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ボンネットの開き方に見るサーブの思想

サーブ900という約30年前のクルマのボンネットの開き方をいまさら語っているのも変な話しですが、なぜコストを掛けて複雑なボンネットの開き方を選んだのか?の中に今は自動車メーカーとして名前が無くなってしまったサーブという自動車メーカーの良心を感じます。

サーブのクラシック900のボンネットは、通常とは逆で、運転席に近い側が前に向かって前進しつつフロントバンパーの側へ倒れるように開きます。しかもその逆アリゲーター式と呼ばれるボンネットはサブフレーム付きのリンケージを3つも噛ませて立体的に開きます。

ボンネットの開け方は次のとおり。

1.車内のレバーを引く

2.通常のボンネットの開き方同様ラジエターとの間に指を入れる隙間から補助フックを外す

3.ボンネットを前に引き出す

4.ボンネットを前に倒す

こんな動作で開きます。

開いた時の不自然さは、まるでガルウイングドアが開いた時にも近い異様なものがありますが、サーブ社がまさか見た目重視でこんな凝った機構を組み込むものでしょうか?

否、サーブがこの逆アリゲーター式ボンネットを選択した理由は、走行中に万一ボンネットを開くレバーを引いてしまったとしても風圧でボンネットが跳ね上がるように開かない機構を考えた結果なのだと考えます。

走行中にボンネットが開くなんてことあるか?!と思いますが、2015年にクラウン14万台が走行中にボンネットが開く恐れとしてリコールを届け出ている事例があるように、少なからず現代のクルマでも走行中にボンネットが開いてしまうリスクはあるのです。

逆アリゲーター式ボンネットを採用している車両は他のメーカーにもありますが、大抵は前側にヒンジがあるだけでわざわざリンケージにフレームを使って立体的にボンネットを前へ開く機構を持っている車両を私は知りませんでした。

実物写真がなかなか見つからずとある方のSAAB340Aフライトシミュレーターの画像を拝借いたしますが、このようにサーブの航空機のドアヒンジにそっくりの機構でした。

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上写真:ドアが開くとき外側へ避けている。 下写真:内側のヒンジの様子

(上記サイトより写真を拝借いたしました)

要するに、サーブはこのような複雑なドアの機構を航空機の設計で経験していたので、これをボンネットに応用すること、社内でこれを通すことが造作も無かったのだと想像します。

ボンネットを開く機構にこんなに多くのパーツを使うことなど一般人の感覚ですら、なんでそこまでコストを掛けてボンネットを避ける機構にする必要があるの?と思います。

しかし、サーブはやったのです。これによってボンネット開口部が通常と違って大きく取れ、さらに普通のクルマならば無駄なスペースとなるエンジンルーム外側のタイヤハウスの前にウインドウウォッシャー液タンクや、後ろ側にヒューズボックスなどを設置する場所を確保することも出来ました。

もちろん開口部が広ければメンテナンスの作業性は高まりますが、実際作業性が高いかと言えば、そもそも車高を低くするために45度寝かせたシリンダーケースなど必ずしも作業性が高いのか?と言えばそうでも無いハズです。

ついでに言うと、バッテリーが熱遮蔽板を付けているとは言え、エンジンルームの下方に設置しています。これは重量物をなるべく低い場所に設置したいという運動性能のためでしょう。ただ、エンジンルームの外側に設置してくれていればバッテリーの劣化や交換の手間を省けたのにとは思います。

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サーブ900が実現している世界はそのほかにもたくさんの配慮があります。次回以降また考察を続けたいと思います。


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