天国からの奇跡 レビュー

DVD「天国からの奇跡」見た。

ネタバレ注意。

なぜ見たかというと、主人公の女の子の臨死体験のシーンがある。そこに蝶がいっぱい舞っていたよと聞いたから。

実話に基づくという触書であり、ラストには本物の主人公家族のショットがあるのだが、まあ、裏はとれない。キリスト教プロパガンダかもしれないし、作品自体にいずれにしろその匂いはあった。が、描かれていることは、もし事実でなかったとしても真実だとは思う。
惜しいのはもうちょっとキリスト教臭を抜けなかったのかという点だ。
かえりみて、僕は『超簡単訳歎異抄・般若心経』で「南無阿弥陀仏」を「宇宙の無限の働きにまかせます」と訳すことで浄土教臭をとったつもりだが、外から見るとやはり臭いのかなあとも思った。

それはともかく。
少女アナは名医も治らないと判断していた難病だった。
母親はなぜこんなことになるのか、神を疑い、
また教会で他の女性たちに家族の誰かに罪があるのではないかと言われ、教会に行くのをやめる。
しかし、ラスト近く、難病の少女は木の洞(うろ)に落ちる。
母親はいてもたってもいられず、洞の外側に頭をつけて「主の祈り」を繰り返す。
その間に少女は幽体離脱して、臨死体験する。
一匹の蝶に導かれ、訪れた「天国」はアジサイと見えた花たちがぜんぶ蝶になって羽ばたく、蝶に満ちた世界。
木の洞から救出された少女は10メートルも落下したのに奇跡的に怪我は少なく、意識を取り戻す。
それだけではなく、くだんの難病も治ってしまったのだ。
母親は信仰を取り戻し、教会でこの話をスピーチするのがラストシーン。
このようにあらすじを書くと、いかにも予定調和のどうしようもないお話ではある。
が、少女の語った臨死体験そのものは僕にはリアリティがあった。
そして「今は信じなくてもいいよ。その時が来たらわかるから」という少女の台詞もふるっている。
また母親のスピーチから、キリスト教的な文脈を抜き取ると
「起こることのすべては奇跡である」
「奇跡とは出会った無数の人たちが少しずつ自分のできる援助してくれたことそのものである」
ということ自体は、何も間違っていない。
私や人間から見て、いいことでも悪いことでも、ぜんぶ奇跡であると言えば、さらに間違ってないのだが、それは言ってなかった。
でも見ていた僕はそういうことだと思った。
宇宙には奇跡以外の何もない。
これはシンプルだが、驚愕するしかない、一瞬一瞬の真実である。
キリスト教プロパガンダ的側面を差し引けば、そういうことを表現している映画だと思った。

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