歎異抄原本の問題 業縁の「さば、せば」問題

2018年4月17日 FACEBOOK

大変迂闊でした。私は歎異抄13条を引用するとき、原則として「さるべき業縁のもよほさば」と引用していました。
が、何度もこの部分を検討しているうち、「もよほさば」となっている本と「もよほせば」となっている本があることに気がつきました。
三大文庫本(?)では、岩波文庫の金子大栄は「もよほせば」、角川文庫の梅原真隆は「もよほさば」、講談社文庫の梅原猛は「もよほさば」です。
大谷派の真宗聖典は「もよほせば」です。
これは未然形と已然形の違いがあり、鎌倉時代には場合によって、区別が厳密でなくなっていたとはいえ、古典を読む原則としては仮定条件と確定条件の違いになります。よって、ニュアンスが異なります。
このような異同があるのはそれぞれが参照した底本が異なるからでしょうか?
どの底本がどちらで、最も古い形を残しているはずというものは、どちらなのでしょうか。
知っている方は教えてください。
本を書いておいて、今さらすみません。


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コメント欄より

あび
仮説としては、
親鸞が已然形を用いたものは時代の言語感覚が変化しても
已然形のまま写本される。
親鸞が未然形を用いたものは、仮定条件の未然形と已然形との区別が厳密でなくなる言語の歴史のなかで、後になるほど已然形で写本される可能性が高まると思います。
よって、資料検討なしの仮説は、もともとは、未然形というものです。
そこから派生して、已然形の写本が現れるのは、言語の歴史に逆行してないからです。
従って、唯円が正確に書き留めたのなら、親鸞の真意は初めから仮定条件というのが、僕の仮説です。


Tさん
写本の中で最古とされてる本願寺派蓮如上人書写本では
「さるべき業縁のもよほさば、」
となっています。他の写本がどうなっているか、、どの写本が一番正当性があるか、は、私には、、


あび
最古とされているものが、もよほさば、なら、資料検討の前に僕が日本語の歴史から立てた仮説はかなり有力ですね。
ありがとうございます。
どこかの時点で大谷派では、もよほせば、とするようになり、金子大栄はそれを踏襲している。大谷派でなかったり、宗門外の作家や学者は、もよほさば、のようです。
親鸞が仮定条件を意図したのは、ほぼ確実ではないでしょうか。
裏返せば、業縁がもよほさなければ、しようとしてもできるものではないという文脈なので、仮定条件がリーズナブルと思います。


Mさん
昭和35年に金子先生が編集して、法蔵館から出た『原典校註 真宗聖典』という本があります。
これは、そう簡単に真蹟を見ることができなかった時代の名残で、「原典校註」と謳ってはいますが、教行信証の底本は、東本願寺所蔵の貞和二年(1346)書写の延書です。
この本で確認すると、『歎異抄』は、大谷大学所蔵の端ノ坊旧蔵の室町末期の本を底本にした多屋賴俊編集の『校註歎異抄』の本文と註の仮名遣いを著者の許諾を得て改めた、とした上で、「もよほせば」にしています。
多屋先生の本は手元にありませんが、推測すると、この大谷大学蔵本が「もよほせは」なのではないかと考えます。
ただ、いかんせん底本が厳密には底本とは言えないので、、、、
大谷大学行っても、貴重書はみせてもらえないよね、、たぶん


あび
ありがとうございます。大谷派で、もよほせば、になった経過の説明になると思います。
意味はどちらでも通ると思います。そして別の味わいがあると思います。僕が未然形+ばがもともとの形ではないかと思う根拠はふたつ。
(1)未然形+ばが、已然形+ばに変化するのは、日本語の変化とシンクロしていて、自然だが、その逆のことが起こるには、誤写しかありえない。
(2)今どのような縁で何をしていようと、そうするような業と縁があれば(仮定)(ほかの)どのようなことでもするのが人間である。と自覚することを促している。と味わうことにする。
でも、(2)は今現にこうしているのは、それぞれそのような業と縁があればこそなのだという自覚を促すという味わいでもいいので、どちらでもいいと言えるかも。だから、「根拠」は(1)だけになるのかな?


Iさん
このような事を反省して検証を試みる長澤さんは著者として、学究人として素晴らしいと思います。


あび
ども。


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