仏教余話

その60
ハウスホファーは、このような日本にもエールを送っているのである。彼は、こういう。
 支那人とロシア人との間に打ち込まれた満州及び内蒙古といふ、分離の楔の中に在る日本人の『大日本』思想の効果発現や、日本の国策の大洋的―大陸的乖離や、乃至、太平洋の全周辺に対する支那人の移動厭力の大洋的-大陸的分裂やも亦、疑も無く一箇の危険の積荷を意味する。しかしながら、独り此の危険の積荷を覚ればこそ、地理学を基礎として立つ、最も規模雄大なる地政学の意識的調整傾向が、あらゆる隔たりを超越したる共同作業を誘致せんとして、換言すれば、ベンクの謂はゆる、物理的人類地理学の主要問題、すなわち、増大する人口厭力の間に在つて、地球の生活空間の一層適正にして有意義なる分配の爲めに途を拓くといふ問題に於いて、人類の将来の爲めに奉仕するところあらんとして、営々と働いて居ることをわれわれは見るのである。さうして是れが、太平洋地政学の究極の偉大なる目標である。(ハウスホーファー著、太平洋協会編訳『太平洋地政学』昭和17年、pp.568-569)
まさしく、彼は、日本の侵略戦争に対して、地政学的見地からのサポートを強調している。少々、余計なことまでも紹介したが、仏教つながりで、近代史に切り込むことも出来るという面を知ってもらえばよいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?