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「マグヌス効果」とは
ボールにかかる様々な力
野球はボールを使用するスポーツである。
ボールがどのような動きをするか、具体的にはどのように変化するかが大きくプレーの成否を分ける要素となっている。
が、そのボールの変化はどのような理由によって起きるのか。
断片的にいろいろな単語が挙げられるが、果たしてその内容はといえばあまり理解できていないのが正直なところであった。そこで、改めてボールにかかる様々な力を理解していきたいと思う。
まずはよく耳にすることの多い「マグヌス効果」を対象に考えていきたい。
「ノビ」とか「ホップ」とか
野球中継や野球に関するSNSのコメントを見ていると
「あの投手はノビがすごい」
「あの投手はホップ成分が高い(ホップ量が多い)」
といった評を聞くことがある。特にストレートで耳にすることが多い。
このような個人差の原因としてよく挙がるのが、「マグヌス効果」という単語である。どうやらこれのおかげで、ストレートが浮いたり沈んだりするらしい。むかしある投手でネタになったこともあるので、ご存じの方も多いかもしれない。
が、この内容をいざwikipediaなどで調べてみると、マグヌスさんが発見したこと、ボールの回転が影響する物理的な何かであることまではわかるのだが、小難しい単語や記号の羅列と邂逅し、内容がさっぱりわからないのが実情であったりする。
(説明に不備があるのではなく、自分の知識が無さすぎる点に起因している点は改めて申し上げておきたい)
ということで、自分なりに「マグヌス効果とは何か」を改めて把握してみようと思う。
すでにマグヌスの効果の発生メカニズムは多種多様な解説が存在しているが、本記事では専門的な記述は一切避け、イメージとしてどのような動きが発生するかに集中して考えたい。
このため、初歩の初歩な内容となること、また解釈が一面的かつ誤りの可能性がある。この点についてはご容赦いただきたい。
重力の影響
マグヌス効果を知る前に、まずボールの挙動を抑えておきたい。
物が投じられた場合、その物には必ず下向きの重力がかかる。野球のボールも例外ではない。このため、投じられたボールは「本当にまっすぐに」バッターへ届くことはなく、必ず重力の影響を受け、下向きの軌道を描く(落下している)こととなる。残念なことに、ゲームのような真っ直ぐは現実には存在しない。
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にもかかわらず、「あの投手は〜」とか「この球種は〜」といった話になるのは、この落下が大きいか小さいかの差にある。では、この落下の幅を左右する要素は何なのか。
速度と回転
ピッチャーからバッターへの投球に限らず、ボールは投球者がなんらかの力を加えて投じられる。そこには必ず2つの要素を持つ。そしてこの2つが落下の大小を左右する。
速度:ボールの速さ(球速)
回転:ボールにかけられた回転
「速度」が速ければ速いほど、目標への到達時間は短くなる。目標への到達時間が短ければ、重力から受ける影響も抑えられるため、落下の幅も小さくなる。
だが、落下の幅を小さくするのに役立つのは「速度」だけではない。「回転」もそうである。ここでようやくタイトルの「マグヌス効果」の話に辿り着く。
なお、「回転」には「量」「方向(軸)」「スピン種類」の3つの属性が付随する。が、深掘りすると話がどんどんややこしくなる(それでわからなくなる)ので、本記事では割愛し、マグヌス効果のみを取り上げることとし、その他のテーマは後日別途取り上げる。
回転の影響
ここからは回転が落下に与える影響について考える。話を単純化するため、以下の前提として考えることとする。
ボールは綺麗なバックスピンのストレート
回転の方向は縦方向のみ(横方向は考えない)
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投手が綺麗なバックスピンのストレートを投げた場合、投手側から見ると図2の右上のように、動画(投手側から見た場合)にすると図3のような回転を描く。横から見ると図2の真ん中のように、時計回りに回転しながら打者に向かう。
この時、ボールの動きに影響を及ぼすのが「空気抵抗」である。
空気抵抗と圧力
打者に向かって進む時ボールはすべからく空気の抵抗を受け、空気はボールの進行方向と逆の動きに進む。走った時に向かい風を感じるのと同じ原理である。
この時、ボールが上記のような回転をしていると、ボールの上部は空気の流れに沿った動きを見せる一方、下部では空気の流れとは逆の動きを見せる。これにより、上部では抵抗が弱く、下部では抵抗が強くなる状況が発生することになる。
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このような状況が発生した時に、何が起こるのか。
調べてみると「圧力の差が生じることで揚力が発生し、ボールに上向きの力が働く」ということらしいのだが、物理オンチにはそこがよくわからない。なので、その仕組みについてもう少々掘り下げて考えてみたい。
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空気中には多数の分子が存在しており、あちこちの方向に飛び回っている。目に見えない粒がたくさん浮いているような状態を思い描いていただくとわかりやすいかもしれない。
このようなところにボールのような「一定の動きを持った物体」が来ると、ボールと分子(粒)が衝突することになる。
ここで先ほどの例に立ち返ると、空気の流れに沿って回転している上部ではボールと分子の衝突が少なく、空気の流れとは逆に回転している下部では衝突が多くなる。
やや誇張した表現をするならば、ボール上部の空気は引き伸ばされている一方、下部はぎゅっと詰められているような状態が発生していることになる。これにより、上部の分子の数は少なく(圧力が低く)、下部は多い(圧力が高い)という状態になる。これが所謂「圧力の差」である(と理解している)。
圧力と揚力
ボールの上部と下部で圧力の差が発生すると、「揚力」なる上向きの力が発動するらしい。が、なぜそれが発生するのか。
すでに様々な説明があるが、ここでは先程の空気の分子との関係に沿って考えてみることにする。
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ボールが回転しながら進む時、空気の分子(粒)と衝突していくことはすでに述べた。
ここで分子との衝突の仕方を改めて考えてみると、上部では上から下に、下部では下から上に衝突していく。つまり、上部では上から下に押し下げる力が、下部では下から上に押し上げる力が働く。実際は真上から真下にぶつかるのではなく、図6のように斜めになった形で衝突が発生していくと思われる。
こうした運動が、圧力の差がある状態で発生した場合どうなるか。
ボールの下部の方が圧力が高い状態であるため、上部よりも多くの衝突が発生することとなる。衝突によって上→下/下→上の力が発生するのであれば、衝突が多い下部で発生する下から上への力が強くなるため、結果として上向きの力が働くことになる。これが揚力と呼ばれるものであり、この揚力を生み出す効果が「マグヌス効果」と呼ばれるものである。
この上向きの力である揚力は、ボールの上部/下部における圧力の差、つまり分子との衝突頻度の差が大きければ大きいほど、それに比例して大きくなる。これを左右するのが速度であり、回転ということとなる。よって、この差が重力による落下量の違いを生み出し、揚力を上手く生み出している投手の軌道(図7の赤色線)は、そうではない投手の軌道(図7の青色線)に比べ、重力による落下量を抑えることが可能となる。
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まとめと補足
ここまでつらつらと書いてきたが、ボールの回転が空気に及ぼす影響、そしてその結果として得られる動きは以下のようになる。
ボールの回転により、ボールの上部は空気と同じ方向、下部は逆方向に流れる
流れの差により、ボールにかかる空気の圧力は上部が低く、下部が高くなる
ボール下部の圧力が上部に比べ高くなることにより、下から上への力(揚力)が発生する
揚力が発生した結果、ボールは重力による落下量を軽減することができる
本記事はあくまで「マグヌス効果の働き」を理解するため、綺麗なバックスピンの例を用いて解釈を進めたが、実際にそのようなボールが投ぜられることはほとんどない。横向きの回転、あるいは回転軸が進行方向を向いた「ジャイロ回転」が一定程度混じるのが常である。これらの回転が及ぼす影響については以降のシリーズにて改めて解釈することとしたい。
参考サイト
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