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日本最大級の競技クイズ大会!! 「abc the21st/EQIDEN2023」イベントレポート

日本最大級の競技クイズ大会「abc/EQIDEN」。クイズが初めての人でも正解できるような「基本問題」による実力No.1決定戦/学生サークル日本一決定戦を銘打ち、2023年3月にスタートから20周年を迎えました。
3月19日、第21回大会「abc the21st/EQIDEN2023」が埼玉県の「大宮ソニックシティ」にて開催されました。2022年の第20回記念大会を終え、さらなる盛り上がりが期待された今大会。その様子をレポートします。

※以下、学校名は初出時に正式名称で表記し、以降は場合によって略称を用います。

「大宮ソニックシティ」は過去最大規模の会場。準備にあたったスタッフ一同も圧倒されたほどです。

集まった学生クイズプレーヤーの数は総勢834名。新型コロナウイルス感染症の流行下では最多であり、過去最高の参加規模(17thの848名)に迫る数となりました。

午前10時35分、個人戦であるabcの1st Round「200問ペーパークイズ」が始まりました。前回大会からこのペーパークイズはEQIDENの「第一予選」でもあり、第二予選(部屋別早押しクイズ)進出の48枠が懸かったラウンドとなっています。対戦の組み合わせもここで決まるため、シード権を有する12チームを含め、EQIDENへ参加する全51チームにとって重要な戦いとなりました。制限時間は「100問4択クイズ」「100問筆記クイズ」それぞれで20分ずつ。途中の用紙回収・配布の時間もあわせ、計50分間の長期戦を834名の参加者が戦い抜きました。

真剣に取り組む参加者たち。前回大会で販売した20周年記念公式バインダーを持っている方もちらほら。

ペーパー終了後、まず開会したのはEQIDEN2023。はじめに、優勝トロフィーの返還と第二予選の組分け発表が行われました。トロフィーの返還では前回EQIDEN優勝の京大の代表者が登壇し、インタビューに「この1年で強くなれたと思う。京大には部室がないので自分の部屋に(トロフィーを)飾っていた。読み込みで辛い時もトロフィーが励ましてくれた。」と語りました。
また、気になる第二予選進出チームの発表も大きく盛り上がりました。41位以降には1チームずつ発表される演出となり、会場の緊張感も高まっていきます。最後、薄氷で48位通過を決めたのは松江工業高専。発表時には雄叫びのような歓声が上がりました。

組分けから会場は大盛り上がり。「嬉し過ぎて声飛んだ!」という喜びの声も。

3部屋に分かれて行われる第二予選は、4チームから1チームが勝ち抜ける早押しクイズ。各試合の結果は、確定次第ホールにも速報がアナウンスされます。

各部屋では、開幕から進行スタッフも息が詰まりそうな試合が続きました。前回優勝の京大は第1試合に参加。しかし、全チームが鋭い早押しを繰り出し、京大も苦しむ展開になります。第4セット終了時には開成中高が京都大学を1点上回って単独トップに立ち、さらに松江高専も猛追をかけます。最終的には、京大が第5セットで開成中高に追いついたのち、サドンデスで本選進出を決めました。
また第4試合では、渋谷教育学園渋谷・幕張中高合同チームが終始ペースを握り、ノーシードから大学チームをも破りました。会場も、この結果のアナウンスには大きくどよめきます。そのほか、シード校である灘中高の2年連続本選進出、ノーシードからの立命館大、東北大、北海道大の勝ち抜けなど、中高チームやノーシード校の躍進が目立つ結果となりました。
本戦出場の12チームも出揃い、いよいよホールでのクイズが開幕します。

第1試合の勝者である京大から1チームずつ壇上へ。往路の12チームが一堂に会しました。

EQIDEN2023の本戦1問目として出題されたのは、「日本ではバッターが空振りをすることが通例となっている、野球の試合前に行うセレモニーは何でしょう?」という問題でした。これを「空(から)/」で押して「始球式」と正解したのは神戸大。この鋭い"ヒット"を皮切りに、序盤から全チームが前のめりに攻め、押しが加速する展開になります。

予選を勝ち抜いた強豪も思うように正解できないなか、北大、東北大が1×をつけながらもいち早く4区走者へタスキをつなぎます。これに少し遅れて大阪大も4区が登場するや、東大も2区・3区の連答で4区へ。そろそろ1チーム目の往路勝ち抜けが見えてくるところ、40問目が読まれ、勝負も中盤にさしかかります。ここで出題された「カルマル同盟」を大阪大4区が正解し、5区へタスキを繋ぎました。今試合初の5区走者登場です。
すると、勝負は一瞬でした。阪大5区が登場から「時計」「仙台育英高校」と2連続正解を決め、見事往路を1抜け。ここまで誤答なしで着実に正解を積み上げてきた優位も活かし、ここぞというタイミングで勝負をものにしました。
この時点で、4問誤答により解答権を剥奪されていた灘中高と、1区で2×となっていた早稲田大学の敗退が決定しました。

目の醒めるような勝ち抜け。敗退の2チームと入れ替わりで阪大の復路選手が入場します。

EQIDEN本戦では、一足早く入場した復路の選手も、往路を走る他のチームと一緒に早押しボタンにつくことができます。しかし、誤答ペナルティは復路から「残りチーム数に応じた休み」に変更となり、注意が必要です。この時点だと、阪大は1問の誤答で「10問休み」を背負ってしまうため、非常に慎重さが求められます。

大阪大に続こうと各チームが押しを早め、5問の間に千葉大学が4区、北大が5区へとタスキを繋ぎます。一方、東北大は4区の時点で3回目の誤答をしてしまい、失格リーチとやや苦しくなります。その後、神戸大が4区到達、東大が4区の正解を出すなど追い上げますが、北大が「カント」「有馬温泉」と落ち着いて連答を決め、2チーム目の往路勝ち抜けを決めました。
ここで敗退となったのは、予選から健闘を見せた渋渋・渋幕中高と、「放送大学」「反故にする」の素晴らしい正解を出すも、サドンデスで立命館大学に敗れた同志社大学。この時点で3区だった立命館は、「デュプランティス」の正解でギリギリ踏みとどまります。

往路の争いは残り6チームから2枠となり、さらに激化。56問目、58問目、59問目と、立て続けに千葉大、神戸大、東京大が5区へ到達します。しかし、5区でのリーチを最初にかけたのはこの3校ではなく、東北大でした。3チームを追う形で登場した5区の選手が、すぐさま「島津!」の正解で復路へあと一歩のところまで近づきます。しかし一筋縄ではいかず、東大が「袋田の滝!」、神戸大が「OTC医薬品……!」と、の気持ちの入った正解で東北大へ追いつきます。

3チームがリーチをかけるなか、京大が4区、立命も5区到達と追い上げを見せます。

迎えた74問目、「歌舞伎の演目の中でも、盗賊/」と、東北大がこれ以上ないポイントでボタンを点灯させました。「白浪物!」と正解を決め、見事3チーム目の往路勝ち抜けとなります。誤答失格リーチとなっていたなか、プレッシャーを乗り越え、復路へとタスキを繋ぎました。
ここで、前回優勝の京大、5区まで繋いでいた千葉大が敗退となりました。

往路に残っているのは、東京大(残り1○)、神戸大(残り1○)、立命館大(残り2○)の3チーム。復路進出が残り1枠となり、どのチームも勝負をかけて動き出します。しかし、勝負をかけて誤答×の札を切り合う展開により、3チームとも失格リーチの淵に立つこととなりました。そして次の問題、一歩後を追っていた立命館大が「ダチョウ」を正解。これにより、なんと3チームが「5区勝ち抜けリーチかつ失格リーチ」で並びます。

三つ巴の運命戦となった次の問題、まず勝負に出たのは「13世紀ごろから国王/」で押した神戸大でした。しかし、捻りだした「王権神授説」は正解とはならず、惜しくも失格となってしまいます(正解は「カペー朝」)。迎えた東京大と立命館大の一騎打ち、「英語では『スケアク/」とボタンを光らせたのは……立命館大。「かかし!」と力強く正解を叩き出し、悲願の4抜けを決めました。
神戸大、東大はここで敗退となりましたが、極限のプレッシャーのなか戦った5区の選手を、チームメイトが温かく迎えました。

壇上に残ったのは、大阪大、北海道大、東北大、立命館大の4チーム。大阪大以外はノーシードからの予選勝ち上がりであり、各大学・中高が力を伸ばしていることがうかがえる結果と言えるかもしれません。
ルール上、復路選手は往路中にも押すことが可能ですが、激しい往路の競り合いが続いた今試合は、奇しくも復路選手の正解が出ていない展開となりました。そのため、全チームが横一線に並んだ状態からの再スタートとなります。ここから優勝までには、1人当たり2問、5人で10問の正解が必要です。
はじめに抜け出したのは立命館と北大、ともに8区へタスキを繋ぎます。しかし、誤答ペナルティの「4問の休み」で両チーム少し足が止まってしまい、その間に東北大が8区へ並びます。阪大も7区へ。
するとすかさず東北大が9区へ進みますが、北海道大、立命館大もすぐさま追いつき、独走を許しません。

各校のチームワークが光ります。

ここで、東北大の9区走者が「オナー」「ピーチ・メルバ!」と2連答を決め、10区へタスキを繋ぎます。ゴールまであと2問、最終走者をチームメイトの力強い声援が後押しします。北大が2問休みを残して迎えた次の問題、立命館が東北大を止めようとチャレンジしますが、惜しくも誤答に。そんななか、東北大が「環濠集落」を正解して王手をかけます。

続く118問目、「小さな居酒屋が軒を連ねる『新宿ゴールデン街』でも知られる、新宿駅近くにある日本/」でボタンが押されました。点灯させたのは東北大。「歌舞伎町!」鋭い答えが会場に響き渡り、EQIDEN2023覇者が決まりました。

初優勝を手にした東北大。東北勢の優勝は初であり、EQIDENの王座が白河の関を越えた瞬間でした。

優勝インタビューでは「本当にチーム全員が素晴らしく強くて、いいチームでこの大会に出られてよかった。」と答えた東北大。EQIDEN大会長の塚田から優勝トロフィーが授与されると、ステージ上で記念撮影をする一幕も見られるなど、仲の良さを随所からうかがい知ることができました。

塚田大会長の挨拶でEQIDENが幕を閉じてから、ほんのまもない15時20分、続いてabc the21stが開幕しました。
今大会の参加人数は、先述の通り834名。午前中に行われた1st Roundは、通過倍率およそ17倍と非常に狭き門となりました。このペーパークイズで第1位を獲得したのは、京都大学4年・長野春太さん。19th、20thと連続でペーパー順位を伸ばし、ラストイヤーで初の1位獲得を果たしました。筆記クイズで94点・4択クイズも97点で第2位と非常に好成績を記録し、EQIDENのトロフィー返還に次ぐ2度目の登壇となった長野さん。司会からのインタビューに、「長くクイズができるように、精一杯楽しんでいけたら。」と意気込みを語ります。

ペーパークイズで1位を獲得した選手には、「abcで一番目に出題される問題の番号を指定する」という仕事が与えられます。長野さんは今回、1年上の先輩・吉原主税さん(17th優勝、18th~20thペーパー1位)がかつて指定し続けた番号にならって「1番」を選びました。
そして、残る11名の選手を迎え、2nd Round「連答つき5○2×クイズ」がスタートします。

インタビュー前のマイクトラブル対応中、スクリーンに近づいてポーズを決めた長野さん。シャッターチャンスを作って場を和ませてくれました。
3大会ぶりに手動ターンオーバーの演出も復活。プレートに書かれた選手の名前に注目が集まります。

大会1問目の問題「新しく作られた劇場で/」→「杮(こけら)落とし」を正解したのは、29位席の蒲生さん。続く「マザーボード」も連答してポイントを3へ伸ばし、アドバンテージ無しの席から一気に連答リーチをかけます。ところが次の問題「箱根駅伝」は、最下位席の齋藤さんがもぎ取ります。緑プレート(25~48位)の選手が早くも躍動し、高いレベルの押し合いを予感させる幕開けとなりました。
この第1組では、うまく連答を決めた押切さん・蒲生さん・福井さんが勝ち抜けていきましたが、その後の組みでは連答がなかなか発生しない展開が続きました。これまでに決勝・準決勝進出や赤プレート獲得(ペーパークイズ4位以上)経験者でも一筋縄ではいかず、苦戦を強いられます。
一方で初めて2Rへ進出した選手も多く、特に第4組では8名が初通過と、新鮮な顔ぶれが並びました。この第4組で最上位だった前田さんは、大会草創期を除いて初となる「赤プレートでの初通過」。高校時代から挑み続けたabcのステージ上に、ラストイヤーで登壇を果たした形となりました。前田さんや、初通過での青プレート獲得(5~12位)、いわゆる「びっくりの青」で通過した榎本さん・今井さん・渡邉さんは、いずれも3rd Roundへ駒を進めました。
また、第3組と第4組では、自分以外の全員が失格する”トビ残り”の形で、最後の1人が決まる結果となりました。abcでの2Rトビ残り決着は実に13年ぶり。珍しいケースではあるのですが、近年でも特段の激しい勝負であったことがうかがえます。この形での3R進出を果たしたのは、高校1年生で1Rを通過して以来7年ぶりにステージへ返ってきたラストイヤー・宮崎さんと、高校2年生以降5年連続で1Rを通過していた東さん。ともに長い参加経験をもつ2人が、この戦いを制しました。

2R第1組からレベルの高い試合が続きます。

続く3rd Round「Number 10」は、異なるルールで実施される4コースのうち、1つを選んで戦う方式です。実施順が抽選で決定されたのち、選手の参加希望をもとに対戦の組み合わせが決められます。

1組目のSwedish10では、江頭さん・渡邉さん・松浦さんの三者による叩き合いが続き、得意の文系問題を中心に正解を積んだ渡邉さんと、失格リーチながら鋭い押しを続けた江頭さんがともに9○で並ぶ展開となりました。最後は、「二十世紀梨」を力強く答えた渡邉さんと、「ダイオウグソクムシ」を答え、正解音とともに壇上で喜びを爆発させた江頭さんが準決勝への切符を掴み取りました。

2組目に行われたのは10 up-down。1つのミスが命取りとなるこのコースでは、藤田さん、長野さん、福井さん、植木さんがそれぞれの強みを生かしたきれいなクイズを展開し、4人が8○で並びました。一足先に長野さん・福井さんが順にリーチをかけると、植木さんが待ったをかけます。2人に続けてリーチをかけると、そのまま連答で勝ち抜けを決めました。再開直後には藤田さんも正解を出して9○に。残り1○を争う最後の巴戦は、福井さん、藤田さんがボタンをつけるも、ともに誤答となりました。その後、「菊と盃」と解答した長野さんが、準決勝への切符を掴みとった……かに思えました。
試合終了後、藤田さんが最後に解答した「ラジオサージャリー」が誤答と判定されたことに疑義が持ち上がり、再調査が行われました。検討の結果、試合結果を即断することはできないという判断となり、試合決着を巡る再協議が大会長のもと行われました。勝負の行方は、3R全コースの終了後まで持ち越されます。

初通過の勢いも味方につけた渡邉さん。3Rも制し準決勝へ。

3Rの3組目・10by10は、参加希望者が2名にとどまる不人気コースに。下位3名の強制招集でクイズを行うことになりました。この試合は、先ほどのup-downとは対照的に、誤答をしても手を緩めない激しい早押しの応酬が時間いっぱい繰り広げられました。最後は、立ち上がって気合いの入った解答をする押切さんと、どこか余裕を感じさせる振る舞いの東さんという、対照的な解答スタイルの2人が試合を逃げ切りました。

3R最後の組は、前回導入されたばかりの新コース・Freeze 10。ここで力を見せたのは木村さんと安達さん。木村さんは目が覚めるような鋭い押しを何度も決め、わずか24問で10回の正解を積み上げる勝利。前回大会に続き、Freeze 10で圧倒的な強さを示しました。木村さんに次ぐ形でポイントをリードしていた安達さんは、榎本さん・蒲生さん・今井さんの追撃を振り切り、10ポイントに到達。勝利後、安堵したように机にゆっくりつっぷし、その後ゆっくりと右手を掲げる安達さんの姿が印象的でした。

まだ歴史の浅いFreeze 10では、中学生のときにクイズを始めていた2人が勝ち抜け。

3Rの最後に、持ち越しとなっていた藤田さんと長野さんのup-downの勝敗についてアナウンスが行われました。大会長が提案したのは、両者による1○1×(1問正解で勝利、1問誤答で失格)サドンデス。2人もこれを承諾し、その他全員が見守るなかで決着をつけることとなりました。
BGMのない静寂のなかボタンを点灯させ、この対戦に勝利したのは、長野さん。改めてSFへの道を切り拓きました。

史上最も長かった3Rが決着。最終的にお二人に納得していただいたことを、何よりも感謝申し上げます。

午後18時30分、準決勝を前にして敗者復活戦が開始しました。勝ち抜けられなかった全ての参加者が挑む最後のチャンス。800名以上の参加者のうち、2段階の選抜を経て準決勝に進めるのは1名のみです。

1st stepの読み上げ式ボードクイズは、1問誤答した時点で即失格となる非常にシビアな形式。しかし、今回は17問出題後も既定の「12名以下」にならず、勝負は18問目のこの問題までもつれ込みました。
「怒ったり決心したときなどに目を大きく見開くことを、『何を決する』というでしょう?」
ここで一気に失格者が現れ、勝負が決しました。

難易度の高い言葉問題「眦(まなじり)を決する」を正解し、2nd stepに駒を進めたのはたったの3名。
準決勝進出を懸けた最後のチャンスへ挑むのは、3R最後のサドンデスクイズで涙を飲んだ藤田さん、7年ぶりに舞台上に帰ってきた宮崎さん、そして1Rペーパークイズで「49位」と通過次点となっていた高山さん。それぞれにドラマを抱えたラストイヤーの3名が、意地とプライドを賭けてぶつかり合います。

2nd stepは「5○1×クイズ」です。開幕の問題「AED」を藤田さんが正解するも、その後の展開では宮崎さんがリード。3連答でいち早く4ポイントを積み上げ、正確なクイズで場を圧倒しました。しかし直後、2ポイントで藤田さんと並んでいた高山さんも連答で追い上げ、2人がリーチに。迎えた14問目、宮崎が勝負を賭けた押しで攻めますが誤答となります。勝負は直後の15問目、「ピノキオピー」を高山さんが正解して5○に到達。今大会最も48傑に近かった戦士が、今度こそ準決勝への切符を掴み取りました。

「49位」からベスト9へ。執念が実を結んだ瞬間でした。

ここまで勝ち残った9人を待ち受ける準決勝「Nine Hundred」は、合計900秒間のタイムレース。木村さん・東さんの2人は自身2回目のタイムレースですが、その他の7人は準決勝初進出。また決勝経験者は1人もおらず、誰が勝ち進んでも初の決勝進出となります。
敗者復活戦を勝ち抜けた高山さんが登壇した状態で開幕し、司会によるコールとスモークの演出に合わせて、残る8人の戦士たちが入場します。

名前や趣味にちなんだキャッチフレーズ(二つ名)とともに、8人の選手が呼び込まれます。

第1セットで1人目の勝ち抜けとなったのは、10ポイントを積み上げた押切さん。現在のルールでの「第1セット14問正解」は、12thの佐谷さん・18thの川田さんと並ぶ過去最高記録であり、会場からも驚きの声が上がりました。そして誤答に苦しんだ渡邉さん、惜しくも正解を出すことができなかった高山さんの2人が敗退。それぞれ同期にエールを送り壇上を去りました。

6人で行う第2セットで勝ち抜けたのは7ポイント獲得の植木さんでした。正解で+1ポイント・誤答で-2ポイントという誤答に厳しいルールのなか、目の覚めるような早押しを見せつつ、誤答を最小限に抑える立ち回りが功を奏したといえます。まず敗退が決まったのは木村さん。中盤から果敢に攻め、終了間際も10問中7問ボタンを点ける猛攻を見せましたが、誤答がかさみ第1セットからポイントを減らす結果となりました。続いて失格となったのは、1○1×サドンデスに惜しくも敗れた安達さんでした。勝負をかけてボタンを点けましたが、制限時間いっぱいを使っての発声は誤答に。第3セットには東さん、長野さん、そしてサドンデスを潜り抜けた江頭さんが進みます。

第3セット、はじめにボタンを多く点けていくのは江頭さん。長野さんも、自分のテリトリーの問題を確実に拾っていきます。しかし、残り時間が3分を切ったあたりで、東さんが「トーテムポール」から『展覧会の絵』まで、他の参加者の誤答を挟んで11連答と、圧巻のクイズを見せました。結果、5分間で17○2×、2位に14ポイント差をつけ、東さんが決勝への最後の1枚の切符を掴みました。
ここで敗退となった長野さんは「今後の京都大学クイズ研究会の栄光と発展を願う。」、江頭さんは「(熊本大の)後輩には自分の記録を越えてほしい。」と、それぞれ後輩へエールを送り、ラストイヤーのステージへ別れを告げました。

abcでも屈指の密度あるクイズが続くタイムレース第3セット。この5分間を戦い抜いた3人は、全員で問題を振り返りながら集計結果を待ちました。

長い1日の最後、大会を締めくくる決勝戦「トリプルセブン」が、押切さん、植木さん、東さんの3人によって行われました。
京大2年の押切さんは、サークルの先輩である中本さん・木村さんをセコンドに連れて登場。「abc the17thを見て憧れた決勝の舞台に立てて感慨深い。僕の姿を見た誰かに夢を与えられるようなクイズをしたい。」と思いを語りました。
早稲田大学4年の植木さんは、サークルの同期である齋藤さんと後地さんをセコンドに連れて登場。「今日、優勝しに来ているので、僕が優勝します。」と意気込みを述べました。
最後の一人は、東京都立大学3年の東問さん。双子の弟である東言さんをセコンドに連れて登場しました。「何とかなりーのなりーのでここまできた。」とリラックスした受け答えをしていた東さんでしたが、最後は「優勝します!」と強い思いを見せました。

第1セットは7○1×。押切さんが順調な滑り出しで3○まで積むも、「取次」が出てこず解答権剥奪に。その後、東さんが3連答で5○まで積んだところで植木さんが誤答し、第1セットは東さんが獲得しました。続く第2セット(7○2×)も第1セットの勢いそのままに、東さんが快調にボタンを点けていき。2セット目を連取しました。これにより、東さんが優勝へ王手をかけた形になります。第2セット後のインターバルでは、東さん、植木さんは前セットと同様にセコンドと話していたのに対し、押切さんはストレッチを中心に気合いを入れ直しているようでした。
これが功を奏したのか、第3セットの7○3×では、「立って大きな声で解答する」というこれまでのスタイルに切り替えた押切さんが5連答を決め、わずか12問でセットを獲得しました。

続く第4セットは7○4×。誤答が比較的緩いルールではありますが、押切さんは1○の段階で3つ目の×を使い、解答権剥奪にリーチがかかってしまいます。東さんと植木さんによるデッドヒートが繰り広げられ、先にリーチをかけたのは植木さん。その後、東さんも6○で並び、東さん6○2×、植木さん6○3×とともにリーチとなります。
次の問題、「きみとすき/」で植木さんがボタンを点灯させます。しかし、彼が「『ハナミズキ』だ……」と解答にたどりついたのは、無情にも誤答ブザーの後でした。

植木さんが解答権剥奪となった1問後、「ボウリングでボールを投げるさ/」で押したのは東さん。少しフッと笑ったあと、「スパット」と解答し3セット目を獲得しました。abc、第21代王者誕生の瞬間です。

優勝後のインタビューでは、飄々としながらも「真面目な話をすると、」と、対戦相手に合わせて立てていた戦略を実行できて良かったと語りました。セコンドの言さんとのやり取りも含め、確かな強さを発揮しつつも自然体を貫いていた姿が印象的な1日でした。
準優勝の押切さんは、「自分が思う強いプレーヤー、最大限クイズを楽しめるプレーヤーになれていないので、そういう努力をしていきたい。」と嚙みしめるように語りました。3位となった植木さんは調子の上がらなかった決勝戦を悔やみましたが、セコンドの齋藤さんから「(最後に)こうやって植木に上げてもらって、良い景色見れて良かったな。ありがとう。」と労いの言葉がかけられました。

abc the21st決着の瞬間。三者三様のスタイル、思い、クイズが詰まった決勝戦でした。

決勝戦終了後には、大会スタッフである伊沢(※スポンサーである株式会社QuizKnock様CEO)から3人へのメダル授与、問題チーフ・水上から優勝者への表彰状授与、そして大会長・服部からのトロフィー授与が行われました。
そして選手の降壇後、服部大会長から次回大会のアナウンスが行われました。YouTubeでの無料配信も含め、かつてないほど多くの方が「見て」「盛り上げて」くださった今大会。これに続く「新しいabc/EQIDEN」を作るべく、次のスタッフ体制も始動します。

次回は2024年3月16日(土)、八千代市市民会館でお会いしましょう。

結果

abc the21st
優勝:東問(東京都立大学)
準優勝:押切真大(京都大学)
第3位:植木陽平(早稲田大学)

第4位:長野春太(京都大学)
第5位:江頭春樹(熊本大学)
第6位:安達虎太郎(日本大学)
第7位:木村秀太(京都大学)
第8位:高山諒大(北海道大学)
第9位:渡邉慶伍(東京大学)

1st Round ペーパークイズ1位:長野春太(京都大学)

EQIDEN2023
優勝:東北大学
準優勝:北海道大学
第3位:立命館大学
第4位:大阪大学

a, b, c, dive!


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