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ベネディクティン

今回は最古のリキュールとして有名なベネディクティンについて書く

まずベネディクティンについて少し説明したい。
ベネディクティンとはノルマンディ地方のベネディクト修道院で製造されるお酒である。
ブランデーをベースにアンジェリカやコリアンダー、グローブなど27種類のハーブ、スパイスを使い製造されるリキュールである。
また、ラベルに表記されているDOMとはラテン語の「Deo Optimo Maximo」の略で「至善至高の神へ」を意味し、ベネディクト修道会の書物の冒頭に献辞としてよく書かれる祈りの言葉である。

ベネディクティンについて少し説明したところで、歴史について書いていきたい。

ベネディクティンの歴史は古く、1510年まで遡る。
当時フランス、ノルマンディ地方のフェカンにあるベネディクト修道院にドン・ベルナルド・バンセリという人物がいた。
このバンセリが不老長寿の薬(エリクサー)として作り上げたのがベネディクティンなのである。
バンセリが作り上げたエリクサーは好評で、当時の国王、フランソワ1世がフェカンを訪れた際、これを味わい「こんなに美味しいものを今まで飲んだことがない!」と叫んだというエピソードが残っているほどであった。

時代は進み1789年、フランス革命が起こる。
この革命の影響でキリスト教会は弾圧を受けることになる。
これはもちろんベネディクト修道会も例外ではなく、修道院は閉鎖し、エリクサーのレシピも失われて一度途絶えてしまった。

しかし、1863年アレクサンドル・ル・グランという人物によってベネディクティンの歴史は再びル・グラン動き出す。

ル・グランはフェカンのワイン商であり美術コレクターであった。
そしてなんとル・グランの家には祖父の時代に弾圧を受けて逃げることとなったベネディクト会の書物がエリクサーのレシピ含め多く保管されていた。

ワイン商であり美術コレクターのル・グランがこのエリクサーに興味を惹かれないわけながない。

ル・グランはこの記録を発見し、試行錯誤の末1863年にエリクサーの再現に成功したのだ。
そして修道院にちなみベネディクティンという名前で売り出すため、ローマのベネディクト会から名前とフェカン修道院の紋章を使用する権利を取得し、販売を開始した。

ベネディクティンの美味しさはもちろんのこと、当時のフランスの流行りやル・グランの商才も相まって10年後には15万本ボトルも売り上げるほどの成功を収めた。

ル・グランはミュシャやセムなど著名なアーティストと連携しポスターやノベルティグッズなど配布した。これは当時としては先進的な手法であった。

↑アルフォンス・ミュシャによるベネディクティンのポスター

さらに1876年、ルネサンス様式の蒸留所と美術館を兼ねるベネディクティン宮殿を建設。
ベネディクティンの文化発信の拠点となった。

そして1920〜30年代、カクテルブームがやってくる。
ベネディクティンと言えばB&B、そのB&Bもこの時に生まれたカクテルである。
そのカクテルは流行し、1937年製品化されるにまでに至る。

というのがベネディクティンのざっくりした歴史である。

そして、大まかな製造過程について

①27種類のハーブ、スパイスを4つのグループに分けアルコールに浸漬、ル・グラン時代からの銅製蒸留器を使い、蒸留。エスプリと呼ばれる4つのアルコールを生成する

②エスプリをブレンドし、オーク樽で8ヶ月熟成。調和させるとともにエッセンスを引き出す

③蜂蜜とサフランの煎出液を加え、55度に温める

④再び貯蔵庫で4ヶ月熟成

というのが大まかな製造過程である。


現在、パレ・ベネディクティンでベネディクティンにまつわるあれこれを堪能することができるようだ。フランスに訪れる際は是非訪れてみたい場所である。

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