ハウス•オブ•ザ•ドラゴンEP1 行間メモ

2回目に見て、ここはこういう文脈がある場面かも!と気づいたことをメモしていきます。

エイマ「お前もすぐ子を産むことになる 女はこうして王土に仕えるの」→レイニラ「ドラゴンに乗って戦う方がいい」
•ゲースロを見た人には女王然としたデナーリスのイメージが強く残っているので、この世界に女王がいてもおかしくない感覚になっていると思う。しかしハウスオブザドラゴンの冒頭、レイニスが王になれなかったシーンは、その感覚を覆す。現実の中世と同様、この世界でも王家の女性に望まれる役割は婚姻と出産だった。レイニラはデナーリスを彷彿とさせるカリスマ性を持っているが、全てを失った無の中から支持者を増やして成り上がるデナーリスに対して、この時点でのレイニラは周囲に王になることを望まれず、そのカリスマ性を持て余しているように見える。レイニラは母エイマを愛しているが、母エイマはレイニラの才覚を見抜いておらず、一般に貴族の女性に求められる婚姻•出産をレイニラに求めている。また評議会中に酌取りをしている描写は、父ヴィセーリス王がレイニラに「女性」としての役割を求めていることの表れかもしれない。

デイモン「お前の母親が息子を産むまで世継ぎは俺だ」→レイニラ「弟の誕生を願うわ」→デイモン「贈り物だ」
•デイモンとレイニラは、共にどちらかというと即興で動くタイプで、その真価は平和な時代の王宮の中にはなく、王に真価を見出されていない。それもあってか、表面上は敵対的な会話にもかかわらず、二人は互いを認め合っていてどこか楽しそうに見える。肉食獣が仲間同士でじゃれているような印象だ。

(本を破ったレイニラへ)アリセント「司祭女が見たら…」→レイニラ「司祭女が何?」→アリセント「(笑いながら)レイニラ!」
•おそらくアリセントのほうが年上だが、王女であるレイニラが立場は上。普段はそのバランスの中で対等に話しているが、いざと言う時思い切り行動ができるのはやはり王女であるレイニラで、アリセントは決められたルールや、父の命に則って行動するしかないように見える。

ヴィセーリス「玉座で少し切っただけだ」
•玉座に傷付けられる=「王という立場によってダメージを受けている」というメタファー?少なくとも、ヴィセーリスは自分が王であることを上手く利用できているとは思えない。

ヴィセーリス「男の子だ 私には分かる こんなに確かなことはない 夢に見た」
•優柔不断気味に見えるヴィセーリスが、生まれてもいない男児の誕生を祝う槍試合を強行できる理由は「夢に見た」こと。自分の行動を自分で決める軸がない。

オットー「殿下(デイモン)が奥方にも情熱を注ぐとよいのですが 谷間にも神秘の石城にも近寄らない」
•いきなりデイモンに否定的な態度。元々仲が悪かった?

デイモン「谷間の男は女より羊とヤる(ここでヴィセーリスががっくりうなだれる)羊のほうが器量がいい」
•王妃エイマはアリン家で谷間出身のはずなのに、王がいる場で谷間の女性を貶める発言。それに対してヴィセーリスは怒るでも咎めるでもなく、ただうなだれる。ヴィセーリスに甘く、制御できていない様子がうかがえる。その後、デイモンがオットーを挑発し、オットーが怒って立ち上がった場面でも、デイモンを咎めずにオットーをなだめている。

(性交を途中で切り上げたデイモンに対し)ミサリア「あなたはデイモン•ターガリエン」
•攻撃的な振る舞いが多いデイモンだが、ミサリアには弱さを見せる。ゲースロのジョフリーのように芯から暴虐な人物ではなく、寂しさのようなものを抱えているように見える。

(デイモンが槍試合の対戦相手にサー•グウェイン•ハイタワーを指名。アリセントは爪を噛み、レイニラがそれをやめさせる)
•このシーンの時点では情報が出ていないが、アリセントはオットーの子で、おそらくグウェインは兄?王女の親友であり、貴族の中の貴族であるアリセントだが、特にこのようにストレスを感じている場面で爪を噛んでしまう癖がある。まだ若いのにルールや命令に縛られて生きている彼女は、心の底に反発心を秘めているのかもしれない。その後、グウェインが倒された際には息を飲み、父オットーと視線を交わしたものの、デイモンに草冠を渡す時には落ち着いた振る舞いを見せている。この場面から、基本的にはアリセントが強い自制心を持って行動していることがわかる。

(槍試合で殺し合う騎士たちを見て)レイニス「メイゴル王が崩御して70年よ 騎士たちは戦を知らない」
•おそらく見ている人へ時代背景を説明するためのセリフ。だがこのセリフを言う役回りを当てがわれるレイニスからは、少し離れた目線から現在のウェスタロスの状況を見る、冷静さと視野の広さが感じられる。武人らしい率直な発想•言動が目立つ、夫のコアリーズ公とは対象的だ。

(槍試合で殺し合う騎士たちを見て、嘔吐する従士風の少年。不安げな顔をしながら見つめるレイナ。自分の爪の周りを傷つけ血を滲ませるアリセント)
•少年が嘔吐しているところから、この時代は比較的平和で、人が殺し合う場面は頻繁に見られないことがうかがえる。しかしレイナはまだ幼いにもかかわらず、不安げな表情を浮かべるだけでさほど取り乱していない。より歳上で経験豊富なアリセントは、表情は冷静さを保っているものの、ストレスを感じている。

メイスター「〜子宮を切り子を取り出すのです しかし出血で…」→ヴィセーリス「バカを言うな…(エイマを見て少し考えたのち)子供は救えるのか?」
•「バカを言うな」と言いつつ、エイマを救う選択肢をほとんど検討していない。周囲の人が用意した選択肢のいずれかを選んでいく思考回路になっているように見える。デイモンが「小評議会の奴らに利用されてる」と批判する原因は、この思考回路にあるのではないか。

レイニラ「弟が生きたほんの数時間、父上は幸せだったのかしら」→デイモン「兄上にはお前が必要だ 今こそどんな時よりも」→レイニラ「私は娘でしかない」
•二人の感情が読み取りづらい会話。レイニラは息子にこだわる父王に複雑な思いはあれど、妻と息子を失った父王を気遣っている?デイモンは父王や亡くなった王妃•王子にさほど興味はないが、レイニラの感情に寄り添っている?

ヴィセーリス「弟は野心的だが王位は狙わない」(盗み聞きしているデイモン、笑みを浮かべる)
•初登場時に鉄の玉座に座っていたデイモンは、明らかに王位を狙っているが、ヴィセーリスはそれに気づいていない。評議会メンバーがデイモン以外の後継者を議論しようとする中で、妻と息子を失って感情的になっているヴィセーリスは議論を打ち切ってしまう。

オットー「陛下の元へ行け お慰めしろ」→アリセント「お部屋で?何て言ったらいいか(爪を噛む)」→オットー「それはやめろ 行けばお喜びになる」
•取り乱している王に対して、娘を近づけさせようとするオットー。アリセントはその意図を読み取っているようで、爪を噛んでしまう(ストレスを感じている?)。オットーは、貴族の女性らしからぬその行動を強く咎めはしないがやめさせる。オットーはアリセントにそれなりに愛情があるように見えるが、その反面政治上の道具として利用している。

アリセント「母が死んだ時 皆話を避けるようでした ただお悔やみを言ってほしかったのに お悔やみを 陛下」
•かなり上ずった声で、緊張しながら言っているものの、セリフの内容はかなり適切で、きちんと傷心の王に寄り添えている印象。王もその言葉を噛み締めているように見える。オットーの目論見は成功したのではないか。

ヴィセーリス「お前に味方したのは私だけだぞ ずっとお前をかばってきた なのに恩を仇で返すのか」→デイモン「俺をそばに置かず谷間や王都の守人に追い払ってきただろ 10年で一度も“王の手”になれと頼んでこない」
•兄弟のすれ違い。実際に王都の守人に就かせることを提案したのはオットー。ヴィセーリスはデイモンを厚遇していたつもりだったが、デイモンは追い払われていたと感じていた。この場面で感情をあらわにするデイモンのセリフには、野心と寂しさの両方が現れている。この二つが彼の核をなす要素なのではないか。

ヴィセーリス「エイマの長所を継いだな」
•これまでの短い描写の中だと、子を産む使命に忠実に生きたエイマと、時に思い切った行動をとるレイニラにはあまり共通点がないように見える。この「長所」が具体的に何かは分からないが、デイモンの性質を見誤ったヴィセーリスが、レイニラの性質を見誤っているという可能性も十分に考えられると思う。

ヴィセーリス「エイゴンの夢は“氷と炎の歌” エイゴンの時代から王より世継ぎに伝えている秘密だ 次の世継ぎに伝えて守るんだ」
•ゲースロの世界では、最後の正式な世継ぎはおそらくレイガーで、狂王エイリスとほぼ同時に死亡。ヴィセーリス(黄金の冠を被ったほう)もまだ幼かったはずで、この言い伝えはデナーリスまで届いていない。気になるのは約170年の間のどの時点で言い伝えが途絶えたかで、レイニラが途絶えさせた可能性も十分にある。ゲースロを見た人へのちょっとしたサービスにすぎないような気もするが、興味は尽きない。

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