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みちのく潮風トレイル冒険録10:石投山(女川駅→おがつ・たなこや)

 みちのく潮風トレイルのルートは、石巻市から女川町を越えたあと、再び石巻市に入る。こう書くと何だか分かりづらいが、平成の大合併で生まれた新石巻市に、女川町だけが参加せず単独の自治体として存続している(恐らく女川原発が立地していて財政に余裕があることが理由だろう)ことで、市町界が入り組んでいるからややこしいことになっているだけだ。わかりやすく合併前の旧市町名で表すと、トレイルは石巻市→女川町→旧雄勝町→旧河北町→旧北上町と進んでいく。合併前の市町村界を地図に示しておこう。

旧市町

 このうち、旧雄勝町周辺の区間(雄勝半島)が、セクションハイカーにとっては難所の一つとなっている。セクションの区切りになり得る箇所へのアクセスが石巻市の住民バスしかなく、このバスは平日しか運行されない上に本数が少ないため、セクションハイクの旅程が非常に立てづらいのだ。しかし難所であるということはそれだけ歩き甲斐のあるセクションでもあると言える。
 この日はまず、難所雄勝半島攻略の第一歩として、女川町から雄勝町の入口にかけての区間を歩くことにし、住民バスの時間に合わせて計画を立てた。

Day14:女川駅→おがつ・たなこや

 2021年11月8日(月)
 朝、この旅では3度目の女川駅に降り立つ。浜から移転してきた人たちの家だろうか、小ぎれいな家が立ち並ぶ高台の街を尻目に山に向かって進み、女川スタジアムの前を過ぎ、小さな沢を渡渉して石投山登山道に入る。

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 石投山登山道はMCT全線でも屈指の急坂と聞いていたので、大六天山で膝を痛めた教訓から今回はトレッキングポールを持参した。登り始めるとパラパラと雨がちらつき始め、レインコートを着込む。山頂までの登りは確かに急坂ではあったが、霧雨が立ち込めて視界が悪く、傾斜を気にする余裕もなく山頂へ。石投山は標高455m、金華山の山頂をわずかに超えこの旅での最高標高を更新した。天気が良ければ山頂からは海が綺麗に見えるはずだが、ガスがかかっていて何も見えなかった。

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 トレイルは、本来であれば石投山山頂から宮城県道192号に降りていくルートとなるが、この県道は2021年現在工事通行止めのため迂回路を通るよう指示されている。迂回路とはいえ、MapbookにもGPXデータにもルートは反映されていて、道標のリボンテープも沿線に整備されているので、それほど道に迷う心配をすることなく進んでいくことができる。女川町と石巻市(旧雄勝町)の境界をなす稜線を歩いていくと天候もやや回復し、海が見えるようになってきた。海の向こうに見える島は、女川町に属する離島、出島だろう。

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 迂回路が海岸に降り立つ地点は波板海岸といい、小さな海水浴場が整備されていてトイレもあり休憩ポイントとなっている。雄勝湾の向こうに、これから挑むことになる難所雄勝半島が不敵に横たわっているのが見える。

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 波板海岸からしばらく進むと、トレイル迂回路は国道398号を進んでいくようになる。この国道は道路を山側に移設する大規模な工事の真っ最中だった。大規模な工事が必要なほど交通量がある道路なのかどうかは、何とも言えない。
 雄勝湾の最奥部は震災前は雄勝町の中心市街地だった平地だが、今は工事車両が行き交うばかりで何もない空き地が広がっている。雄勝町では、かつての市街地のほとんどが災害危険区域に指定されて住宅を建てることができなくなった。かつて住宅があった場所の山側にいくつもの災害復興住宅が造成されたが、復興住宅への入居を選ばずに利便性の良い石巻市内などに移住した方も多く、雄勝町の人口は震災の前後で4分の1ほどに激減したという。

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 工事車両があげる土煙の中を進み、おがつ・たなこや(道の駅硯上の郷おがつ)に到着。ここはかさ上げして出来た雄勝町の新しい中心市街地に作られた観光物産交流施設で、道の駅にも指定されている。雄勝町の名産、硯を展示する施設もある。建物の中には海産物の直売所のほか、お食事処も入居しているので、ここで昼食とする。バスの時間まで余裕を持たせた行程としていたため時間が余り、おがつ・たなこや内のおしゃれなカフェ「ウズマキ眼鏡珈琲店」でカフェラテを頼み、読書をして過ごす。
 おがつ・たなこやから道の駅上品の郷までを結ぶ雄勝地区住民バスには、学校帰りの小学生達が何人か乗っていた。15:52発という住民バスの時刻は、小学生の下校時間に合わせた設定なのだろう。小学生達はみな、終点の道の駅上品の郷でバスを降り、保護者の車に迎えられていた。上品の郷は雄勝町ではなく旧河北町に属する。震災を機に河北町方面に居を移した雄勝町民の子どもが、故郷雄勝の学校に通うために住民バスを利用しているのだろうと推測した。上品の郷からは石巻あゆみ野駅行きのミヤコーバスに乗り継ぎ、仙石線に乗車して帰路に就いた。
 この日は、17.98kmの道のりを5時間53分で歩いた。

16.女川→雄勝

 南側のセクションは↓

 北側のセクションは↓


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