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みちのく潮風トレイル冒険録8:牡鹿半島縦走(桃浦→鮎川)

 今回は、7月に歩き損ねた鮎川までの牡鹿半島区間と、網地島・田代島を組み合わせて2日間かけて歩く旅程を立てた。今日の宿をおしか家族村オートキャンプ場に定め、テントを背負って歩く。このキャンプ場は人気のキャンプ場のようで土曜日の夜の予約は全て埋まっていたため、月曜日に夏休みを取り日・月の2日間で冒険に挑む日程とした。

Day12:荻浜小学校前→林道内山線出口

 2021年10月3日(日)
 石巻駅前のホテルで前泊し、JR石巻線で渡波駅へ、渡波駅からは宮城交通のバスに乗り、7月に歩いた際の中断地点である桃浦の荻浜小学校前バス停に降り立った。
 牡鹿半島は三陸海岸の南端にあたり、リアス海岸特有の複雑に入り組んだ海岸線が特徴だ。入り組んだ湾のそれぞれには"○○浜"、"○○浦"といった地名のついた小さな漁村が無数に点在している。無数にある漁村のそれぞれにはそれぞれの震災があり、それぞれの復興があるということをみちのく潮風トレイルを歩く旅人は胸に留めなければならないだろう。
 リアス海岸は浜のすぐそばに山が迫っている地形なので、被災した漁村のすぐ後背の高台に復興住宅が整備されているところが多い。本日の起点である桃浦漁港でも、桃浦団地という小さな復興団地が整備されていた。被災した住民が住み慣れた場所のすぐそばに新しい住宅を建て、今まで通りの生業を続けながら暮らすことができるように工夫されている石巻市の復興の考え方が感じられる。

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 鮎川までの道筋は基本的に宮城県道2号を進んでいくが、この道は江戸時代に金華山への参拝者のために整備された"金華山道"のルートを踏襲している。トレイルのルートは2か所ほどこの県道を逸れて未舗装路の峠道を歩く部分があるが、この2か所はいずれも金華山道が車道化改修されずに残った道で、江戸時代の街道の雰囲気を色濃く残している。

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 桃浦から侍浜まで、早速未舗装路である大越峠を越える道筋に入る。杉木立の中を杉の葉を踏みしめながら歩いていくが、十分に整備は行き届いており決して歩きにくい道ではない。小さな沢を渉る部分には、丸太の橋も渡してある。

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 侍浜の西隣の月浦は、支倉常長の慶長遣欧使節団が出航した場所として知られている。支倉常長と言えば、彼を主人公とする遠藤周作の小説"侍"を読んだ記憶を思い起こす。ローマ教皇にも謁見した華やかな外交使節団のイメージとは裏腹に、禁教へと向かう時代の狭間で翻弄され信仰を問われる支倉常長を描いた、重苦しい雰囲気の小説だ。

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 侍浜から、荻浜、小積浜という漁村をたどって県道の舗装路を歩いていく。小積浜から、再び金華山道の未舗装路に入る。車道より傾斜はきついが、やはり未舗装路を歩く方が旅をしている感覚が得られて良い。途中、道がわかりにくい場所もあったが、スマホのGPSがあるので何とかなる。

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 峠道を降りると、小網倉浜という漁港に出る。港には船がたくさん停泊しているが、港の奥のかつて漁村があったと思われる平地は空き地が広がるばかりで何もなく、震災の爪痕がそのままになっている。小網倉浜にも桃浦と同様、後背の山地に復興住宅が整備されているようだ。

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 小網倉浜から、清水田浜、大原浜、給分浜と県道は進んでいく。トレイルの本線はここから県道を外れ小渕浜を通って迂回するが、この迂回路は省略してそのまま県道を進むとファミリーマートがあるので、ここで昼食休憩とする。さらに県道を進むと十八成浜(くぐなりはま)、そして旧牡鹿町の中心地である鮎川の市街地に入るが、トレイルは市街地に差し掛かったところで県道を逸れ山中に分け入り、林道内山線に入って登っていく。降りたり登ったりの繰り返しで、流石に脚が疲れてきた。
 林道内山線が御番所山方面へ向かう車道に合流するポイント"林道内山線出口"から、宿泊地であるおしか家族村オートキャンプ場に向かうためにトレイル本線を外れて車道を進むと、金華山黄金山神社の一の鳥居が建っている。江戸時代までは金華山は女人禁制の地だったので、金華山に詣でる女性はこの鳥居までしかお参りすることが許されなかったという。

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 地図上では、この鳥居から海岸線まで"金華山道"はまっすぐに降りていき、江戸時代に金華山への渡し場があった"山鳥の渡し"に至る道があるようなので、この道を歩こうと思っていたのだが、草刈がされておらず歩きにくそうだったので大人しく諦め、宮城県道220号、通称"コバルトライン"の車道をキャンプ場まで歩いた。

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 このキャンプ場は流石は人気のキャンプ場らしく設備の整ったオートキャンプ場で、売店には缶ビールまで売っている。テントを設営した後は持参したアルファ米のチキンライスを肴に缶ビールで乾杯、ソロキャンプの夜を過ごした。
 この日は、荻浜小学校バス停から林道内山線出口までの23.34kmを、5時間59分で歩いた。林道内山線出口からキャンプ場までも合わせれば約25km、今の私の体力では重い荷物を背負って一日に歩く距離としては25kmくらいが限度だろう。
 翌日は、網地島・田代島に挑む。

12.牡鹿半島

 南側のセクションは↓

 北側のセクションは↓


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