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3 ARCV-6

ヨークタウン型二番艦、CV-6エンタープライズ。初対面から茶目っ気たっぷりに「会いたかったぞ、"大いなるアー"」だなんて、つい笑いだして、アーク・ロイヤルはいつもの前置きと言い訳が吹っ飛んだという。

「それで、きっかけは、その……、ちょっとした遊び心で……」

ビデオアプリをあけて、しおらしく目元を染めながら横目遣いしてくる。

「……見る?」
「え、撮っていたの!? 何を……?」
「誤解は困るよ。演習だったんだ。もちろん、許しはもらっているぞ」

なら、いいか。「再生▶」️しよう。

***

——●月■日12時44分、ユニオンと合同演習。休み時間にエンタープライズさんと武器を取り替えてみた——

立て続けに銃声が響く。
エンタープライズさんは、全射とも、的のど真ん中を撃ち抜いた。

『いいな、この銃。聞きしにまさる性能だ』
『いや……あなたの腕だ』
『えっ』
『実に見事!』

この短時間で機構を飲み込んだ上、張りつめた技術、集中力。でなきゃ、こうはならない。説明するにつれて、相づちのトーンも上がっていった。

『そ、そうか!ありがとう! 姉さん、見た? アーク・ロイヤルに誉められたよ?』

兵装トークが盛り上がり、短い休憩時間では足りなかった。


——同日17時58分、演習から解散して、近くのカフェにて——
込み合う店内、すみっこの窓際でメニューを一緒にのぞきこんでる。色とりどりの甘味のなか、ポップの黄色いリボンとレモンタルトが目を引く。

『ほう?季節限定か』
『……』
『まあ、ここは任せるよ、エンタープライズさん』

それから、カメラそっちのけで話し込み、大戦の昔話から、陣営のこと、セイレーンのこと、艦隊のことと話題は尽きず、窓にネオンが瞬きはじめる。早送り⏩。


——23時10分、閉店で追い出されてから——

『楽しかったな……!』

電飾も霞む、星空を仰いで笑顔をみせるエンタープライズさん。

『夕食のことも忘れていた。これでよければ一緒にどうだ?』

別れ道みたい。
固形レーションを一個ずつと、自販機の無糖ブラックを分け合った。最後の対話は、レンジャー先生まとめの『また誘っていいか?』『いつでも』の件だ。

別れの握手をして、街路のきらめきと喧騒を背景に、ひとときの静けさ。白いマントの後ろ姿が雑踏にまぎれて、録画は終わる。

***

「なるほど、終盤あたりを激写されたか」
「まあな。迂闊だったよ」

ウカツといえば、今もかな。二人して歩きスマホとは。あたまに小石が当たって、顔をあげたら、もう囲まれていた。


つづく

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