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七つの子 : another heaven 3

 友達のアパートからカーナビの設定に残ったままの《自宅》付近には15分程度で到着しました。

 季節ですか? あれは確か夏の終わり頃だったと思います。

 街のラーメン屋の開け放たれたドアからこぼれるテレビの音と、その季節になるといつもやってくる懐かしさを纏った爽やかな風と、そしてちらほら赤トンボがみられました。

 

《自宅》付近についた僕たちは、登録された住所を探していました。すると、黒くて細長い犬を連れたお婆さんがこちらを見たかと思うと、ギャッ! と悲鳴をあげ、何かを叫びながら犬を抱いて逃げて行きました。犬もものすごく怯えて吠えていました。

「赤鬼ぃーーーーーーーーーっ!!」 

 確かにそう聞こえたのですが、もしかしたら違う事を言っていたのかもしれません。

 その次に、第二村人みたいな感じで現れた猟師のような格好をしたおじさんがボクらに話しかけて来たんです。

「あ、オメェさまたち気にするんでねぇよ。あのバァさん、数年前の事件からこっちずっとああなんだ。赤い車を見るど、ああやって叫ばしゃって逃げでいぐのよ。かわいそうにボケてんだべな。ちょっとメぇは交通事故に合いそうになったのを高校生に助げで貰ったって喜んでたのに、あれは本当は縄文人に助けられたんだって言いなさって、そりゃ家族はもう大変さね」

 ボクと友達は勢いに気圧されましたがなんとか「その事件て言うのはどういう?」と聞いていました。

「あ、そりゃオメェ、あっこに白い家が見えるべさ。あっこで人が殺されただよ。それが酷いのなんのなんのこれしきってぐれぇでな。若いお母さんと子供二人がメタメタに刺されての。可哀想にの。ほんなもんでよ、オメェさまたち、あの家に近づかない方がええでよ。ほんじゃの」

「え?! あ、ありがとございました…」

 ボクと友達はその猟師みたいなおじさんと別れた後、おじさんの助言を聞かずにその問題の家の前まで行くはめになってしまいました。

 なぜって、その家が目的の住所だったからです。

 前に小さな駐車スペースがある、塀も建物も真っ白い2階建の家でした。

 ずいぶん人が住んでいないようでした。それだけではなく次に住む人の為に何もなされていない様子がわかりました。それは掃除がしづらい場所に溜まっていく埃を思わせました。

 何者かに見られているような感覚に襲われて、ふとベランダを見上げました。もちろん何者もいるわけがありません。それはきっとボクの先入観が見せた幻だと思います。


 友達の様子が明らかに変わり始めたのはこの家を見た後からでした。

 二人とも後悔していました

 友達も相当凹んでいたと思います。自分が買った車のカーナビに残された住所が、殺人事件があった家だったのですから。

ゆうやーけ こやけぇの あかとんぼー おわれーてみたのぉわあ    いつのぉひいかぁー

 運転しながら友達が赤トンボを見つけて、また悲壮な面持ちで歌い始めたのでよく覚えています。

「俺は今、赤トンボと併走しているんだぜ」

 何の自慢か意味不明でしたが、友達が歌った後に残る変な薄気味悪さがなかったのでその時は安心しました。

「そっか、ご機嫌で良かったよ。死にたいような顔をしながら歌っていたから心配したよ」

「俺が死にたいだって? そんな訳あるかよ。逆だよ逆」

「逆って?」

ヒトヲコロシタインダヨ

 そう言った友達の声は別の誰かのものでした。

 驚いて横を向くとそこにいたのは、

 まるで悪魔のような顔をした「誰か」でした。



つづく



🚗 🚗 🚗 🚗 🚗 🚗 🚗 🚗 🚗

 これはしめじのお兄さんが書いた世にも怖い物語から始まった企画に乗っかった物語です。下記が募集要項(?)です。

《カーナビに残る、前所有者の住所》の設定だけ残して、あとは全部変えてくれてもいいよ👌         (どんどんゆるくなっていく企画設定)あなたなりの解釈を。                        あなたなりのストーリーを募集致します🐵

 怖い話が苦手な方はご遠慮ください。

 怖かったり残酷な話が大丈夫な方にとっては、その物語を読む事によってスッキリしたり、何かが抜け落ちたり、浄化されたりすることもある気がします。

 僕の書いたものはそれほど怖くないかもしれませんが、

 しめじさんと穂音(ほのん)さんが書かれたお話はガッツリ怖いので、苦手な方は本当に要注意です(笑

↓ こちらは しめじさんが書いたオリジナル(ホラー? サイコサスペンス?)小説(全9話)。


↓ こちらが 穂音(ほのん)さんが書いた別の最終話。この物語を一番と言っていいほど怖がっていた方が、さらに恐ろしい最終話を書くという現象が起きました。人の心の複雑さを垣間見れた瞬間でした(笑

七つの子(9) : another world



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