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貴女の夜は僕のためにある


事実は小説より奇なり

冬銀河の137文字に出したのは
クライマックスの切り取りなので
話がバレてしまうんですけど
そこはわかった上で楽しんでもらうのもよいかと

この137文字は、
その前の道頓堀の夜から構想を得て
半分妄想を足して書いてた話を
サマリーしたものです
最後の文とは違い
完全リアルを書き起こしたものではないんです


最後にその夜について書いてます
順番は
スタートとなる137文字、
その元となる2回目、
最後は初対面となるほぼノンフィクション
で並べてます
それではご覧ください


翌朝
カーテンを引いた先に見えたのは
白い山並みと凍湖

煌めき淀む道頓堀で
大量の水は怖いのって
伝えたのにな

貴女の一日を僕のものにしたいから
拉致りますねと誘われ
一晩中
呼吸さえも手の内にした君が起きた

貴女が逃げ出せないように
湖を選んだのに、と
意地悪に微笑む



それでは小説「貴女の夜は僕のためにある」
ご覧ください

あ、言うの忘れた!
R18です
未成年は大人になってから読んで下さい

…………………………………………………

折角関西に来たのに
部屋に籠もってばかりじゃもったいない
雨粒もほぼ落ちてこないし
20m歩けば超有名観光地の始まりだからと
散歩に出ることにした

上下はブラックスクリーンの黒灰
左右はこれで満足かとばかりの色の圧
空からも
地からも
水音が聞こえない色彩の夜
隣を過ぎるYOUの喧騒の合間を縫い
左右からしずしずと進む観光台船を目で追って
違和感の残る下腹部を
ふんわりしたもので包まれたまま
大理石のベンチに並んで座る

色がうるさい
YOUがうるさい
そう思っていた喧騒も終わりがけ
さっきまでの色ごとを
フィードバックするには
周りを気にしないといけない街になったから
自然と普通の話題に移行していった

鏡面に映る宗右衛門町のカラフルが
行き交う船で乱れるのを
二人でボーっと見ていた時に思い出した
スイミングプールは平気なのに
野外にある大量の水が怖い
恐怖症のように激しいものではなく
一歩でも遠くに身を置きたくなり
視界にあるとソワソワする程度の軽いものだけど

覚えておかないとね

マッチングしたあたりから
何度も聞いたことば
好きな物事を聞き出そうとするも
私は好きなものをとりたてて言う癖がないので
NGなことを耳にするたび
覚えておきます、と返事してくれた
人心掌握術に長けた若者だなあ…と
ぼんやり褒めていたくらいで
仕事でもないのに
他人の好みを覚えてもらうことなど
㍉とも考えてない
なので
ふふ、人生で道頓堀なんて何度も来ないよー
と軽く流したあと
元来た道をたどって部屋に戻る

その日の夜は長かった
散歩前とまったく同じことを
飽きもせず最初からまたはじめて
若さの欲と熟した欲という
一番終わりのない組み合わせの二人の夜は
眠ることなく
延々と翌日昼前まで続き

チェックアウトの時間を迎えたことで
やっとその日の夜は終わった


筋肉痛もある程度静まった3日後
楽しかったね、の話題も落ち着いて
次はいつ会うことになるかなーと
なんの気なしに口にした
少し間があいて

蜜豆さん、毎週なんて難しいのはわかってます
でも貴女に会いたい
たから週末
貴女の家に近いところまで行きます
だめですか?

少し悩んだ
どう返すのが正しいのか考えあぐねていると
高速使えば2時間かからないし
心配なら近くのホテルに泊まります
男一人だからどうとでもなります
本当に気にしないで下さい、と
心配する私へ
無理のない解決法で
畳みかけてくれたこともあり
じゃあ、ご飯でよければいいですよと
軽い気持ちで返事した


金曜の夜、彼が予約した
私の街から少し距離がある山あいのホテルで
大人同士としてご飯を食べる
楽しいなあ…若い時みたい
気分の良くなった私は
少しくらい遅くなっても大丈夫なことを伝える

じゃあ
夕方から明日まで
貴女の一日を僕のものにしたいから
拉致りますね

そのまま部屋に連れて上がられる

待ち合わせの時点で夜だったけど
行きに使った道から見えていた車の明かりもなく
窓の外は真っ暗
ドアから入ってきた我々が映る
山の中だったもんな…
うわの空側ではそんな事を考えながら
喉から下の全ては
先週のことが生々しく蘇える

彼の指先が
私の上着、スカート、下着と順々に剥いていく
そのさまが
暗い窓鏡に映り
焦り うわずっていく声の私と
2度目にして私に慣れた彼の表情の対比が
生け贄にされる誰かを
窓の向こうから見ているような感覚にさせる

ほら、あの鞄の中には
私を贄にするもので溢れてるんだよ
今選んでるのはこの前苦しんだアレ
手に取ったのは前よりもひどいもの
新しいあれはなに?
ぼんやりトランス状態の私は
指吸いしながら
増えていく道具をじっと見ている

ここから私の言葉は意味をなさない
合言葉だけが私の意思表示
喚いても罵っても
赤ちゃんの鳴き声でしかない
私が心から望んでいる空間
私の体が満たされる方法

丸裸の私の手を引いて
シャワールームへ向かう
甘く穏やかにただれた時間のはじまり
一度味わった女の身体を
若い彼は
どんな執着を持って
私の妄想と願望とほぼ同じの
彼の妄想と願望に結び合わせるのか
6日前のあの夜の長さの倍以上の時間を
私はどうやって応えていくんだろう
さらなる混乱とともに
全身に鳥肌が立つ

日が変わって数時間後の私は
叫んでいた
キャーという悲鳴じゃないし
あーんなどの喘ぎ声でもない
色艶など一切ない
窮地の声

一度すべてが白く飛んだところまでは覚えている
次に落ちるのはつらい
でもやめ時がわからない
意識が混濁したまま
絶頂が頭打ちし始めた
ああ、また来た
いやだ
いやだ
いやだいやだいやだいやだ
来た
もう無理
無理だから!いやだ!

ギャグのボールの中へ全身全霊で
叫んでいる
叫ぶしかこの感覚を逃す方法をしらない
声が出ている間は息が続かない
けど
吸うタイミングで
快感が全身を巡る
まるで床に叩きつけられるほどの強烈な快感
だから息を吸いたくない
でも苦しい

快感から逃れたくて
ベッドの上を転げ回ろうとする私を
どうやってるのか
膝と足で固定される
唯一自由な腰と背中でブリッジをしても
手と顔は離れない
あまりにも動く時は
自分のものを中につがえて
動きを封じ
あらためて責めを続ける
途切れない辛さ
そこが楽しい様子の若い男
それを見て私の脳は最高に悦に入る

息が止まる
責めが緩まる
息が戻る
責めが始まる

こと呼吸だけを文字にしたら単純なもの
しかし
されてる方は
圧倒的な快感を降り注がれ
自我の崩壊と戦いつづけている
それを楽しむ当事者
その当事者が喜んでいることに
強い満足を感じる生贄の身体の持ち主

歪んだ性癖
それに惹きあう性的錯綜者たち
高尚な嗜好ではない我々のカテゴリーで
穢れながら汚れながら
貪る獣たちの夜


結局2度目を前にギブアップして
少し仮眠に入る

エアコンは全開だけど少し冷える空気
窓の外は明るい
ふと目覚めてカーテンのすぐ先の
真っ白に曇る窓を指で拭い
小さな額縁から外を見たら
我々の部屋は
ダム湖に突き出したホテルの
水の際だった

水怖いって言ったのに…

後ろでシーツのこすれる音がする
振り向くと目が開いてない彼が
こっちを見ていた

だからここを選んだんです
たくさんの水、怖いんでしょ?
あの夜みたいに
何かに掴まっておかないと
水に落ちてしまいそうな気持ちになるって
コートの裾を掴んで離せないくらい
怖いんだから
きっとずっと僕のこと
掴んで離れないだろうし
そっと僕が寝てる間でも
逃げ出せないように
ここにしたんですけど

まさか凍ってしまうとは思わなかったです

どうします?
歩いて逃げ出しますか?
僕から
逃げ出したいですか?

私はその問いには答えずに


彼のシーツの中へと
しずかに潜り込んだ。



〜締〜


…………………………………………………



年の差を埋めるもの
それは
情熱だったり共通の話題や趣味だったり
昔からの憧れ
捨てきれない望み
いろんなものでできた
糸を何本も投げ渡し

対岸に引っ掛かったものをきっかけに
その糸が盤になるほどの数
まだむき出しの対岸へと投げつづけ
引っ掛けていく

そこが一番の難所であっても
自ら渡した糸の盤上を歩み近づき
対岸の相手の心を解きほぐして
強く手繰り寄せ

その差は自分が埋めたから
貴女はただそこにいればいい

満身創痍でヒヒヒと笑う

 言葉や文字を生業としていた私
古典文学を趣味で極める僕
 どんな時でもファの音だけはわかる私
ピアノをストレス発散に奏でる僕
どの分野を振られても
私を遥かに超えたその先に腰掛けて
ニコニコとこちらを見ている

知性は凌駕した
情熱も伝えた後だ
あと残り一つの難所
年月でしか稼げない性的経験値
これも
己自身を実験体にすることで
未来の受け手に与えるかもしれない
不安感や苦痛を自ら理解し
貴女を傷つけないようにできる

セックスしかしてこなかった同世代よりも
遥かに貴女へ近づいてる理由に、
なりませんか?

貴女の理想のDaddyには
程遠いかもしれないけど
貴女のDaddyになりたいです
まっすぐに伝えたその声は
いつもの高くてキュルンとした声ではなく
しっかりとした青年の声だった
そのギャップに気圧されて
土曜の昼に心の隙間をあけた

初顔合わせは新大阪駅
超年上かつ豊満体型さらに地味顔
いくら性癖の魅力が巨大だとしても
私の見た目に怯む可能性はある
そんな時
人生における3時間の気の迷いなら
新幹線代とあわせても
まだ諦めのつく浪費だろうと考えたからだ

レアケースの性癖をもつ同士に出会えた奇跡は
ここから先もうない
予定通り
ランチと会話をしたいと
申し出てくれたので
駅ナカのお店を見て回り
長居できそうな和食の店に座り
もぐもぐとポツポツと
もうすでにお互いが知っている話を
生身で再びなぞりあう

盆が下げられ
お茶のおかわり
水のおかわりを超えたあたり
何か注文しないと悪いかなと声掛けしたら
まだ席に余裕ありますので
ごゆっくりしてて下さいと店員
他意はないんだろうけど
店員にさえ
甘えることが下手くそ同士は
ここから早く移動しなくてはと
共通の衝動が加速する

次の居場所に移るまで
我々の行動に一切の無駄なく
小一時間後には
とある部屋に籠もっていた

さらに1時間もすると
バスタブに座った私の身体中を
くまなく掌で泡まみれになぞり終え
反対向きに腰掛けさせたあと
身体を湯で清めたら
自分は風呂場にどっかり座り
ゆっくりと
やりたいように
好き放題
満足するまで
執拗に何度でも何度も終わりなく
私の触られては困るあたりを
自分のものにしていく

私はそのたびに耐えに耐え
堪えきれずはじけると
その声を再び聞きたいとばかりに
爆ぜる部分の芯を探すべく丁寧に緻密に
追い詰めていく指
追い詰められる私

背中をむけて座ったことで
彼からは顔が見えてなかったのがよかった
あの時の私は
切れ目なく続く知っている快感と
際限なく続く新たな快感で
息が詰まり
マスクの下の目は見開き虚空を見つめ
指は熊手状に広がり
ギャグの穴から涎が滴り床と繋がっていた
快楽から逃れようと尻ごと動かそうとも
指はどこまでもついてくる

ああ〜っかわいいと連呼する甲高い声が
背後から絶え間なく聞こえる
厳しい蔑む言葉に慣れていた私は
そのたびに気が緩み
そのたびに より的確な責めが覆いかぶさる

荒い息が
小さい耐え声になり
大きな耐え声、喘ぎ声、悲鳴と変わる
悲鳴のバリエーションも尽き
声の出ない叫び声とともに
胸から下が痙攣を起こす

異質な動きに指が止まる
その隙に
イヤッイヤッもうイヤッ
一気に伝えるが
私と彼の世界でのイヤは褒め言葉に変換され
うんうん〜いやなんだね〜(嬉)
の返事が来る

私がここ最近接してきた
射精が最終目標の性行為や
鞭や縄や苦痛系の責めと違い
快楽系には
何かを越えたあとの赦しや受容の時間がない
快楽主義者の多くの責めは
甘く穏やかな空気の中で
受け手の快楽限界値を越えたあとから始まる

痛みや不快感や苦しみが
先程までの快楽と混ざり合い
気づかないまま翻弄される
失神や気絶に至るまでの間に
いかにして僕・俺の色で
相手の尊厳を壊滅させるかを
静かに
淡々と
優しい言葉とともに
実験観察していく性癖かなと思っている

そして私はそんな性質を持つ男性に
強く強く惹かれ
年甲斐もない選択肢を
ウッカリ選んでしまう
今回は初対面初体験なので
相性を見るための時間だったこともあり
そこで開放された
私は
バスタブの中で10分ほど放心したら
湯船から引き上げられ
体を拭かれ
髪を撫でつけられながら
ベッドに連れて行かれる

当たり前だがベッドでは粗相が出来ない
なので問答無用のオムツ装着
まだ快楽の経路が生きている体では
様式美のベビーパウダーでも
身体が跳ねるほどの反応を見せるものの
そっと
オムツを閉じ、お腹のあたりをポンポンしながら
寝たままの私に大人用哺乳瓶で
次のおもらしのために
喉いっぱいジュースを飲ませて
夕食のUber Eatsを選ぶ


食事はエロスだ
そうやって食と性を並べていう人は多い
それは唇と女性器、舌と男女の突起の
代理表現だったり
もっとシンプルに性行為の途中作業を
当てはめて見ているからだと思う

私達の 食事はエロス は
もっと安直
もっとダイレクト
飲んだものは次のターンにて
言葉で伝えない私の気持ちのかわりに
生理的絶頂を示し
食べたものは次のターンにて
恥ずかしさを感じるはずのない私に
感覚と音と匂いで
その奥にいる
隠しきれない大人の女の私を
辱めるための大きなツールになる
だから
性行為と同じ欲望のままに
私へのあ~んパクを繰り返す匙は
私の消化器までもを愛撫していく

夜は、長い
若さは、強い

彼が自覚してからの十数年の想いのうち
今できることの全てを
塊で私に乗せてくる
その量は
受け身の私の想像を遥かに超えて
若さゆえ手抜きもせず
年上の私に蓄積される悦楽と疲れなど
わかるはずもないとばかりに
一から始め直す

最初こそ気を使い
私の身体を取り回しやすいよう
ずらしたり浮かしたりしていたが
6時間を過ぎたあたりから
背中に手を回すことも
抗う素振りをすることも出来ず
ただただ
快楽に獣のような声で反応する肉塊がいた
ひとしきりしたいことを終え
私の限界をようやく察した彼が
何かを伝えようとしているが
トランス状態の私の耳に
音は届いても意味が取れない
じっと
動く唇を見るだけの私の顔に
ときおり吸い寄せられそうになる彼がいた



……………………………………………

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