011【ステークホルダー資本主義 世界経済フォーラムが説く、80億人の希望の未来】を読んで
書籍情報
書籍名:ステークホルダー資本主義
著:クラウス・シュワブ、ピーター・バナム
訳:藤田正美、チャールズ清水、安納令奈
発行日:2022年8月
内容判定
●読みにくさレベル……【2】
●参考文献……注付き、巻末に参考文献の一覧有り
●内容の偏り……より良い資本主義を目指す立場
●内容ページ数……約350P
概要
今日のグローバル化した世界が抱える様々な要素を検討し、格差の拡大、成長の減速、生産性の向上の減速、負債の増加、気候変動の加速、社会問題の深刻化に対して筆者が見解を述べるという本になっている。サステナブルで公平でレジリエンスが高い社会を目指すためには短期的な利益を追求するような経済システムではいけないということを表明し、真の意味で人々が協力し合う世界を目指すというのが大まかな概要である。
上述の新しい世界を作るために必要だと著者が考える概念がタイトルとなった「ステークホルダー資本主義」である。
多くの経済学の本と同じように戦後からの歴史から話が始まる。著者であるクラウス・シュワブはドイツ出身であり、そのことから視点としてはドイツ、欧州的で西側諸国での経済の発展という見方が強い。戦後の奇跡的な経済成長、1970年代の混迷と1980年代からの新自由主義的なアプローチ、そして2008年の世界金融危機への大まかな流れの説明である。そして第2章では、サイモン・クズネッツという視点から経済を振り返る。これはGDPを通して見る経済の在り方であり、この時代と強く関連しているグローバル化についても触れている。
後半はステークホルダー資本主義が具体的にどういうものなのかを説明している。ここまで論じられたテクノロジーやコロナ禍での事例をふまえながらステークホルダー資本主義を実現するためには何が必要なのかを再考している。
問題点と利点を解説しながら、なんの考えもなくグローバル化を信じ込むべきではないとしつつも、大いに受け入れるべきであると述べている。また経済学や今後の世界の在り方を語るうえで欠かせないテクノロジーと気候変動に関しても解説している。
どういう人が読むべきか
資本主義の次のステップを知りたい人は読むだけの価値があるように思える。意識が高い人ならば次のトレンドとして押さえておくべきだろう。
専門用語や難しい言い回しが少ないのでかなり読みやすく、コロナ禍という直近の情勢に触れながら資本主義や経済の動きを追うという点でも初学者にもオススメできる。
キーワード
・世界経済フォーラム
・グローバリゼーション
・サイモン・クズネッツ
・クズネッツ曲線
・絶望死
・エレファントカーブ
・都市化
・人新世
・カーボンプライシング
・株主資本主義
・国家資本主義
・世界競争力指数
・インクルーシブ開発指数
・ステークホルダー資本主義指標
・エンロン
・ギグエコノミー
以下、感想
この本を手に取る前にダボスマンを読んでいたせいで少し離れた視点から内容を精査することになったという経緯は最初に一言添えておく。
ステークホルダー資本主義が素晴らしいものかどうかはひとまずおいといて、この本の率直な感想は、
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