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スゴ腕マーケター"えとみほ"から学ぶ憑依力



先日ツイッターに流れてきた新R25の記事、『「指示しなくても人を動かせる人が強い」えとみほが失敗から学んだマネジメント論』を読んで、これこそ我々世代が学ぶべき表現方法であり、指導者にとって必要な能力だと確信した。
https://r25.jp/article/720925996572616117?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=share_on_site&utm_content=sp

僕がえとみほさんと出会ったのは、昨年の7月の水戸vs栃木の試合だった。

僕が40歳でプロになったことにとても興味を持っていただき、その後も幾度となく相談に乗ってもらった。

その関係は今でも続いている。

印象的だったのは、水戸を退団したあとチームを探していた僕が栃木へのアプローチもしたいので、一度プレゼンさせてくださいくださいと伝えたら、二番煎じは嫌なのでお断りします!とキッパリ断られた。

あのときに僕は更にえとみほさんが好きになった(笑)

さて、本題に入ろう。

今回はこの記事の中でも出てくる"憑依力"という言葉がどれだけ指導者にとって必要なのかという点を実体験を元に掘り下げてみたいと思う。



僕はJリーガーを目指す前に指導者やスポーツディレクターとしてマネジメント活動をしていた。

資格こそないが、指導者としては幼児から大人まですべてのカテゴリーを体験し、アヤックスやドルトムントなどの海外クラブで研修をさせてもらった。

そこで出会う方々全てにこの憑依力があった。


ドルトムントで出会った教育リーダーという立場の方は、子どもたちがサッカーだけにならないように常に気を配り色々な視点が必要だと言っていた。

その中でも興味深かったのは子どもに将来の不安を与えないように人生のABCプランを立てさせるという教育をしていること。

その際に、彼は色々な立ち位置を演じることが必要だと言っていた。


ここではその詳細は割愛させてもらうが、自分がこういう子どもを育てたいという主観は一切存在してはならないと言っていた。

その中でも僕が一番心に残っている"憑依力"のエピソードは、ジーコの実兄でもある、元鹿島アントラーズ監督のエドゥ氏との仕事である。


僕は彼の下で5年間、選手兼コーチ兼通訳をしていた。

幾度となく彼の指導方法には驚かされた。

ある日の練習試合、チームは3-0で前半を折り返した。

その次の週には大事な公式戦が控えていた。

僕は怪我をしていてその日は大事をとって通訳に専念をしていた。

すると、前半が終わったタイミングで、僕に一言「今から怒るから準備をしろ」と。

最初はなんのことかわからず、自分が怒られる準備をしたくらいだった(笑)

するとエドゥは突然、持っていたボードを地面に叩きつけ、選手を怒鳴り始めた。

一瞬のことだった。

僕はさっき彼が言った怒る準備の意味を察知し、同じテンションで怒鳴った。

3-0という快勝とも言える流れを作った前半にこんなに怒ることがあるのかというくらい選手は怒られた。

結果その試合は後半に追加点を1点だけ上げ4-0で勝利。

結果だけをみるとハーフタイムの激怒は失敗だったかのように思えるが、次の週の公式戦にちゃんと答えがあった。

試合後にエドゥは僕にこういった。

「指導者は自分の感情を優先してはならない」と。

目的に対して必要な感情を憑依させることができなければそれは指導者ではない。

あのまま3-0の雰囲気で後半に入れば、もっと点を取れたかも知れない。

しかし大事なのは翌週の公式戦だ。

練習試合を結果で捉えるのではなく翌週の課題で捉えなければ意味がない。

だからここで喜ぶ、褒めるという手法ではなく怒るという表現をとった。

まだ若いチームだったからどうしても目の前の結果に感情が左右されやすいことを彼はわかっていた。

勝利という結果とそこに慢心する甘さ。

それを回避するために彼は敢えて怒った。

もし通訳の僕が怒ることを知らされてなかったら、僕は120%で通訳できなかったと思う。

この憑依力は役者なみだと思った。

会社員でも指導者でも人をマネジメントする人にはこの憑依力が必要不可欠だと思う。

感情任せに何かを言う人は結局"自分の思い通りにしたい"が勝っていて目的やその人の成長などには関心がない。

指示待ち人間を作る人は目的優先ではなく感情優先。

そんな人の指導を受けてばかりいれば、自ずと指示待ち人間になる。


指示を待たずに動き出せるということは、自分の椅子に偉そうに座って指示を出すことではなく、目指したい目的に対してどんな人が重要なのかを自分が演じて動いていること。

えとみほさんが語る"憑依力"こそ、指導者に必要な要素だ。

ただ、これを資格やプレーヤー経験では手に入れることできない。

役者と同じように、適性があるかその人に世界観があるか、そこが大きなポイントだと思う。

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