仏教豆知識

その2
この人物も実は、環境保護活動の先駆者(せんくしゃ)なのです。レイチェル・カーソンと、ソローが2人が、ともに言及されているものを見てもらいましょう。
 カーソンは『われらをめぐる海』でジョン・バロウズ賞を受賞した。バロウズはソローの思想を継承するネイチャーライターであり、彼を記念してつくられた賞は、毎年すぐれたネイチャーライティングに与えられる。カーソンはその授賞式の席上「自然を描く意図」という講演を行った。この講演の中で、カーソンは英米にはソロー、バロウズ、ジェフリーズ、ハドソンなどのすぐれたネイチャーライティングの伝統が存在することを指摘し、一方で彼らの伝統に甘んじて単なる模倣者(もほうしゃ)となることを戒(いまし)め、「思想や知識の領域の開拓者」(『失われた森』138)たることを薦(すす)め、「彼らが時代の代弁者(だいべんしゃ)であったように、私たちもまたこの時代の代弁者として、新しいタイプの作品を創造するのです」(138)と聴衆に訴えかける。(上岡克己「レイチェル・カーソンと環境保護運動」高知大学『国際社会文化研究』Vol.12,2011、p.32,ルビ私)
このように、今では知る人ぞ知るソローですが、生前(せいぜん)は不遇(ふぐう)でした。代表作『ウオールデン』Waldenを刊行したロス(N.P.Ross)は、『刊行者の序』の冒頭をこう始めています。
 ヘンリー・デイビッド・ソローが百年前に亡くなった際、この国は偉大な作家を失ったとか、優れた人物を無くしたというアメリカ人はほぼいなかった。(Walden,ed.by N.P.Ross,1962,New York,1962,p.vii)

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