【緊急事態宣言は出ない方がマシである件】~労基法の無効化など

【緊急事態宣言は出ない方がマシである件】

covid-19の蔓延を防ぐための緊急事態宣言等において最も重要なのは次の二点であると考える。

(1)何らかの措置なしでは死んでしまいそうな困窮者に対して大至急救済処置をとる。(憲法25条生存権)

(2)外出による接触と感染を最小限に抑えるために、企業と従業員に休業補償を出し、テレワークまたはそれが無理なら業務一時停止命令を出す。(病院、銀行、スーパーなどのすべてが閉鎖すると、人々の生活が破壊されるため、バランスをとって停止命令を出す必要はある。)

しかし!

(1)については30万円の現金支給が(当座は)それに当たるかと一瞬期待させたが、条件があまりにも厳しくもらえる人は殆どいないため、大きな失望を呼んでいる。(条件についての情報は出回っているので割愛する。)

(2)については政府も都道府県も休業補償を行おうとしないため、人々は電車による出勤を続けており、休日や夜の外出を控えてほしいという中途半端な要請にとどまっている。
(2)についてはもうひとつ問題がある。それは、緊急事態宣言によって知事による業務停止命令や、医療施設などのための接収で業務を停止した企業は、通常時の労働基準法が適用されなくなるという問題である。
企業の事情により休業した場合は通常の労基法に基づき、従業員には6割以上の給与が補償されなければならない。(既に通常下ですら、そうしない企業や突然の解雇などで多くの問題が噴出しているのだが。)
しかし、緊急事態宣言下で業務停止命令が出た場合はこれが適用されない。したがって従業員は6割給付を得る権利を失う。

二人目の出産を控えている息子のホテルは3月から休業に入った。労基法に基づき6割の給与は補償されると息子が話していた。が、緊急事態宣言下では適用されないのではないかと心配して連絡をとった。息子は既にそれについて僕より詳しく調べていた。

専門家でない二人が知恵を絞って考えたところの結論は、息子の勤務するホテルは勤務地も本社も静岡県であるため、緊急事態宣言が適用されない。だから知事による業務停止命令や施設接収はありえない。通常の労基法の適用が続くだろうというものだ。

一方、娘の勤務するドラッグストアチェーンは本社も勤務地も(別の都道府県だが)緊急事態宣言該当都道府県である。
だが、ドラッグストアには業務停止命令は出ないのではないかと考えている。ただ6月に結婚する娘の婚約者の企業については業務停止命令が出て、労基法の適用範囲外になる可能性は残されている。

自分の家族について述べたが彼らはたぶんマシな方である。多くの人々が生活に困窮し、路頭に迷い、餓死者、自殺者、犯罪が増大するのではないか。
その死者数は直接的にCOVID-19を原因とするものを上回る可能性もある。

仮に以上のような事態になったら、危機に乗じて憲法改悪、緊急事態条項の発効が必要であるという論が、人々の目をくらまし始めるだろう。しかし、人々のことなど考えて政策を打っていない政権に権力を与えても何の解決にもならない。

緊急事態宣言ですら、立場の弱い人々を逆に追い詰める効果を発揮するかもしれない。それを観察できたら、そこから類推するべきである。
ひとりひとりの弱者に目の行き届いたものでない勝手な政策が強制力を持つと、事態はさらに悪化する。

そもそも現政権は初動の水際作戦の失敗(インバウンド効果への執着?)、休業補償の遅れによる満員電車の放置、利権による?パチンコの放置、オリンピック開催へのこだわりなどから来る?検査の抑圧、感染者数の隠蔽など数多くの失敗を重ね、事態を深刻化してきた。

そうやって事態を悪化させてきた当該者たちが、初めからの狙いである「緊急事態条項」による絶対的権力の掌握を狙っているのである。

今、必要なのは、休業補償という生存権を重視した施策と、それとセットに実際の外出を激減させることなど・・・・一人一人の立場に立った施策を現行法の中で行うことである。


(以下憲法学者 志田陽子さんのFACEBOOKより)

感染症拡大防止のために政府が最大限の努力をすべきことは現行憲法と何も抵触しません。25条1項によって「健康で文化的な制定限度の生活」を保障する責任、25条2項「公衆衛生」によって感染症を防止する責任があり、そのための政策努力は憲法が求めているからです。このために経済活動にどうしても今以上の制約をしなくてはならないときには22条・29条の「公共の福祉」に基づいて、法律のもと、政策を打つことはできます。土地建物などの財産の収用も可能です(他の権利保障との適正なバランスや、正当な補償は必要です)。これらに憲法改正は必要ありません。現行憲法がネックになって有効な政策が打てないとする考え方は、上記の条文を組み合わせて考えてみると、誤りであることがわかるはずです。

参考
108兆円のからくり れいわ新選組の提言


ALISでは反論がついたため、私がそれに反論しました。
それを追記しておきます。


後記

注  私はコメントができません。

よって、コメントについては編集で回答を行う場合があります。(たぶんすべてには応えられません。)

前提としてこれは理屈の論議が第一義ではなく、どうすれば危機が乗り越えられるかについての話であることをご承知おきください。

その上で

まず現金給付と緊急事態宣言は関係ないというのは、インフルからコロナにも緊急事態宣言の適用を広げる際に、財政出動を前提とし、憲法25条を堅持することを明確に組み込まずに法案を成立させたからです。
組み込まないこと自体が、緊急事態宣言が個々の生命尊重を目指したものにはなっていないことを意味している点をこの記事は指摘しています。

次に労基法の適用は場合によるということですが、ここに注意を促しているのは、国家が権力をさらに集中させていくときに、現行憲法やそれに基づく下位法でかろうじて保たれているセーフティネットが蔑ろにされていくことに注目してほしいということです。現行でさえ、労基法を守らない企業のための犠牲者は出ています。強い組合が交渉を重ねることのできる企業や、裁判で闘う余裕がある人は限られています。そのような法的なセーフティネットがさらにタガを外されケースバイケースになってしまうと、闘える人以外が簡単に切り捨てられる世界に近づいていくということを指摘しています。その先には緊急事態条項という最悪の権力集中が企図されていることは、多くの識者が注意を促しています。

どうか、もしコメント欄を活用するなら、瑕疵を探してああえいばこういうではなく、どうすればいいのかという観点からの建設的な議論をよろしくお願いします。
私はいいねによる報酬が殆どないという処理をされているにも関わらず、他のところに書いたこの記事をALISにも貼りました。
私が参加している他のSNSでは、ああいえばこういうというような対応よりもコロナに対する危機感がまず共有されているように見えます。
ALISが「本質」を視野の中心においた議論のできるところなのか、そうでないのかも、注目される点であると思います。

 

コメント2

僕は瑕疵を探そうとしてといいましたが、瑕疵とは言ってません。

雇用不安について本質的な議論が必要であり、言葉尻の問題でない議論をするべきだと言っています。

ALISはお金ではないさんが貼ってくださった東京新聞の記事が誤報であると厚生労働省が主張しているのは知ってます。

払われる場合も払われない場合もあるから誤報だと主張しています。

しかし、払われない場合の基準が曖昧なため、労働者は払わせるためにいちいち闘わなくてはならないのが問題の本質なのです。

払われる場合もあるからデマだという論戦は、どうすれば雇用不安を払拭できるかの問題の本質についての議論ではないと僕は主張しています。

払われる場合もあるから嘘だという論法を見て、失礼ながら、ああ言えばこう言うと書きました。

消耗戦に持ち込み、めんどくさいからもういいやと思わせるのは、ネトウヨなどがよく使う手なので、慣れています。

ALISで政治問題を扱うとそうなるだけなのかを、(改めて)観察してるのです。

「雇用調整助成金そのものに労働者に請求権がないのは不備である」とする、労働問題を専門とする弁護士らの見解も参考にしてください。

息子は私が連絡した時、既にそこまで全部先に調べてました。

これを15歳の時に書いた息子です。

(親バカ失礼)



あれっ?

Gさんのコメントが削除されました。

枝レスだったALISはお金ではないさんの東京新聞からの引用も消えてしまいました。

Gさん自身が削除したものと思われ、

私が削除したのではないと申し添えます。

 

あれっ。改めてGさんのコメントが入りました。

おっしゃるように論争により、解像度が上がった点は感謝します。

ゆえに元のコメントの削除の必要はなかったと思いますが?

 

もしも心動かされた作品があればサポートをよろしくお願いいたします。いただいたサポートは紙の本の出版、その他の表現活動に有効に活かしていきたいと考えています。