「倶舎論」をめぐって

LXII
最後に、『真実義』のチベット語訳を、実際に読んだ時の感想を加えておきたい。私は、第6章「賢聖品」margapudgalanirdesaの「二諦」に関する注を見た。そこには、『倶舎論』批判で名を馳せた衆賢(Samghabadra)の『順正理論』からの引用などもあり、非常に内容の濃いものであった。他のあらゆる注釈と比しても、1番、情報量が豊富で、様々な角度から問題を扱っている。しかし、如何せん、私は、漢訳の『順正理論』と『真実義』チベ
ット語訳の中に引用されている『順正理論』の異同すら、つかみ切れない。正直なところ、正確な理解を得る自信はない。極めて、難解な書物である。サンスクリット語原典の刊行がまたれるのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?