燕

ぷちえっち・ぶちえっち9 カブトムシのエサは女性の……

 小学校5年生の時カブトムシを3匹飼っていた。森で捕まえてきた愛犬ならぬ愛カブトである。
 今はコーヒー店にあるミルクやシロップのような小さなパッケージに入った「カブトムシのエサ」も売られているが、当時はそんなものはなかった。エサはスイカの皮や砂糖水が定番だった。
 カブトムシの口は黄色くて四角くて、細かな毛がびっしり生えておりそこから樹液などを吸い込んで食べる。砂糖水を皿に入れただけではとても食べにくそうなのだ。ティッシュでやってみたがうまくいかない。砂糖水を吸わせて、カブトムシが食べやすくするために何かいい材料はないものか。僕は家じゅうを捜索することにした。
 30分ほどの捜索活動の末、僕は戸棚の中ですごいお宝を発見した。ビニールの袋に20個ほど詰まった薄い水色の四角い物体だ。大きさは6センチ×4センチ×厚さ2センチぐらい。どうやら綿でできており水をよく吸いそうだ。
 嬉々として砂糖水をそのなぞの物体に吸わせてみると、まさに僕が期待した通りのちょうどいい吸い込み具合だ。5個ほど使って砂糖水を吸わせ、愛カブトにあげてみた。彼らは新たなエサに集まってきて気持ちよさそうに食べた。大成功である。僕は非常に満足した。それからエサやりは、その謎の物体と決めた。
 しかし、2、3日たって、僕がいる時に部屋に入ってきた母親が、カブトムシの入った水槽を見てものすごーくいやな顔をしたのである。普段は穏やかで笑っていることが多い母親が、何かよほど汚いものを見たようなそんないやーな顔をするのを初めて見た。ほどなく母親は無言で部屋を出ていった。理由は分からずじまいだった。
 それから異変が起きた。戸棚のいつもの場所にあの謎の物体がないのである。家の中をいくら探しても見つからなかった。「あのさー、ほらほらあのカブトムシに餌あげるやつ、あの四角い綿のやつ知らない?」と誰かに聞くわけにもいかず、僕は使用を中止せざるをえなかった。
 タネ明かしすると、あの謎の物体は母親の生理用品だった。確かに虫籠に自分が使っている生理用品がいくつも並べられ、カブトムシがチューチュー吸っている光景を見るのは女性にとって嫌であろう。
 当時の僕には女性の生理の知識はなかった。母親がなぜそんないやーな顔をしたのか、真相を知るのは中学2年生になってからである。母よ、ごめん。


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