見出し画像

演劇ワークショップってなに?

 「演劇ワークショップ」と聞いて、何をやるかイメージ出来る人がどれほどいるだろうか? 近年様々な場面で「ワークショップ」という言葉がもてはやされるようになり、何となくこのようなものではないかと想像がつく人たちもいるかも知れないが、それは決して多数派ではないような気がする。
 そんな正体不明の演劇ワークショップをかれこれ15年以上もやっている。
学校関係では、小学生から大学生まで。市民参加型の舞台になると、上は80過ぎの方もいる。人数は2人から170人以上までと、いろいろと幅広い。
そんな幅の広さで、いったいどんなことをやっているのか? もちろん、様々なアクティビティがあり、人数や年齢によって使い分けるのだが、深入りするとキリがないのでここでは、そんなに広範囲の人々が参加して楽しめるのね、ということだけ理解していただければと思う。
とは言え、これじゃあ何をやっているのかさっぱりわからないと思うので、ざっくりとどんなことをやるのか列挙してみる。どんな内容なのか想像していただきたい。
「何も言わない、いつ振り返るかわからない、だるまさんが転んだ」「鏡になって真似をする」「いろいろな鬼ごっこ」「100人でジャンケン」「握手回し」「仲間集め」「長ならび」「伝言ゲーム」「人間知恵の輪」「ウソとホントでやりとり」「何人かで一つのモノを作る」「素敵に八歩歩く」「一つのセリフで短いお芝居を作る」「セリフの回し書き」etc。
ファシリテーターと呼ばれる進行役一人に対して、全員が反応するものから、並んでみたり、グループを作ったりするものを経て、何かを表現する。さらにそのグループでお話を作り、演劇にする。
とまあこのような流れで演劇ワークショップは進行していく。
コミュニケーションゲームやレクリエーションゲームなどと、同じだったり似たようなものだったりするのだが、私たちがやっているのは「演劇」ワークショップなので、最終的には見る、見られる、という関係を作る方向に持っていく。
つまり、お互いに表現者と鑑賞者を行き来するわけだ。
 恐らく、ほかの似たようなワークショップとの違いはここにある。
 自分ではない何かになって、衆目監視の中で表現するという行為は、結構ハードルが高い。演劇を目的に来ている場合は別だが、学校だと、特に演劇に興味があるわけでもない、普通の子たちが、急に俳優にならなければいけなくなるのだ。
 これが簡単なはずがない。しかし、不思議なもので、一度演じてしまうとそのハードルは外れてしまい、次第に積極的に発表をするようになる。
 その発表に対して、どんな風に見えたか? どんなところが良かったか? など、見ていた人たちにコメントを求める。もちろん私たちもコメントする。
 これが評価となり、よりよい表現を目指す糧になるのだ。
 そして見ていたグループの人たちは、その発表と評価を参考にして、自分たちの発表の指針にする。
 ぶっちゃけて言えば「あんな感じでいいんだ、じゃあうちもやろうかな?」「あれが面白いなら、これも面白いんじゃない?」という感覚。
 実は、全員発表できない場合も良くある。そんなときでも極力無理強いはしない。
 自分で踏み出した勇気と、人に踏み出させてもらった勇気は、評価の受け止め方が、多少違うのではないかと思うからだ。
 結果、発表できなかったとしても、心のどこかで、ホッとしながらも、もやもやとしたものも残るだろう。それはそれで自分の選んだ表現になると思うのだ。
 主に学校で行うワークショップについてざっくりと書いてきたが、演劇をやりたい小中学生には、もってこいの企画がある。
「子どもエンゲキ体験・はじめの一歩!~冬組~」6日間で演劇を作って発表までするという盛岡劇場の企画である。応募締め切りは今月17日。まだ間に合う。お問い合わせは019-622-2258、盛岡劇場まで。

2019年12月15日(日)岩手日報「いわての風」に掲載されたもの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?