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これから社会にでる後輩の皆さんへ コロナが加速する「世界の5つの変化」③ 資本主義はどこへ向かうのか ラディカルな発想の転換を

3. 資本主義はどこへ向かうのか ラディカルな発想の転換を
2013年にフランスの経済学者トーマス・ピケティが著した『21世紀の資本』は世界的なベストセラーとなり、不平等の問題について世界の識者の関心を集めました。
今年、アメリカの大統領選挙の民主党候補者だったサンダース上院議員は自身を民主社会主義者と称し、富裕層に対する増税や最低賃金制の導入、学生向けローンの免除などを打ち出し、格差是正を求める多くの若者の支持を得ました。アメリカで社会主義や共産主義が若者の間で公然と語られるようになったのはあまり記憶にありません。それだけ、アメリカ社会の格差が深刻であり若者が未来に希望が見いだせないからかも知れません。

2008年のリーマンショックでは、若者らの「ウオール街を占拠せよ」という運動がおこり、高額な報酬をもらう金融機関の経営者らに多くの批判が集まりました。その後もIT企業の急成長や続々と誕生するベンチャー企業の上場ブームによって、証券市場ではバブルが発生し、成功した起業家らには多くの富が集まり格差はさらに広がりました。
昨年、スイスの大手銀行クレディ・スイスは、世界人口のわずか1%の最富裕層が世界の富の約44%、また上位10%が82%の富を占有していると報告書で発表しています。

こうした世界の不平等の問題は企業のリーダーの関心にも上がっています。
オランダの歴史家ルトガー・ブレグマンは昨年のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)に招待され、プライベートジェットを利用して会議に参加する世界の富裕層を前に、高率の徴税を通して世界的な富の再分配を行うべきだと主張し注目を浴びました。
彼の著書『隷属なき道』(原題は『リアリストのためのユートピア』)の中では、すべての国民に生活を保障する現金給付を行うベーシックインカムの政策の有効性を主張しています。この政策の各国での導入が進まない中、奇しくも、コロナを機に多くの政府が国民への直接給付を始めたのは皮肉な一例となりました。

昨年、米国大手企業のCEOらが所属する団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は企業の存在意義について新たな方針を発表し、これまでの「株主至上主義」を見直し、顧客や従業員、サプライヤー、地域社会、株主などすべてのステークホルダーを重視する方針を表明しました。そして、今年のダボス会議のテーマは「ステークホルダーがつくる、持続可能で結束した世界」でした。世界のリーダーも今や格差の問題を正面から見据えて、企業の存在意義を問い直し、ステークホルダーと共に繁栄しなければ、現在のシステムは持続不可能だと気付き始めているようです。

19世紀の思想家カール・マルクスは著書『資本論』で、資本主義は本質的に資本家に富が集中し、労働者階級は窮乏化する仕組みとなっており、このシステムは最後には崩壊すると予言しました。実際にはご存知のように100年前の大恐慌も第2次大戦後の社会主義との競争も、そして、リーマンショックも乗り越えて、資本主義は改良を重ね存続してきました。

しかし、先にも見たように世界の不平等が前例のないレベルに達する中で、資本主義というシステムが今後も生き延びることができるのか、もしくは、これに替わる新たなシステムが生まれてくるのか、こうしたことをラディカル(根本的)に考えることが必要な時期に来ているかと思います。
テクノロジーの発展とそれがもたらす富の恩恵が公平に分配され、普通の人がまじめに働けば幸せに暮らせるというモデルが可能となるのか、若い人にはこれまでの常識やイデオロギーにとらわれることなく、新しい時代に相応しいシステムをゼロから発想する視点を持っていただければと思います。

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