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ぷちえっち・ぶちえっち7 スカートめくりの甘い誘惑

もう随分と昔の話である。

 僕が小学校2年生の時、スカートめくりが大流行した。僕の学校に通っていた小学校男子が特別にスケベだった、というわけではなく、全国の小学校で燎原の火のように流行が広がったのである。
 漫画家の永井豪さんが書いた「ハレンチ学園」がきっかけだったように思う。永井豪さんは「マジンガーZ」や「デビルマン」で知られるが、「あばしり一家」や「キューティーハニー」をはじめとするお色気漫画も大得意であった。僕も大好きな漫画家で、ドキドキしながら読んだものである。
 さて、実際のスカートめくりであるが、女子とのすれ違いざまや、あるいは後ろからそっと近づいて、パッとスカートをめくり、「パンツ見っけ」(なんか日本語として変だがたしかこうだったと思う)と叫んではしゃぐ、というものだった。

 女子の反応は様々で、「いやん」といってスカートを押さえるかわいらしいものだったり、怒ってほうきを持って男子を追いかけまわしたり。男子の場合、スカートの中をのぞいてみたい、というスケベ心も当然あったが、まだみんな小学2年生なので、めくる瞬間のスリルや成功した時の達成感、女子の様々な個性的な反応をむしろ楽しんでいたように思う。若い女の先生のスカートをめくるつわものさえいた。今は絶対に無理である。下手をすればセクハラで警察沙汰である。NHKのニュース速報で報じられてもおかしくない。牧歌的というか、変な時代だった。
 僕もスカートめくりには非常にとても極めて興味があった。ありていに言うと、やりたくてやりたくて仕方なかった。しかし、残念なことに僕は先生も周囲も認める優等生だった。学級委員長でいつも成績は1番。品行方正を絵に描いた様ないい子、というのが僕のキャラである。やんちゃな友達がスカートめくりをするのとはわけが違う。失うものが大きすぎるのである。
 もし僕がスカートめくりをした場合、「先生、修ちゃんがスカートめくりしてました」と先生に告げ口されるであろう。女子からの信頼を一気に失って白い眼で見られるであろう。悪ガキどもに「やーい、スカートめくり男」とはやしたてられるであろう。自意識過剰ではあったが、僕はそれをとても恐れていたのでどうしてもできなかった。
 そこで、発明したのが「コバンザメ作戦」だ。スカートめくりをしょっちゅうしているやんちゃな男子のすぐ後ろあたりの位置をキープするのである。そいつの後をついていき、そいつがスカートめくりをするのをひたすら待つ。「僕は興味ないけど、いや、偶然みえちゃったよ」という作戦である。僕は優等生の仮面をかぶっていたが、実はこすからいいやな子供であった。

 この作戦は結構功を奏した。かなりの確率で女子のスカートの中をのぞくことができたのである。見えた瞬間はまさにドキドキワクワク、超ハッピーである。男は子供の時からバカなのであった。
「パンツ見スカートめくりの対象が女子全員だったわけではない。本気で怒られそうな子、あまり可愛くなくて見ても全然楽しくない子、それに加えて、僕と同じクラスの女子で1番の優等生でお嬢様のミカちゃんには誰も手を出さなかった。男はバカであるが、そのへんは意外とわきまえているのであった。
しかしある日、いつものようにやんちゃな孝太君にコバンザメ作戦を仕掛けているときに、なんと孝太君は友達と話し込んでいるミカちゃんの後ろへと獲物を狙うハイエナのようにそろそろと近づいていった。
(まさか、やるのか)。
僕はサスペンス映画を見ているときのようにハラハラドキドキした。かなりの期待もあった。

 「パンツ見っけ!」孝太君は掛声とともに本当にやった。ミカちゃんの赤いスカートが見事に舞い上がり、中が覗いた。
 僕はそれを見た瞬間強い衝撃を受けた。ミカちゃんの純白のパンツは、たまたまその日動きすぎたせいなのか、サイズが小さすぎたのか、左右がめくれあがっていわゆるTバッグ状態になっていた。お相撲さんのおしりのようにくっきりはっきり見えたのである。

「いやっ」。
ミカちゃんはスカートを押さえて泣き出してしまった。女子が数人、ミカちゃんの周りに集まって「大丈夫?」と心配そうに声をかけ、考太を全員がキッとにらんだ。考太は青ざめていた。
 その事件のせいかどうかわからないが、数日後の全校集会でスカートめくりは全面的に禁止ということになり、ブームはあっという間に下火になった。しかし、大人になった今でも、ミカちゃんの真っ白なおしりは僕の頭の中にくっきりはっきり残っているのである。


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