Tips of Buddhism

No,58
Koshin is a folk belief,it was born by Sanshi-setsu(thought to be that there are insects that governs the life in the body)was brought over from China during the Heian period in Japan.It wa developed independenly in Japan through the Middle Ages and early modern period.When it comes to early modern period,Koshin was largely prevalent among the Edo townsman and suburbs of farmars.(from abstract 綿谷翔太「柴又帝釈天の庚申信仰」-柴又型庚申塔の分布に関する一考察―)」成城大学紀要『常民文化』38,2015,p.55)

(訳)
庚申(こうしん)は、民間信仰である、三尸(さんし)説(身中に命を司(つかさど)る虫がいるとする考え)により生まれ、中国から平安時代の日本にもたらされた。中世から近代にかけて日本で、独自に発展した。近代になって、庚申は江戸(えど)庶民(しょみん)や近(きん)隣(りん)農家(のうか)に、広く受け入れられた。
(解説)
この論文の著者は、小説家で、成城大学在学中に日本SF大賞を受賞したらしい。ともあれ、関係事項を整理してみよう。柴(しば)又(また)帝釈天(たいしゃくてん)について、綿谷(わたたに)氏は、簡単にこう述べている。
 柴又帝釈天といえば、現在では映画「男はつらいよ」の舞台として知られているが、正式名称を経(きょう)栄山(えいざん)題(だい)経寺(きょうじ)と言い、当時は江戸時代中期より庚申信仰の中心地として有名であった。その信仰の形成と発展には、江戸時代中期から日蓮宗(にちれんしゅう)が庚申信仰を巧みに取り入れていった状況が影響している。(綿谷翔太「柴又帝釈天の庚申信仰」-柴又型庚申塔の分布に関する一考察―)」成城大学紀要『常民文化』38,2015,p.57,ルビ私)
また、同氏は、庚申信仰の起源をめぐる先行研究について、以下のように言及する。
 柳田(やなぎた)國男(くにお)は『年中行事(ねんちゅうぎょうじ)覚書(おぼえがき)』において、庚申待(こうしんまち)の風習について述べ、中国由来としての信仰としては説明できない箇所(かしょ)を上げ、双方(そうほう)が別物であると説いている。・・・こうした柳田の論に対し、窪(くぼ)は道教研究の見地から、庚申信仰が大陸由来のものであるという従前の説を民俗学的に証明した。(綿谷翔太「柴又帝釈天の庚申信仰」-柴又型庚申塔の分布に関する一考察―)」成城大学紀要『常民文化』38,2015,p.57,ルビ私)
道教という中国の民間信仰に由来するのは、確かなことであろう。よく映画等で見る「陰陽師(おんみょうじ)」は、名前からして道教の中心概念の1つ「陰陽(いんよう)」に基づいていることが推測される。日本に道教の寺院がないこと等から、その影響を軽く見るのは間違いである。お盆にしても、道教の行事に由来している。日本文化の中には、道教の影は想像以上に多いと思われる。次に庚申信仰の本尊とされる帝釈天について、見ておこう。綿谷氏は、研究史をこうスケッチしている。
 三輪(みわ)は「帝釈天は直接に庚申待(こうしんまち)に関係はないが、大阪市(おおさかし)天王寺(てんのうじ)の庚申堂(こうしんどう)縁起(えんぎ)によると、文武(もんむ)天皇(てんのう)の大宝(たいほう)元年(がんねん)に、四天王寺の民部(みんぶ)僧都(そうず)の許(もと)へ、帝釈天の使者と称する童子(どうじ)が来て庚申の法を伝授したと伝えているから、庚申と間接に結ばれているのである」・・・と述べ、また窪は「日蓮宗では庚申さんを帝釈天といっているが、明治十年に黙阿(もくあ)弥(み)が作った『富士(ふじ)額(びたい)男女(だんじょ)繁山(しげるやま)』という脚本には、日蓮宗の人が講(こう)をつくって柴又の帝釈さんにまいることがかいてあり、・・・いまでもその名残があるという」・・・と短く取り上げている。つまり帝釈天は庚申縁起に関わりがあり、また日蓮宗系の庚申講において本尊として扱われるとされる。(綿谷翔太「柴又帝釈天の庚申信仰」-柴又型庚申塔の分布に関する一考察―)」成城大学紀要『常民文化』38,2015,p.58、ルビ私)
今は忘れられている感のある庚申信仰を取り挙げてみた。日蓮宗との関わり、そして道教との関わり等々、興味のある方は研究テーマにしてもらいたい。
 

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