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2 熱愛は真っ赤なウソ

とにかく、主題に戻りましょう!
熱愛報道、カッコ大ウソ。

——ま、エンタープライズ君もいけないのよね。前後関係を省いて端的に「惚れた」とか公言しちゃうから。
相手方から紅玉色のお菓子が来て、「あやつは謹慎に処しました。どうか事を荒立てないで下さいませ」と事前土下座されたって噂よ。

「使者は顔を隠したメイド服の巡洋艦だった——らしいんだけど。ね、ロイヤル陣営諸君?」
「……相棒」
「う、たしかに騒ぎの元きょ……じゃなくて、原因を作ったのは、わたしだが」
「キミか! えっ当事者なの?言っちゃっていいの? 茶ァしばいてていいの?」
「まあ、いいんじゃない? ここは自由の国だ」
「じっさい炎上には慣れているからな」

くっ、この前級にしてこの設計ありか。

「気にすることないの~。騒いでる連中なんか~今ごろ天ぷら食ってるよ~」
「謹慎とは何……うごご」
「当面の出撃停止だ。いまの編成は陛下とユニコーンちゃんと戦友殿。実質、あまり変化はない」
「相棒に甘いよな、あの男(ひと)は」

そっか、常任第一秘書、だっけ?
新任艦の応接だって任されてた……わね。それじゃ、アーク・ロイヤル君がエンタープライズ君を迎え入れたというわけね。二周年の招待状で艦隊に招かれたところを。

ユニオンの英雄、最強空母の名声を引っ提げて、満を持しての登場に、ずいぶん気を張って接したとか。でも、進水日が一年も違わない同年輩だし、しかも招聘艦どうし。お互いざっくばらんな性質ですぐに打ち解けたみたい。

「ユニオンのカフェに呼んでくれてな。大陸東西のあれやこれやを懐かしみながら話したんだ……が……」

二人きりなのがまずかった。
別れ際の"密談"をひとに聞かれてしまったの。

つづく

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