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013【みんなにお金を配ったら――ベーシックインカムは世界でどう議論されているか?】を読んで


書籍情報

書籍名:みんなにお金を配ったら――ベーシックインカムは世界でどう議論されているか?
著:アニー・ローリー
訳:上原裕美子
発行日:2019年10月

内容判定

●読みにくさレベル……【2】
●参考文献……注付き、巻末に25P程度の参考文献リストあり
●内容の偏り……特になし
●内容ページ数……約200P

概要

 これからの社会保障、社会福祉の制度設計としてのベーシックインカムの導入、その役割を考える。アフリカの発展途上国での例、インドでの取り組み、アメリカの機能していない社会福祉(社会保障)、女性の労働に関する課題、ベーシックインカムを通して考える共生……現状の問題点を指摘しながら現在行われているベーシックインカムの事例を解説している。

どういう人が読むべきか

 ベーシックインカムに興味がある人向け。内容も難しくはなく、事例が多いので読みやすい。内容はアメリカの実情と発展途上国での実例で、日本においてはあまりピンとこないベーシックインカムが世界ではどういった捉え方をされているのか知ることができる。2019年に発行された本だが、ベーシックインカムがかなり大規模な制度の変更を伴う点を考えれば、今後さらなる研究や実験が行われていく可能性が高く、この時点での考え方や事例を知ることができるという点でも有用。

キーワード

・ウーバーライゼ―ション
・ギブダイレクトリー
・早すぎる脱工業化
・BIEN

以下、感想

 中間層の縮小、政府に対する信頼の喪失、技術進歩によってベーシックインカムという考え方にスポットライトが当たり始めた。中でも技術進歩によって失業が増えたり、仕事そのものがなくなってしまうという論点は現代社会の問題を語る上で頻出する内容である。そしてもう1つの論点は格差である。著者はここに賃金低迷という言葉も付け加えている。つまりは、仕事がなくなってしまうのであればベーシックインカムのような制度は必要だろう。格差があまりにも酷いならば再分配としてベーシックインカムのような制度が必要だろう。そういう理論である。たしかに、これまでとは全く違うやり方であるベーシックインカムには問題点もあるが期待と魅力があるのは理解ができる。しかしこれで全てが上手くいくのだろうか?もちろん全てが上手くいくような制度というのはありえない。良い面もあれば悪い面もあるのではないか?少なくとも2023年(ということはこの本から約5年)の時点でベーシックインカムが素晴らしい制度として受け入れられている様子はない。これは私見になるが、私が読んでいる本の中では

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