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これから社会にでる後輩の皆さんへ コロナが加速する「世界の5つの変化」① 世界の転換期の渦中にある 歴史の臨場感を持つ

1. 世界の転換期の渦中にある 歴史の臨場感を持つ
今から100年前に起こったことを少し振り返ってみましょう。
1918年から19年にかけての第一世界大戦の最中、いわゆるスペイン風邪が世界的に大流行しました。一説では世界の人口の3分の一が感染し5千万人以上の人が亡くなったといわれています。ヨーロッパでの犠牲者は兵士や一般市民のみならず、社会学者のマックス・ウェーバーや画家のクリムトら著名人も含まれていました。パンデミックが貧富の差や社会的地位に関わりなく伝播したという点ではコロナと共通しています。

スペイン風邪の流行から続く1930年代、世界は経済と政治の大混乱が続きました。1929年の株式市場の暴落に始まり企業の倒産や失業者の増大で世界は大恐慌といわれる経済不況に陥りました。日本でも米騒動や関東大震災の後に昭和恐慌と呼ばれる経済的苦難の時代に入ります。そして、政治の舞台ではヨーロッパにヒトラーやムッソリーニによるファシズム・全体主義が台頭し、日本では軍国主義が勢いを増しました。この時代の全体主義国家は言論統制や国民の思想管理を強め個人の自由や権利を抑圧しました。他方、民主主義国家はこうした全体主義への対応にリーダーが不在で結束できていませんでした。イギリスからアメリカへの世界の覇権のシフトはまだ移行期にあり、こうした混乱の30年代を経て世界は第二次世界大戦へ突入しました。

「歴史とは、現在と過去との対話である」という有名な句をイギリスの歴史家E.H.カーは残しています。これまで経験したことのないコロナ危機に直面する現在、パンデミックから世界恐慌、全体主義の台頭と戦争に至る過去の歴史から学ぶことは、私たちが同じ過ちを繰り返さないために今とても大切なことだと感じています。

昨年亡くなったアメリカの歴史学者イマニュエル・ウォーラーステインは15世紀大航海時代以来の世界経済と覇権国家の興亡を単一の「世界システム」という概念で描いた人です。私も学生時代に読んだ彼の『近代世界システム』という著書の中で印象的な言葉がありました。それは、歴史の転換期にあってはちょっとした国内体制の違いで変化に適応できるかどうかが決まり、その変化に乗れるかどうかでその後の国の発展に決定的な差が生じるというものです。この見方を援用すれば、19世紀後半の近代化の大転換の時に、アジアでは日本のみが変化に適応する体制改革を成し遂げて、他の国にその後の発展で大きな差をつけたという解釈もできるかもしれません。

現在、デジタル革命ともいうべきテクノロジーの発展による経済社会の大転換が始まっています。デジタル通信技術の発達は世界を一つのシステムのようにまとめ、個人がスマホで世界の人と瞬時につながる時代になりました。
最近、アメリカIT大手のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト(略称GAFAM)の時価総額が東証1部上場約2千社の時価総額を上回ったという記事が話題になりましたが、先進的なテクノロジー企業の優劣が国の競争力をも規定するのは明らかです。
今回、コロナ危機で露わになったのが各国のデジタル対応力の違いでした。
日本はこれからデジタル革命の変化の波に乗れるかどうか、国や企業の競争力の違いが今後の発展に大きな差をもたらすのではないか、そう強く感じただけに先のウォーラーステインの言葉を思い出した次第です。

これからの時代はテクノロジーの発展で経済社会が劇的に変貌するに違いないと感じています。AI、ロボット、5G、ビッグデータ、仮想現実、自動運転、量子コンピューターの言葉をメディアで見ない日はありません。
現在は歴史の大きな転換点の渦中にいるかもしれない、まずはそうした歴史の臨場感を持っていただけたらと思います。

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