すでに起こった未来

 コロナはなかなか収束しそうになく、新薬が開発できるまでは、消費者心理は冷え込んだままかもしれない。しかし、いずれ収束する。コロナ後はどんな環境に変わるのだろうか。
 ドラッカー教授は、将来の環境を予想するときは、すでに起こった未来を確認しなさいという命題を与えてくれた。将来起こるものには、必ずその兆候があって、それを見つけることで、未来が予想出来るというものだ。
 ただ、今色んなことが新たに始まっている中で、どれがそれに当たるのか、非常に難しい。これについてドラッカー学会理事の佐藤等先生は「シフト」なのか、「トレンド」なのかを見分ける必要があると指摘している。つまり「シフト」こそ、すでに起こった未来を表すものだからである。
 たとえば今多くなっている料理の宅配、これなどは、一過性のもので、店で食べることによる味や便利さ、雰囲気に置き換わるものではない。コロナが収まれば自然と縮小することだろう。また婦人服はどうだろうか、いくらネットが進化しても、実店舗で色んな服を見て回る、あのワクワク感には置き換わらないのではなかろうか。モノを手に入れることだけが価値とは思いにくい、過程にも価値がある。ただ馴染みの店でサイズ合わせの必要がなく、店員との画面会話が出来ればネットで充分かもしれない。
ただしそこまでの関係性を保てるケースは少なく、ネット販売が主流になるとは思えない。
 今回のコロナ禍は、むしろ衣料品業界の構造的な問題が露見して来たのではなかろうか。つまり春夏ものを売り切ってそのお金で秋冬ものを仕入れる。このビジネスモデルに頼っていると、今年のような暖冬にコロナ禍が加わると、資金が持たなくなる。根強いファンがいて、財政基盤の強いところのみが生き残れる業界にシフトしてきたのではなかろうか。
 ここに、すでに起こった未来ではないかと思う面白い事例を紹介したい。それは東京の高輪ゲートウェイ駅に出来た無人コンビニだ。ユーザー登録不要で、誰でも入れる。客が店に入ると、まず売り場の手前にゲートが設置してある。現在入店できる客は7人まで。ゲートが開くと客は店内に進み、棚から商品を選んで手持ちのバックに入れる。さらに進んでセルフレジの前に立つと画面に商品名と金額が自動で表示される。その内容を確認し、交通系ICカードで支払う。レジで買い物バックから商品を出さずに済むので便利だ。今後はクレジットカード決済にも対応するそうだ。店舗には商品補充や発注などを行うスタッフが一人いるだけで済む。何故こんなことが出来るのか。この仕組みを支えるのが、天井に設置した約50台のカメラとセンサー。店内に複数の客がいても正確に動きを追跡する。客が商品を手に取ると、商品棚の重量計から情報が送信される。これらの情報をAIが分析し、それぞれの客が買い物バックに入れた商品を記録するそうだ。店員が集まりにくい現状と、コンビニの利便性と3密を考えれば、いずれこの方式が一般化するのではなかろうか。お金を扱わないのと、監視のカメラで盗難の危険性もない。
 今回のコロナ禍が与えた教訓は、もともとその業界の構造的な問題ではなかったか、それがコロナで顕在化したものではないか、そして、客はモノではない何に価値を求めているか、求められる価値を掘り下げればどんな業態が出現するか、が問われているのかもしれない。
 業界以外のことも含めて、出来るだけ多くの情報にふれて、コロナ後の将来を予測してみたい。そうすることによって、将来を予見する洞察力が身に付く。シフトかトレンドか色んな事例を見つけて議論をしたい。

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