調理技術を習得しよう

 3月17日付の神戸新聞に興味深い記事が掲載されていた。一人暮らしの高齢者は調理の技術が低いと、高い人より死亡リスクが倍以上も高まるとの分析結果を、東京医科歯科大の谷友香子 (国際健康推進医学) らのチームが国際専門誌に発表した。チームは、2016年に全国の23市町村に住み、要介護認定を受けていない65歳以上の約1万600人を対象に、自己申告で回答してもらった調理技術の程度と3~4年後までに死亡した520人のデータから、調理技術のレベルと死亡リスクの関係を分析した。
 調理技術は「野菜や果物の皮をむくことができる」「卵や野菜をゆでることができる」「焼き魚をつくれる」など基本的な7項目を低い方から1~6点の6段階で申告してもらい、平均点が4点以下を「技術が低い」、4点より高いと「技術が高い」と評価した。その結果、1人暮らしの場合、調理技術が高い人に比べて、低い人は3~4年後までに死亡するリスクが2.5倍高かった。同居の人がいる場合は、調理技術の高低でリスクに有意な差はなかった。
リスクの要因を分析すると、自炊、野菜や果物の摂取頻度、外出、歩いたり立ったりする時間がリスク低減に関わっていることが分かった。自宅で自ら料理をすることで、栄養面のバランスだけでなく、献立を考えたり、食材を買いに出向いたりすることで、健康や認知機能の維持に役立っていると考えられるという。チームは高齢化社会で離婚や配偶者との死別などにより、1人暮らしのお年寄りが増えている現状では、調理技術を身につける重要性が高まっていると指摘している。
 いかがだろうか?これほどの差があるのなら、調理技術の習得が必要だと感じられるのではなかろうか?
 私も2年ほど前から家内に料理を教わっている。最近は、朝食は私が用意をするようにしている。珍しい料理を家内が調理をする時は、調味料の種類や量を尋ねるようにしている。また調理の手順を示してくれるソフト(クラシル) も携帯にインストールしているので、味をそれほど気にしなければ、いずれ何の料理でも作れるようになるのではないかなと思う。今のところ得意料理は卵焼きだが、魚の煮つけが上手になりたいと願っている。
食事は認知症にも非常に関連があるので、それを意識した料理を覚えたい。長生きはそれほど望まないが、認知症にはなりたくない。それには食事が非常に影響するという。
 現役の医者でもある、牧野善二著、認知症にならない100まで生きる食事術、(文春新書) によると、認知症の原因は、糖質とAGEのせいで起こる脳の慢性炎症だそうだ。そしてこの慢性炎症は、認知症を引き起こすだけではなく、がん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、腎臓病など、すべての生活習慣病の原因にもなっているそうだ。だから認知症を予防する食事や生活習慣を身に付ければ、これらすべての病気から体が守られて、健康的に100歳まで生きられるそうだ。 ちなみにAGEとは「終末糖化産物」と訳されるもので、ブドウ糖などがタンパク質と結合して生まれる物質の最終反応物だそうだ。とりわけ高熱が加われば、AGEは大量に生産される。 身近なものでは、から揚げ、とんかつ、照り焼きハンバーク、パンケーキ、ピザ、お好み焼き、タコ焼き、焼きそば、焼き肉、焼き鳥、鰻の蒲焼きなどが、AGEが多いそうだ。炭水化物を避け、野菜、肉、魚中心の食事にすることが望ましいそうだ。
 私の作る多少見栄えの悪い卵焼きでも、家内は喜んで食べてくれるが、調理は卵焼きひとつとっても中々奥深いものだ。

税理士・中小企業診断士 安部春之

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