魂の螺旋ダンス(34)シャクティパット

・ 高橋弘二とシャクティパット

ミイラ事件当時、ライフスペースの高橋弘二は、自らシャクティパットを「授ける」グルと名乗っていた。

その高橋弘二が、最初にシャクティパットの世界に出会い、グルからシャクティパットを「受けた」のは、インド人の女性グル、スワミ・チッドヴィラサーナンダ(通称グルマイ)からである。


つまり、高橋弘二に最初にシャクティパットを施したインド人グルは、すなわち、私にシャクティパットを施したグルと同一人物である。


それは、一九八六年以前のことであったはずである。

なぜなら一九八七年の初頭に、高橋弘二は、グルマイから受けたシャクティパットの感想を講演で語っているからである。


当時大阪の江坂にあったライフスペース本部のセミナールームで、私はその講演を聞いた。講演は「川を押してはならない」というメインテーマを繰り返す非常にシンプルなものだった。

あるがままの哲学と言おうか。

ありのままの存在や生命の働きに信頼を置いた、人をいい気持ちにさせる話である。

肩をいからし、ストレス過剰な生き方をしがちな「現代人」にとっては、バランスを取り戻させてくれる、それなりに意味のある話だったと言ってもいい。

高橋の語り口はやわらかく、さすがに語りのプロであった。


その講演の中で、高橋はグルマイのシャクティパットを受けた体験を語り、一月末に行われる予定のシッダ・メディテーションへの参加を聴衆に促したのであった。


「もう、すごいの。ペパーミントみたい」


高橋は、シャクティパットを受けて、クンダリニーが上昇した体験をそのように語った。

体をペパーミントのような快感の小波が駆け抜けたというのである。

クンダリニー・ヨーガの経験者として、私にはその感覚はよくわかる。


古来インドに伝わるクンダリニー・ヨーガでは、グルが弟子にシャクティパットを授けることによって、弟子の尾てい骨のあたりに眠るとされる生命エネルギー(クンダリニー)を目覚めさせる。

クンダリニーはひとたび目覚めると、背骨に沿って上昇し、チャクラと呼ばれる七つのエネルギーセンターを次々と目覚めさせるとされている。


このことによって、心身が深く癒され、喜びを覚え、愛に満ち、ついには宇宙と一体となった境地に至ると言うのである。


このインドの伝統は、一九六〇年代頃にアメリカ合州国にもたらされた。

高橋にシャクティパットを施したグルマイの、そのまたグルである故スワミ・ムクタナンダは、インドからアメリカに渡り、フラワーチルドレンなどと呼ばれていたアメリカの若者たちに、クンダリニー・ヨーガを伝えた功労者のひとりである。

そしてムクタナンダは、クンダリニー・ヨーガの歴史上はじめて、テレビカメラの前で、グルとしての後継者を任命した。

その新しいグルこそ、美しい女性の弟子としてムクタナンダにかわいがられてきたグルマイであったのである。

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