「倶舎論」をめぐって
LXXXV
さて、今までも当たり前のように使ってきた「アビダルマ」という言葉、この意味は何だろう。櫻部博士は、「説一切有部のアビダルマ」などという言い方をしていた。原語は、abhi-dharmaである。お馴染みのdharma(ダルマ)に、abhi(アビ)という語が加えられて出来ている。前にも述べたが、ダルマという言葉自体不明瞭なので、正確な意味内容は把握し難い。Abhiを『梵和大辞典』で調べると、「此方へ、近く、の方へ、まで、対して、
超えて、爲に、就て」などとある。Abhidharmaには「仏教の教理に関する理論、三蔵の一」とあり、「対法、勝法、向法、論」などの漢訳が示されている。モニエル・ウイリアムズのSanskrit-English Dictionaryのabhiの項には、「動詞や名詞への接頭辞、a prefix to verbs and nouns」と在り、更に、「動作動詞の接頭辞としては、何かへの移動または前進、接近の観念を表す、(As a prefix to verbs of motion)it expresses the notion of moving or going towards,approaching」とあり、「動詞由来ではない名詞の接頭語としては、優れること、熱心であることを表す、(As a prefix to nouns not derived from verbs)it expresses superiority ,intensity」とある。また、abhidharmaには「仏教哲学または形而上学の教義、the dogmas of Buddhist philosophy or metaphysics」とあった。肝心の説一切有部では、どうなのだろうか?
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