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小鳥を捕食する小鳥|油山野鳥ブログ④

皆さん、こんにちは。
今日はどんな鳥さんに会いましたか?

先日、ここ油山にバードウォッチングのテレビ取材が入りました。
油山野鳥観察ボランティア「ヤマガラの会」の宮石さんがご出演。そのカメラ裏でスタッフも同行させてもらいました。

序盤、目の前に現れたのはモズ!

カメラアシスタントのお姉さんがマイクに入らないよう小さな声で「わー!かわいいっ!」と歓声を上げていました。
しばしの撮影タイム後、改めて「あの小鳥は何を食べるんですか?」と聞かれたので、「肉食なのでたとえば昆虫とか、、、時には小鳥も食べます。」とお伝えしたら、目を見開いて「ひぃぃぃ!!」としばし絶句されていました。

そうか。今どきの若いお姉さんもびっくりしたら「ひぃぃぃ」っていうのか。
はさておき
「小鳥が小鳥を捕食する」に対する彼女のリアクションはとても新鮮で、そうだ、私も最初知った時は驚いたんだった、と妙に腑に落ちる感覚になりました。 
※全長約20センチのモズを小鳥というのかは悩ましいところですが、今回モズを初めて見たお姉さんの感覚そのままに「小鳥」と表現しました。

森の生態系の頂点と言われる「猛禽類(もうきんるい)」。
分類でいうとタカ目(もく)、ハヤブサ目(もく)、フクロウ目(もく)の鳥たち。そのハンティング姿はTV番組で見たことがあると思います。

油山にも多様な猛禽類が暮らしています。(左からハイタカ、チョウゲンボウ、フクロウです)

彼ら以外にも「小さな猛禽類」と称される鳥が前述のモズです。
スズメよりひとまわり大きいサイズでクリっとした瞳、くるくるまわす尾羽は間違いなく「かわいい♡」雰囲気をまとっています。

でもよくよく見ると獲物を引き裂くためのくちばしがタカ達のそれとそっくり。

カギ型のクチバシです。い、痛そう。

主に昆虫やカエルなど、そして時にはスズメなど小鳥を捕食します。
正直私はモズが鳥を襲っている現場に立ち会ったことが無いのですが、このご時世、検索するとYOUTUBEなどで捕食している姿を見ることができます。

モズには面白い習性があります。
それは捕まえた獲物を枝などに刺して一時的に保管する「早贄(はやにえ)」というものです。

私自身も小学生の時に、お隣さんの梅の木の枝にバッタが刺さっていてぎょっとした思い出があります。それがモズの仕業だったと分かったのは大人になってからでした。

実は、ABURAYAMAFUKUOKAの牧場エリアではちょっとした早贄スポットがあります。それは牛さんたちを囲っている「有刺鉄線」。
冬前にこしらえた早贄をモズが食すのは1月がピークとのこと。
2月中旬の今はどうだろうか。
実際に見に行ってきました♪

2月16日の油山牧場!早贄はまだあるかな?
牛はお食事中。森もいいけど、牧場も癒されます。
お!!?これはっっ!!!!
早贄、発見しましたー!!!!

なんとまだ早贄がありました!
刺さっていたのは「オケラ」という昆虫です。
土を掘るためにモグラのような手を持ち、普段は土中で暮らしてるものの、飛ぶこともできて、水中も歩けちゃうスーパー昆虫。(そして密かに私の推し虫です。まさかここで会えるとは!!)

日本各地のいろんな記録を見ると
コオロギやナナフシ、カメムシ、オオスズメバチなどの昆虫やニホントカゲ、カエルいろいろ、時にはサワガニやネズミ、そしてスズメ、シジュウカラ、メジロなどの鳥が刺さっていることもあるそうです。

モズはなぜ「早贄」をするのか
長らく謎だったこの事について2019年5月にとても興味深い研究結果が発表されました。去年、NHKの「ダーウィンが来た」でも特集されたのでご存じの方も多いのではないでしょうか。

それは「はやにえを食べたモズの雄は、歌が上手になり雌にモテる」というもの。どうやら早贄は繁殖期を迎える冬場に、オスが巧みに鳴いてメスにアピールするための栄養食として機能しているそうなんです。

え!?どういうこと???
もっと知りたい!という方はぜひ下記リンクをご覧ください。
この研究発表をされた西田有佑先生のいらっしゃる大阪市立大学さんのページです。

とてもとても興味深い研究です。長い時間をかけて調査データを積み重ねていくのは一筋縄ではなかったと思います。まだまだ謎に包まれている鳥類の生態を解き明かしていく研究者の皆さんのおかげで、私たちもいろんなことを知ることができます。

ちなみにモズは他の鳥より早い2月下旬くらいから巣作りを始めるそうです。まさに今っ!!これからっ!!
バードウォッチングをされている時にモズを見つけたら、1羽なのか、ペアなのか、何をしているのか、行動観察をしてみるのも面白いと思います。
よかったらぜひ♪


■本日の鳥さん

モズ <百舌鳥>
スズメ目モズ科
留鳥 全長19~20cm
雌雄異色(写真左がオス、右がメス)
オスは目のまわりが黒いが、メスは褐色。オスだけ翼に白斑がある。
繁殖期以外は1羽でなわばりをもって生活する。尾羽を上下左右に回すように振る。油山牧場や油山市民の森内では花木園周辺でよく目撃されている。

野鳥写真:宮石さん 大木さん 水崎さん 酒井さん 日下さん
  (油山野鳥観察ボランティア ヤマガラの会)
   写真AC
文・写真:ABURAYAMA FUKUOKA自然観察センター 土屋




ABURAYAMA FUKUOKA 自然観察センター

福岡市油山にすむ生きものの標本や季節の展示、最新の自然情報発信を行っています。各専門スタッフが交代で常駐していますので、自然・生きものの困り事はお気軽にご相談ください。

開館時間 9:00~16:30
休館日  毎週水曜日(祝日の場合翌平日)

「自然観察センター」森のひろばから徒歩約3分の場所にひっそりとあります。
昆虫標本や動物の剥製を展示しています。
季節で変わる企画展示も随時行っています。







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