勝負根性の塊・アスクビクターモア


1・信じがたい一報


2023年8月9日

休憩時間にスマホを起動すると、信じられない情報が目に飛び込んできた
アスクビクターモア死す――

一緒に休憩に入った同僚に声をかけられるまで、
驚きや信じられない気持ちや疑問が頭を駆け巡っていた

去年の菊花賞馬がどうして?

それほどまでに衝撃が大きかったのだ
なんせ、4歳の現役馬なのだから

同期には、ダービー馬のドウデュース、皐月賞馬のジオグリフ、世代最強の呼び声が高いイクイノックス
他にもジャスティンパレス、セリフォス、ダノンベルーガなど牡馬だけでも粒ぞろいの世代だ

それぞれ現役バリバリで第一線で活躍している
なのになんでアスクビクターモアだけ……



2・惚れた理由


アスクビクターモアについては、
前回の記事(1年間欠かさず土日に競馬をしてみました)にあるように、
初めてまともに予想して印を打って、
馬連と三連複を弥生賞を取らせてもらった思い出の馬

このときはドウデュースが本命だったから、悔しい思いをしたものだけど、
この馬も注目していきたいと思わせるものだった

皐月賞も買い目に入れたし、ダービーも印を回した
本命にしなかったのはドウデュースがいたからである

だが、ダービーでの走りは圧巻だった

1着ドウデュースと2着イクイノックスが鬼脚で追い込んで来たのに対し、
3着だったアスクビクターモアは上記2頭に屈するものの、
終始前目の競馬で粘り切って見せたのだ

なんという粘り腰、凄まじいまでの勝負根性の塊

ますますアスクビクターモアという馬に惚れ込んだ



3・本命候補から本命へ


秋の緒戦のセントライト記念では、初めて本命の印を打った
結果は夏の上り馬・ガイアフォースにアタマ差で敗れたものの、
何度も差し返そうとする勝負根性に、菊花賞への期待が持てたのだった

菊花賞はもちろんアスクビクターモアを本命に指名
発馬後、セイウンハーデスが押しまくってハナを取り切った

アスクビクターモアは積極的に番手につけ、
落ち着いて自分のペースを刻んでいた

前半1000mは58秒とハイぺースに推移し、
このままだと先行勢が崩れ、差し・追込勢が有利な展開に

3、4コーナーの中間で動き、
4コーナー手前で一気に先頭に躍り出てリードを広げる
この時点で先行勢が差し・追込勢に飲まれて沈んでいく

伸びてきたのは大外から追い込むボルドグフーシュと、
その内にいるジャスティンパレス

中でもボルドグフーシュの上がりの脚は驚異的で、
もしかしたら差されてしまうんじゃないかと不安に駆られた

しかし、アスクビクターモアの勝負根性の火が最後まで燃え続けたのか、
猛追をかける末脚自慢のボルドグフーシュをハナ差で凌ぎ切った

クラシック最後の1冠を見事獲得し、時計もコースレコード
文句のつけようもない強さを示してくれたのである


4・精彩を欠く


年が明けて4歳の古馬になったアスクビクターモアは、
さらに飛躍してくれるものだと信じていた
が、緒戦の日経賞は出遅れと不良の馬場で振るわず、9着

次戦の天皇賞(春)では、
デビューから4戦目以降ずっと組んでいた田辺から横山武史に乗り替わり
横山武史は期待の若手のひとりで、もしかしたら復活するのか? 
そう思われていた

が、菊花賞の走りから長距離のこの舞台では期待が持てたものの、
初の二けた着順となる11着

3走目の宝塚記念では、スタート直後鞍上が体制を崩す格好になったが、
前走と同じく先行集団からの競馬
直線の坂の辺りで脚色が鈍り、ここでも11着だった

去年の菊花賞では距離は違うものの、
同じ舞台で精彩を欠く結果に終わってしまった

どこか悪くしているかもしれない
そう思っても特に情報が出ることがなく休養へ
秋には元気な姿を見せてくれることを楽しみにしていた


5・突然の死


そんな折、放牧中に熱中症での多臓器不全での死亡の報せ
冒頭で記したように当初は受け入れられなかった

誤報であってほしい……
それでも、今年はどこも暑さが尋常じゃないこともわかっていた

秋の同期組やクラシック組や他の古馬たちとの対戦を楽しみにしていた
もう一度田辺とのコンビを組んで巻き返してくれる、そう思っていた
しかし死んだ命は戻って来ない

今はただ、安らかにゆっくり休んでほしい
ダービー馬・ドウデュースに勝った勝負根性の塊のような走りを忘れない

偉大なる菊花賞馬・アスクビクターモア

ありがとう、お疲れ様でした



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