理念を掲げる国連の主張に発展途上国だけでなく先進国が賛同し、多国籍企業や世界の金融機関が行動を起こすことは近年稀なことだと思います。それだけ、ここ数十年のグローバルリズムの広がりと世界的経済成長の下で、こうした課題に取り組まなければ地球が持続不可能な段階に来ているという考えに人々が共感しているからかもしれません。

コロナ危機では、経済活動の収縮で温室効果ガスの排出量が大幅に削減されたと伝えられています。皮肉にもスウェーデンの環境活動家グレタさんも訴える2030年に地球の気温を1.5度下げると定めたパリ協定の年間目標が瞬時に実現されようとしています。
地球は人類史が始まって以来最大の77億人もの人口を抱えており、この人口を支えるための経済活動と地球環境の保全をどう両立していくのか、大きな課題が課せられています。
こうした地球規模の課題に対し、国連や国際機関、国や企業、NGOやNPOが積極的に取り組んでおり、こうした世界の共通善ともいうべき目標を実現しようとする新しい動きには励まされます。
現在、新型コロナウイルスのワクチンの開発が世界的に急ピッチで行われていますが、研究データの共有や成果の開示が行われ新薬が国際的な公共財として生かされるのか、それとも、新薬を開発した一部の国や企業による独占的な利益追求の動きになるのか、世界が協調して共通善を追求するケースとして注目していきたいと思います。

アメリカではミレニアル世代、Z世代といわれるデジタル・ネイティブの若者は地球環境や社会的課題の解決に関心を持っており、社会起業家も人気の職種となっているようです。
今回、コロナの発生は、世界の国々で社会的に隔離された外国人労働者やスラム街で生活する弱い立場の人たちの存在に人々の関心を誘いました。また、コロナは人々の生活インフラを支える医療従事者や清掃に携わるエッセンシャルワーカーなどへの敬意の表出という副産物も生みました。
フランスの思想家ジャック・アタリは最近のインタビューで、これから利己主義よりも利他主義の傾向が人々の間で広がると述べています。コロナを機に人々の価値観の転換も芽生えているのかもしれません。
若い人たちにはこれから地球規模で物事を考えること、そして、より良い世界を切り拓くことに参画していくことを期待したいと思います。


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