セリエAへの推薦状/ Valentin Mihaila
アタランタがジェレミー・ボガを獲得したというニュースを聞いて多くのカルチョファンは震え上がっていることしょう。それだけでも強かだと思うのに、今度はアレイクス・ミランチュクの後釜に据えるべく、パルマのミハイラにオファーを出したようです。いい意味でも悪い意味でも私にとっては意外な出来事でした。
経歴
ミハイラが渡伊したのは2020年の夏。リヴェラーニの就任と共にタルディーニへやってきました。リヴェラーニはレッチェで4312のシステムでかつパスサッカーを志向していた監督です。リヴェラーニの下、ミハイラはしばしば2トップの一角で起用されたました。イングレーゼやジェルビーニョがレギュラーだったこともあり、ピッチに立つ時間はそれほど長くはありませんでしたが、それでも出た試合はインパクトを残していたかと思います。
肝心のパルマはと言うと、それまでのパルマがカウンターに重きを置くスタイルだったため、リヴェラーニの戦術がなかなか浸透せずに16節で解任されてしまいました。
パルマはカウンターが得意なチームと述べましたが、リヴェラーニの後任にはパルマを堅守速攻のスタイルで躍進させたダヴェルサが再就任することになりました。もともとミハイラは足が速い選手なのもあってダヴェルサのサッカーに不可欠な存在に。ジェルビーニョからレギュラーの座を奪うまでに成長ました。アタランタへの移籍が決まるまでこの後2人の監督(マレスカ、イアキーニ)と共にプレーしますが、ダヴェルサ政権の時が最も輝いていた印象です。
プレースタイル
ミハイラの長所は何と言っても爆発的なスピードです。前にスペースさえあれば単独でフィニッシュに持っていく力は充分あると思います。裏抜けのタイミングも絶妙なので、一度身体を入れ替えられてしまったら追いつくことはほぼほぼ不可能です。
では、スペースがないと活きない選手かと言われたら、そういう訳ではなくて、2人のDFと対峙して、1人が縦、もう1人が中へのドリブルコースを切ってきたとしても、その2人の間を無理矢理潜り抜けることが可能です。ただ、そこからの展開や得点に結び付ける能力は物足りなさを感じます。自らがカットインしてのフィニッシュには改善の余地があるでしょう。
クロスやワンタッチシュートは上手い選手なので、やはり1番活きるのは縦への突破なのは間違いないと思います。しかし、カットインをチラつかせての縦や、切り返しなど、ドルブルのバリエーションは豊富なので、縦一辺倒の選手という認識をしていると痛い目に合うかもしれません。
起用ポジション
恐らくは4321の2の部分、通称『シャドー』と呼ばれるポジションに入ると予想されています。右でも左でも特に問題はなさそうですが、より持ち味を出せそうなのは左のシャドーでしょう。…となるとミハイラがポジションを争う相手は、同じく冬にアタランタに加入したボガになります。ボールタッチの細かさやシュートセンスは残念ながらボガに軍配が上がるので、ミハイラは違った方法で結果を出す必要がありますが、ボガと比べても縦志向が強い選手ですので差別化は測れると思います。
センターフォワードの3番手であるピッコリがジェノアへ移籍し、サパタとムリエルが同時に戦列を離れる期間もありましたので、CFとしてのプレーも任されるかもしれません。2年前にセビージャからフィオレンティーナに移籍してきた際のムリエルも、スピードを武器にカウンターから得点を量産したので、ミハイラもその形で使われる可能性はあるのかなと。そのためにはもう少し決定力を上げる必要がありますが。
ウィングバックでの起用も考えられなくはないのですが、ガスペリーニがアタランタの監督に就任して以降、WBに足がとても速い選手を置くイメージがあまりありません。ただ、ロビン・ゴーゼンスがインテルへ移籍したこともあって、ペッツェッラにはない攻撃性能を買われての起用ももしかしたら…のレベルですがゼロとは言い切れませんね。
最後に
パルマでは3度の監督交代に遭うなど、いわばチームが苦しい時期に加入したこともあって、本来のポテンシャルを発揮出来ずにいました。ここまで書いておいて言うのも何ですが、ミハイラがアタランタで通用するか正直疑問符を付けざるを得ないです。ですがそれは、パルマのミハイラを見た感想であって、アタランタに行けばもしかしたら今まで見られなかった才能が開花するかもしれません。ラマースやミランチュクが越えられなかった壁を越えられるのかどうか。意外すぎるステップアップを果たした後半戦のミハイラに注目です。
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