電動車椅子でGO!(19)先人の礎の上に

 障碍者問題総合誌「そよ風のように街に出よう」がこの夏、91号で終刊した。最後まで編集長を務めた河野秀忠さんはそれを見届けるようにして九月初めに七四歳で亡くなった。
 この雑誌が創刊した一九七九年、私はまだ大学生であった。タイトルにも中身にも大きな共感を覚えた。その後教員になった私は養護学級や病院内学級も担任した。そして五三歳の時、心室細動の後遺症で自らが車椅子ユーザーとなった。
 この間に街のバリアフリー化は少しずつ進んできた。私は電動車椅子で可能な限り街に出かけている。 今なお残る様々なバリアにぶつかりながら、必要に応じ意見を伝えている。また「アゴラ」にはこうして気づいたことを分かち合う連載の機会もいただいている。
 それもこれも先人の築いてきた礎の上でのことだ。障碍者が街に出ること自体、 冷たい視線を浴び、心ない言葉を投げつけられることを意味していた時代があった。
 そんな中、傷つきもがきながら道を切リ開いてきた先人には心から「ありがとう」と言いたい。
 残念ながら、今なお、「バリアフリー」は施設面でも、心の面でも、完成を見たわけではない。この世界が隅々まで、あらゆる人の共に泣き笑いできる大道となることを一私は願っている。その実現まで先人の心をしっかリ受け継いでいきたい。

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