心の教育の重要性

 2月に1軒、4月に2軒の会計事務所視察をした。いずれも私どもの事務所のベンチマークにしたいと思うような、それ程規模は大きくはないが、急成長をしている会計事務所である。  


 そこで私なりに得た結論は、高業績を上げるには、職員一人一人が自発的に動き、仕事に対する強い使命感を持ち続けることが大切で、それにはノウハウの勉強や社内の仕組みも大事ながら、心の教育や理念浸透をすることがより重要だ、ということである。


 そのために、ある会計事務所では、論語を勉強したり、別の会計事務所では稲盛和夫の教えを学んだりしていた。他には渋沢栄一の本も読まれたりしていた。しかも業務時間中にかなりの時間を割いていた。さらにある会計事務所では二宮尊徳の教えであるところの、「道徳を忘れた経済は罪悪であり、経済を忘れた道徳は寝言である」という言葉を全社規範にしていた。
熊本商業高校の簿記部の教諭が生徒82人に月刊「致知」を読ませた結果、成績が格段に高まり、全国大会で二度準優勝をしたという話を聞いたことがある。致知という雑誌は各界のリーダー等がよく読む人間学を学ぶ難解な大人の本である。これを生徒に読ませる方もすごいが、読む生徒もすごいものだ。生徒は感動してやる気になったそうだ。高校生にでもできるなら我々にでもできる。遅ればせながら私どもでも、毎週少しずつ皆で読み始めることにした。

 まずは安岡正篤 (やすおかまさひろ) の本からだ。氏は平成という元号の名付け親であり、佐藤栄作や、中曽根康弘などが教えを求めた哲人だ。致知でも度々登場するようだ。その方の講演録「人間の本質」からだ。少し抜粋すると、『だからどこまでも徳性というものが人間の本質であって、知能や技能というものは、それよりは一段と付属的なものであるということがわかる。これが会得されれば人間は間違いないのだが、このもっとも本質であるところの徳性というものを忘れてしまって、そうして非常に「利」であるところの ― したがって、よく「利く(きく)」すなわち「鋭い、輝く、輝かしい」という言葉があるが、その輝かしい知能や技能に心を奪われて、知能や技能を尊重して、徳性を忘れるというところに、人間の過ちのそもそも始まりがある。この辺が、人間の教育、教学の問題のそもそもの出発点ですね。
その人がどういう徳性をもっておるか ― というと、たとえば人間が自然から生まれつきに与えられておる人間の本質的な要素。まず明暗、光と影だ。人間は本質的に光を求め、闇を嫌うね。明るい暗いということは、人間の徳の中でもっとも根本的なものだ、だから、いわゆる道徳的にいっても、人間はまずもって明るくなきゃいかん。暗くてはいけない。これは大事なことだ。皆さんがちょっと考えたらわかるだろう。明るい人と暗い人があるね。人間はどこまでも明るくなきゃいかん。暗くてはいけない。これは本質中の本質、根本中の根本の徳だ。だからわれわれは常に明るくあろうとしなければならない。どんなに知識や技能があっても暗い人は、これは安心できない、油断ができない。明るくなきゃいかん。暗い気持ちになってはいけない。常に明るい気持ちでおらなきゃ ― 明暗。』

 
 いかがだろうか?これは人間の本質というタイトルの本の中の、人間の本質という項に書かれていたので、エキス中のエキスだろう。その中で徳性が知識や技能より大事で、さらに根本の徳が明るいことだと説かれている。次には清い、そして素直という言葉が続き、人を愛する、敬するという言葉が続く。いずれも何気ない言葉だが、備えるべき徳性として考えるとは・・。
人間学を修得しなければならないと痛感する。


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