日本について考える。

「民主主義とは何か?」と問われたらなんと答えますか?

国民が国の主権を握る制度、と答える人が多いでしょう。だから、選挙が行われている日本は民主主義だと思っている人が多い。

でも、最近思うのです。現在の日本は本当に民主主義だろうか?と。

民主主義に必要な要素は幾つかあります。例えば、法治主義。政治家はスピーチの中で『法の支配(rule of law)』という言葉をよく使います。

もう一つ、非常に重要な要素が基本的人権の尊重です。人権の尊重がない民主主義はありえません。

国連の定義では「民主主義とは人権と基本的自由を尊重し、自由に意思を表現できる環境を提供するものである」となっています。

According to the United Nations, democracy "provides an environment that respects human rights and fundamental freedoms, and in which the freely expressed will of people is exercised."

当り前じゃん!と思った人が多いと思います。

まず、人権とは何でしょう?

すべての人間が,人間の尊厳に基づいて持っている誰にも侵されない固有の権利

当り前じゃん!と思いましたね? そうです。当たり前のことなのです。

その権利を絶対に守ることが民主主義の根幹です。民主主義を維持するためのルールが、法を順守すること、そしてみんなの人権を守ること。

しかし、人間は完璧ではないので、どの国においても人権侵害は起こります。仕方がありません。

ただ、私がいつも驚くのが、人権侵害に対する人々の認識、対応が日本だけ著しく異なるということです。

人権侵害が堂々と行われている国というのがあります。具体的に名前は出しませんが、皆さん、思い当たる国は幾つもあるでしょう。そして、世界から見て、日本がそれらの国と同列の人権後進国として扱われるようになる可能性があることをメディアが取り上げない、恐ろしいことだと思いました。

昔、英国のジミーサヴィルという有名人が、生前多くの性犯罪を繰り返していたことが発覚しました。彼が亡くなったのが2011年の終わり。その直後、2012年には犯罪が公になりました。

明らかな人権侵害です。英国BBCは何故それが起こったのか、徹底的な検証を行い番組を制作しました。

警察も何千人と動員され、全容解明に国全体が動いたのです。

『全容解明』

これは一つのキーワードです。

再発を防止するためには全容解明をして、原因を追究しなくてはなりません。でないと有効な再発防止策が取れないからです。

そして、サヴィルの遺族が受け継いだ遺産は全て没収され、被害者救済に充てられました。彼が遺したチャリティの会社は全て清算し、資産は他のチャリティ団体が受け継ぎました。彼の名前が付けられた場所なども名前を消去。サヴィルが生前に得た勲章や大学から得た学位も剥奪されました。彼の墓まで撤去されたのです。

当然です。民主主義の根幹を揺るがしかねない重大な人権侵害にはこれくらい厳しい姿勢で臨むことが世界では当たり前のことです。

しかし、日本ではそれが当たり前ではない。中には加害者側を庇い、被害者を誹謗中傷する人たちまで現れる。加害できる環境を整え隠蔽まで行ってきた会社が存続するなんて、民主主義国家では絶対に起こらない。加害者が生きているか死んでいるかは関係ない。

だって、人権を侵害することは民主主義において、絶対的悪なのです。悪の組織に属する人や悪を擁護する人も悪。悪は撲滅しなくてはならない。

でないと、真似する人が出てきて、民主主義が危うくなるからです。人権侵害の再発防止のためには絶対に必要。

さもないと知らぬ間に独裁政権になって拷問だってOKというような社会になってしまうかもしれない。昔の日本だって特高に拷問されたとか言論を封じられたとか、怖い事件が沢山ありました。

だから、現在の民主主義国家における人権尊重は過去の過ちを繰り返さないようにという人類の知恵なのです。

それでも起こってしまうのが人権侵害。だからその都度、辛抱強く再発防止の方策を取ることが重要だと多くの民主主義国家は考えています。

少し話が逸れます。

25年以上海外に暮らして、自分自身も省みて、私は日本人の二つの特徴に気がつきました。

『臭い物には蓋』
『赤信号、みんなで渡れば怖くない』

嫌なことは見たくない。臭いものには蓋をしようという感覚こそ、人類史上最悪とも言われる性犯罪事件の『全容解明』を妨げているのではないでしょうか?みんな、知りたくないんです。だって、嫌なことだから。

英国人だって気持ちは同じです。嫌なことは見たくない。でも、民主主義を守るために嫌なことを我慢したのです。

そして『赤信号、みんなで渡れば怖くない』という標語は日本人の本質をついていると思います。

「悪いことかもしれないけど・・みんながやってるから・・・」

テレビで「カトリックの教会でも同様の事件がある」とコメントしている有名人を見ました。「他の芸能事務所でもやっている」と。それが何だというのでしょう?Two wrongs don't make a right. 悪いことは悪いのです。そのような加害者擁護コメントがメディアで発信されること自体が異常で、少なくとも過去に同様の事件があった英国や米国で見かけたことはありません。

根っこの部分で『バレなきゃいい』とか『触らぬ神に祟りなし』とも繋がっているこの感覚は、民主主義というよりも多数決主義だと私は思います。多数派がやっていればいいんだ。たとえ、それが人権侵害でも。

こういう多数決主義の国において、問題は何でしょう?

『多数派=絶対に正しい』

という考えが無意識化に広がると、

『少数派=正しくない、もしくは軽く見ていい』

と勘違いする人が出てくるということです。

民主主義は全ての人間の人権を守ることが前提です。少数派の人権が守られない社会は民主主義ではありません。

民主主義は当たり前だと思っていませんか?民主主義は過去の歴史で人々が戦って勝ち取った制度です。それを維持するための意識と努力が必要なのです。

現在の状況でまともな被害者救済ができるとは思えません。いじめの構造と同じです。

『いじめられる子にも問題がある』
『いじめっ子にも可哀想な事情があるのよ』
『加害者の人権はどうなるの?』

いやいや、いじめって人権侵害だから、絶対に悪だから。被害者が何をしていようと絶対的に悪いのは加害者だから。それなのに被害者に我慢を強いて、時には責める。

「だって〇〇ちゃんもやってたもん!」
「私だけじゃないもん!」

英語だったら「Two wrongs don't make a right!」とピシャリと 言われてお終いでしょう。

日本語で「Two wrongs don't make a right」に相当する諺はあるのかしら?

ちょっと思いつかないです。

日本は本当に民主主義国家なのかどうか、世界が厳しい目を向けていることを知って欲しいです。




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