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みちのく潮風トレイル冒険録15:おかえりモネの舞台・気仙沼大島(鹿折唐桑駅→早馬神社)

 今回の冒険の舞台は、大島(通称:気仙沼大島)という離島だ。大島は東北地方最大の有人島で、かつては汽船で気仙沼と結ばれていたが、2019年に気仙沼大島大橋が架橋され陸路で行き来できるようになった。トレイルは、そんな大島を一周する。また、大島は2021年のNHKの朝の連続テレビ小説"おかえりモネ"で、主人公の出身地とされた亀島のモデルでもある。

Day22:鹿折唐桑駅→龍舞崎入口

2022年4月29日(金)
 気仙沼に仙台方面からJRでアクセスするには、2通りの方法がある。ひとつは小牛田駅で石巻線に乗り換え、柳津駅または前谷地駅から気仙沼線BRTに乗車する方法。気仙沼線BRTは概ね1時間に1本程度の本数が走っておりそれなりに利便性は良いが、バスなので時間がかかり、乗り心地も良くない。もうひとつの手段は一ノ関駅まで新幹線で行き大船渡線に乗り換えるという手段だ。こちらは新幹線を使えば時間はそれほどかからないものの、一ノ関から気仙沼の大船渡線は本数が非常に少なく旅程を立てにくいという欠点がある。
 今回は、時間の都合上新幹線で一ノ関駅を経由して大船渡線に乗り換えるルートで気仙沼へ向かうことにした。大船渡線の気動車は2両編成しかなく、連休初日ということもあり新幹線から乗り換えた乗客で立ち客も出るほど混雑している。気仙沼からは大船渡線BRTのバスに乗り換え、鹿折唐桑駅で下車して旅を再開する。
 対岸に見える気仙沼漁港を横目に、海岸線に沿って歩いていくと、気仙沼大島大橋にたどり着く。先述の通り2019年に開通した新しい橋で、架橋により利便性が向上した大島は観光地として賑わっているという。橋のたもとには橋を一望できる公園があり、大島のトレイルを案内する看板が建っている。

 大島に足を踏みいれてしばらく歩くと、浦の浜という港のそばに「気仙沼大島ウェルカムターミナル」が建っている。ここは気仙沼大島大橋の架橋以前に気仙沼と大島を結んでいた汽船の乗り場の跡地に整備された観光施設で、物産が販売されているほか、ここにも"おかえりモネ"に関する展示がふんだんにあり観光客で賑わっていた。

 大島の西岸に沿ってトレイルを南下していくと雨が降り始め、レインコートを着込んで歩いていく。本日の行程の区切りとすることを予定している大島の南端にある岬、龍舞崎を目指して歩いていくも、だんだん雨脚が強くなってきた。ずぶぬれになりながらも、龍舞崎の先端まで遊歩道を歩く。岬の先端には小さな白い灯台がある。天気が良ければきっと良い景色が見られるのだろうが…。

 龍舞崎入口バス停からミヤコーバスに乗り、気仙沼駅前の本日の宿に向かった。

Day23:龍舞崎入口→早馬神社

2022年4月30日(土)
 雨は夜更け過ぎに雪へと変わったらしく、遠くの山々は季節外れの雪にうっすらと白くなっている。幸い、朝には天気は回復したようで一安心だ。ミヤコーバスを龍舞崎入口バス停で下車し、本日の冒険をスタートする。龍舞崎からしばらくの間トレイル本線は遊歩道を歩くようになっているが、この道は通行止めとの情報を得ていたので、スルーして県道を歩いていく。まもなく、小田の浜という海水浴場のある砂浜が見えてくる。

 さらに進み、田中浜という砂浜に着く。ここは"おかえりモネ"のロケ地として使われていたそうで、多くの観光客が訪れていた。浜辺に廃船の置かれた景色が印象的だ。

 次に、トレイル本線から離れて少し寄り道をして、十八鳴浜(くぐなりはま)という浜に立ち寄る。ここは鳴き砂で有名なスポットで観光客の姿もまばらに見えるが、私が訪れた時はタイミングが悪かったのか砂は鳴らなかった。

 気を取り直してトレイル本線に戻ろう。いよいよ大島のハイライトである亀山に登る。標高234mの大島最高峰からは、天気にも恵まれて大島の海岸線が綺麗に見える。山頂の展望台には、昨晩積もった雪で作られた小さな雪だるまが残っていた。

 亀山を下山し、再び気仙沼大島大橋を渡り本土へ。ちょうど大島を発着する遊覧船が大橋をくぐろうとしているところが見えた。

 本土に渡った後、トレイルは旧唐桑町の舞根(もうね)という地区のひとけのない舗装路を進んでいく。

 唐桑半島の付け根にある、早馬神社という神社を今日のセクションの終わりとする。この神社は鎌倉幕府の御家人梶原景時にゆかりのある神社だそうだ。梶原景時といえば、源義経を讒訴で陥れたイメージが強く悪者に描かれがちだが、今年の大河ドラマ"鎌倉殿の13人"では意外な描かれ方をされていて印象的だった。

 神社を参拝した後、神社の一角に建っている、早馬神社出身の詩人梶原しげよの詩を展示した建物を見学した。この「ゆめ」という詩の「ゆめがあるから歩む」という一節が、みちのく潮風トレイルを八戸目指して歩むこの旅にも通じるものがあるような気がして、印象に残った。

 早馬神社から少し歩いたところに、キッチンひがしやまという定食屋さんがあったのでここで昼食とした。ちょうど土曜日のお昼時、テレビでは"鎌倉殿の13人"の再放送が流れていたが、偶然にもタイミングよく梶原景時が源義経に伴って平家討伐に向かって進撃する回が放送されていた。

 キッチンひがしやまの向かいにある唐桑総合支所バス停からミヤコーバスに乗り、帰路につく。
 余談。仙台や石巻を走る宮城交通のバスはSUICAに対応しているので気仙沼でもSUICAが使えるものと思い込んでいたのだが、気仙沼のミヤコーバス(宮城交通の子会社が運行している)は運賃は現金での支払いにしか対応していなかった。小銭の持ち合わせが無いので千円札を両替しようとすると、バスの両替機が故障していて両替することができない。困り果てていると、乗り合わせた親切なご婦人が両替してくれて事なきを得た。この旅で幾度も出会う地元の方のささやかな親切に、この先も感謝の気持ちを忘れないようにしたい。
 今回は2日間の合計で、約30kmを踏破する旅となった。次回は、唐桑半島に挑む。

 南側のセクションは↓

 北側のセクションは↓

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