5 ハーミーズ、攻撃表示!
まったく、この子は。
いつもなんだが、なんでこうなる。
バイクに輪止めをかませて、サドルの上に立って、頭ひとつ高いところから、言わせてもらう。
「いいか? あなただって被害者だ。おとなしぶるんじゃない! 」
「イ、イエス、マム」
「そんな弱腰でエンタープライズを助けられるか! 根性出せ! それとも、あのまま閉じこもっていたかったか? そんなに牢獄が好きか! 今すぐ軍事法廷に送ってやろうか!?」
「ノー、マム……気弱になってた。反省する。古傷には触れないでくれ」
「あっ。ごめん!」
最後のは取り消してやる、と言って頬っぺをふくらませておいた。なつかしそうな微笑みを向けてくる。
「ありがとう。かわりに怒ってくれて。救われたよ」
「あぅ」
口ごもって、バイクの上から降りた。
「なあ相棒……キャラだての都合って、わかるから。行きすぎは止めるよ。ちびっこを盾に好き放題されたらいけないぜ」
顔、赤いだろうな。見られては困る。さっきの雑誌をかりて、隠すついでに、読者アンケートに抗議文をしたためておく。
「ああ、……すまないな……色々」
ちょっと上ずった声で返された。
「戦友殿がキレなかったら、私が強襲してたよ。本当に助かった」
「おい」
「ああ、いい子達だったー! 英雄の名誉を守らねば、って目つきが……」
歩きだしながら、熱いため息。妄想をさまそうとしてるのか。
悔しいけど、まあわかる。そういうのを力でねじ伏せるのは、そこそこ快感なんだよな。そのあと、もっと誉め讃えるのが、ロイヤルの流儀。
「エン姉さんて、駆……僚艦たちに、すごく慕われているな」
「ん? じゃあ先刻のは、ヤキモチか」
「それはない。……多分」
眉を曇らせてしまった。声がちょっと小さくなってる。
「いや、万が一、そんなことなら、今あの人の立場はどうなってるんだ? いっそ、一緒にこっちを叩いた方がましでは」
フォローに困っていたら、声をかけられた。
「こんにちは! 」
軽空母ボーグさんだ。校舎の入り口あたりで、私たちとすれ違う。
野球帽に半袖ミニ、スパイク姿が太陽にまぶしい。右手に硬球、左にグローブ。流れで、文字通り死球をくれるつもりか?なんてヒヤッとさせる。
「 空母会は2階よ? じゃ、試合があるから、失礼するわ!」
それだけで。心が晴れた。
彼女には野球。まっすぐ打ち込む姿に、明るさを分けてもらえる。深い感謝の念がわいて、穏やかに、会にのぞめた。
そこで何があったのかは、レンジャー先生のいうとおり。今度こそ逆上せてしまった相棒の熱意にみんな流された。
関係ないけど、たしかイラストリアスも夜戦好きだったな。
つづく
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