ピロリ菌

 昨年7月、3年ぶりに人間ドックを受けた。ガン家系でもありドッグではいつも胃カメラで診て貰うようにしている。そこでお医者さんから言われた。「ピロリ菌がいますね」「えっ、そうなんですか、10年ほど前に除去をして貰ったのですが」「そうですか、最近井戸水か、谷川の水を飲んでいませんか?」「銘水100選の水を汲んで来てそのまま飲んでいますが」「それです、除去をしましょう」非常に驚いた。こちらの生活ぶりは知らないはずなのに、ずばりと言い当てられた。しかも日本銘水100選2位として名高い水だ (福井県若狭の瓜割りの水)。湧き水でもあり、そんな菌が入り込むとは信じられない。水汲み場には、どこにも生水のまま飲まないで下さいとは書いていない。
 見つかったのはラッキーだがどうしたものか、煮沸をしてしまうとあの美味しい水の味が飛んでしまう、焼酎の水割りが出来なくなる。しかし、ピロリ菌は除菌をしない限り無くならない。ピロリ菌とは、胃の表層を覆う粘液の中に住みつく菌で、感染したまま放置しておくと胃がんなどを引き起こすやっかいな菌だ。仕方がない、今後は煮沸をして飲もう。以前と比べれば味が落ちたが、まだ自動販売機で買った水と比べれば美味しい。そのまま煮沸をすることに決めた。
 話は変わるが、昨年は一度もマラソンをしなかった。4~5年前に脚立から落ちて背骨を骨折してからというもの、普段の生活には問題はないが、走るとまだ背骨に少し響くこともあり、練習が出来ないからだ。それまでは毎年一度フルマラソンに出場をしていた。あの走り終えた後の達成感、爽快感を思い出すとたまらない。
 最近出た本で、精神科医が書いているものだが、運動脳が仕事にも認知症の予防にも効くと書かれている。著者の国スウェーデンでは67万部も売れたそうだ。(サンマーク出版、アンデシュ・ハンセン著、運動脳) やはりそうか、運動をした方がいいのか。それなら回り道ではあるが、腹筋と背筋を鍛えて背骨を支えてやればいいのだ、ゴルフにも良いだろう。そう考えて今年は毎日自宅で鍛えることにしだした。始めたばかりで続くかどうか分からないが、コツコツ出来る範囲で習慣づけしたいと思っている。
 こうしてお医者さんは見事に診断やデータから我々を導いてくれる。経営にもこのようなことが出来ないものか。永年会計事務所をして思うのは、致命的な経営判断を2~3回すると、会社は倒産の憂き目に会うこともある。何とか未然にこれを防止できないものか、いわば経営のピロリ菌を除去できないものか、一度住みついてしまった経営のピロリ菌 (経営判断の癖) は思い切って除去しない限りとれない (ご本人では気付きにくい)。そして企業の足腰を強くするにはどうすればいいのか。 
 ある名古屋の大きな会計事務所を経営する税理士は「自己資本比率を50%にしなさい」と言い切っているが、何故50%なんですかと聞いても、「それ位ないとカッコ悪いでしょう」という返事で、必要性は分かるが、私にはそのまま使えそうにない。そこで私なりの判断基準を見つけた。
 それは5ヶ年の経営計画書を作って頂くことだ。そこでつじつまがあって資金繰りが回る計画ならお勧めするが、そうでなければその条件が揃う工夫が見つかるまで何度でも待つ。経営のやり方には外部からあれこれ口出しをされたくないものだ。私共はご自身で判断をして頂くお手伝いなら出来る。そこは数値を扱うプロとして想いの実現に向けて必要なプロセスを一緒に探ることなら出来る。数値は関連があるから機械で弾いてみないと分からない。何度もシミュレーションをしてから判断をして欲しい。突破口が何通りか見つかることもある。そして次なる危機に備えて蓄積もできる。
 高名なコンサルタントであれば、医者のようにずばり経営の問題点を指摘出来るのであろうが、私に出来るのは気づいて貰うお手伝いだけだ。
 税理士・中小企業診断士 安部春之

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