噺家殺人事件 パート２【ショートショート】

　地方の公民館で人気落語家の独演会が始まっていたが、なかなかお目当ての噺家が登場しないので、客席は色めき立っていた。

「師匠はまだですか？」

　主催者にしつこく言い寄られ前座の白内家しらないや なん太たが困り果てたところへ仲半亭ちゅうばんてい 志しがい師匠の訃報が届いた。どうやら溺死だったらしい。

　偶然同じ町に仕事で来ていた船越亭ふなこしてい 歌かさすが駆けつけて前座のなん太たに話を聞いたが何も知らないようだった。

　 しかし歌かかさすはすぐに事件の謎を解いた。

ーーー　ボートが沢山ならぶ大きな湖の畔。

　船越亭ふなこしてい 歌かさすが左草家さぞや 九坂郎くさかろうを呼び出していた。

「九坂郎くさかろう、お前、昨夜師匠とここに来ただろう」

「お、おれじゃねえよ！ 歌かさす兄ぃ！　おれは何もしてねえんだよ！」

「わかってる。志しがい師匠は自殺で間違いねえ。ボート屋のオヤジも目撃してる。だがな、お前にも責任はある。俺にもある。皆でよってたかって志しがい師匠を殺したのよ。お前はいつものように大げさに志しがい師匠を褒めて褒めて褒めまくったんだろ。業界一のせこヨイショに乗せられて師匠はさぞかし気分が良かっただろうよ。でもそれがいけねえのよ。志しがい師匠は常々悩んでいた。俺はもう仲間や世間に褒められた芸しか出来ねえ。それ以外をやるのが怖えんだ、ってそれはもう精神的にずいぶん追い詰められていなすったよ…」

「結局…」

　聖母乃家せいぼのや 子守歌ららばいが脇から出て来ようとした。それを船越亭ふなこしてい 歌かさすが「まだ早い！」と目で制す。

「まぁ結局、褒め殺しに合い、自分の芸に溺れて死んだってことだろうな」

　船越亭ふなこしてい 歌かさすが「今だよ！」と目で合図する。

　聖母乃家せいぼのや 子守歌ららばいが慌てて出てきて遠くを見つめた。

　大げさに泣く九坂郎くさかろう。

　どや顔の歌かさす。

　気持ち良さそうな子守歌ららばい。

ーーー　ドローンカメラが湖畔の三人から徐々に遠ざかる。

キャスト

中盤で死ぬ噺家：　仲半亭ちゅうばんてい 志しがい

謎を解く噺家：　船越亭ふなこしてい 歌かさす

何も知らない噺家：　白内家しらないや なん太た

演技がくさい噺家：　左草家さぞや 九坂郎くさかろう

事件解決後に出て来た噺家：　 聖母乃家せいぼのや 子守歌ららばい

ロケ地：　どこかの湖畔

脚本：　ぼんやり亭てい らじ男お

🐈　🐈　🐈

前回に引き続き、リクエストもあったので調子に乗って二作目を書いてみましたが、あれですね。やはり二作目ですね。。。。。

また次、がんばります！