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017【政府は巨大化する 小さな政府の終焉】を読んで


書籍情報

書籍名:政府は巨大化する
著:マーク・ロビンソン
訳: 月谷真紀
発行日:2022年1月

内容判定

●読みにくさレベル……【3】解説書レベル
●参考文献……注有り、巻末に70Pの参考文献一覧有り
●内容の偏り……特になし
●内容ページ数……約340P

概要

 多くの先進国において喫緊の課題となっている気候変動や年金、インフラ、介護、医療などの政府の支出に関して、今後30年間(つまりは2050年頃まで)というスパンで考えられる未来を展望している…そういった内容の本である。その中でも主に扱っているのは医療や介護に関する分野で医療技術の発達やそれに伴う高齢化社会によって政府は巨大化せざるをえない…そういう視点からインフラや環境問題、非正規雇用への対応やベーシックインカムのような給付金の話、もしくは政府支出の無駄の削減、どういった増税の考え方があるのか、という話が展開されていく。

どういう人が読むべきか

 もしあなたが20代~40代で、こういった本に興味を持ち、手に取ろうと思っているならば…非常にオススメできる本だ。まずこの本は偏っている視点から書かれているものではない。「政府は巨大化する」というタイトルではあるものの大きな政府を諸手を挙げて賛成しているという内容ではない。今後政府が果たす役割が増えていくことは世界の潮流を汲んでも仕方のないことで、それはどういったことが原因になっていて、それを対処するためにはどのような方法が考えられるか、を説明している。説明も多少難しい言い回しがあるものの、文中に補足があり、視覚的にもグラフがあることでわかりやすい。日本だけではなく他の先進国が例として多く取り上げられている点も面白い。
 現代における政府の役割がどのようなものなのか、幅広い視点から考える本としてうってつけである。

キーワード

・マルチモビディティ
・オーファンドラッグ
・ウィリアム・ボーモル
・ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ
・グリーンニューディール
・炭素税
・炭素配当に関する経済学者の声明
・脱成長
・非正規労働者
・インソーシング
・ベーシックインカム
・MMT(現代貨幣理論)

以下、感想

 題名のシンプルではあるが仰々しい印象からは想像もつかないほど面白くて革新的な内容を提示していると思う。なんとなくニュースで知っているような気になる政府の役割と私たちの関係性は実際のところズレがあると感じた。またこういった政府の動きに関しては自国のことには多少の知識を有していたとしても他国の現状がどうなっているか把握している情報は断片的であったり、あやふやであることを考えると日本だけにフォーカスしていない点は非常に有用である。
 タイトルの「政府は巨大化する」これを見た時に何を思い浮かべるだろうか?一般的な日本で生活している人ならば日本が赤字を抱えている…だとか、社会保障が凄いことになっている…だとか、そういったことを考えるかもしれない。もしくは経済学や政治学を習った人ならば「大きな政府」のことでしょ?とパッ思いつくかもしれない。もちろん

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