ゲーム•オブ•スローンズ シーズン2EP1「王の乱立」 行間メモ

[2:18]
(ハウンド、一対一の試合で勝利し、相手を武器で殴って城壁の上から落とす)
ジョフリー「実に見事 さすが“猟犬”(ハウンド)だ どうだ?」
サンサ「実に見事でした」
ジョフリー「それは私が言った」
サンサ「はい 陛下」(ジョフリーから目を逸らす)
(ジョフリー、あからさまに不満な顔をする)
•シーズン1の終盤でハウンドから「ジョフリーの言うことに従っておけ」と言われたサンサ。自分の立場を理解したためか、表向きはジョフリーに従おうとしている。とはいえ、自分の感情を殺してジョフリーを手玉に取れるような手腕はなく、ジョフリーへの不快感も垣間見えている。

[5:40]
ティリオン(サンサに向かって)「ご愁傷さまです」
ジョフリー「何がだ 彼女の父親は謀反人だぞ」
ティリオン「でも父親だ 自分も亡くしたろ 察してやれ」
•ジョフリーは暴君の部類に入るが、ティリオンはまったく恐れていない。それはいくら権力を持っていても思考のレベルが違いすぎるからだと思う。
•2回目に見ると、この後父タイウィンを殺すことになるティリオンが、「自分も亡くしたろ 察してやれ」とジョフリーに言うのが面白い。父タイウィンに冷遇され決していい感情を持ってないティリオンだが、常識があり父エダードを亡くしたサンサの気持ちにきっちり寄り添う言動ができる。対してジョフリーは、つい先日父ロバートを亡くしたばかりなのに、同じく父を亡くしたサンサの気持ちに寄り添う言動ができない。ここでは心からサンサの気持ちに寄り添っているかどうかよりも、サンサの気持ちに寄り添う素振りを見せられるかが重要だと思う。やはりティリオンとジョフリーでは人としての器の大きさが全く違う。

[28:41]
書記「“我が親愛なる兄ロバートに…」
スタニス「“親愛なる”は違う 互いに愛情はなかった」
ダヴォス「ただの敬称です」
スタニス「嘘だ 削除しろ」
書記「“正嫡の子はおらず 男子ジョフリーとトメン 女子ミアセラは サーセイとジェイミーの不義の子なり」
スタニス「“王殺し”(キングスレイヤー)ジェイミー•ラニスターだ」
書記「“王殺し ジェイミー•ラニスター バラシオン家正嫡の私は…」
スタニス「“サー”も付けねばな 騎士には違いない」 
•今話で初登場のスタニス。このやりとりにスタニスらしさがとてもよく出ていると思う。あえて言語化するなら、正解が好きすぎる人物。世の中には正解がない問題が多いし、仮に正解があったとしてもその正解にこだわりすぎると損をすることも多い。スタニスは正解かどうか曖昧なものも正解としてとらえ、それにこだわって損をするタイプだと思う。
•そんなスタニスが、人生に正解を与えてくれる宗教にハマって損をするのがとてもリアル。
•スタニスは正解が好きだけど保守的なわけではなくて、例えばこの会話だと「親愛なる」という伝統的な挨拶をないがしろにしているし、先祖が信じた七神正教も捨てている。おそらく、自分の判断力に自信があるんだと思う。ある意味正解と言えるものを正解として信じ選択することを繰り返して、自分が正解を選び続けているような感覚に浸ってしまっているように見える。

[29:54]
ダヴォス「味方は多い タイレル公にターリー公」
メリサンドル「諸侯の助けは不要です 光の王がついています」
ダヴォス「光の王は船を用意できるか」
•ダヴォスは現実的かつやや生真面目で、恩があるスタニスに仕えている。優秀だが、正解が好きなスタニスに「光の王」という正解を与えているメリサンドルに対抗できず、スタニスに意見を聞き入れてもらえない。
•メリサンドルは見事にスタニスに取り入っている。現代の目線から見るといかにも怪しげな人物だけど、実際に現実離れした術が使えるので、スタニスが取り入られて盲信してしまうのも無理はないとも思う。

[37:59]
サーセイ「そんな少年の話を聞いたことがあるわ ある名家に入り込んだ 長女に恋したけど 彼女には他に相手がいた」
ピーター「少年と少女が共に育てば問題は起こる 兄弟姉妹にも男女の感情は生じるとか それが世間に知れたら やはり問題と言うべきでしょう 特に名家であれば 名家の方が忘れがちな真実を私は知ってます」
サーセイ「何かしら」
ピーター「知識が力ということです」
サーセイ「捕まえて」
(サーセイの衛兵、ピーターを捕らえる)
サーセイ「喉を切って 待って やめて やっぱり離して 3歩下がって 後ろを向いて目を閉じなさい」
(衛兵、一旦ピーターの喉に刃をあてるが、解放する)
サーセイ「力となるのは“力”よ しばらくお金と娼婦は忘れてスタークの娘を探して 見つけたら感謝するわ」
•ピーターはもう少し賢く立ち回れなかったのか。確かにサーセイよりもピーターのほうが策謀に長けているかもしれないが、サーセイは今回のように常識破りの振る舞いができる権力を持っている。煽り合いを挑むのは賢くない。ピーターは知識という力を持っている自負があり、だからこそ驕っているように見える。
•逆にサーセイはピーターほど賢くないが、権力を振るうのに慣れている。裏目に出ることもあるけど、躊躇なく権力を振るえるのは彼女の強みでもあると思う。「Power is power」という言葉には彼女のあり方がよく現れている。また「見つけたら感謝するわ」とも言っていて、取引する気がないストロングスタイルで勝負している。

[41:34]
シオン「本当に倒すのなら王都を落とさないと それには船が必要だ 俺の父は船を持ってる」
ロブ「かつて父と戦った」
シオン「ロバート王とだ 南の支配に抵抗した 今のお前と同じだ もう息子は俺だけ 俺が話せば聞いてくれる 俺はスタークじゃない だが お前の父上に育てられた 一緒に敵を討とう」
•聞いていて悲しくなる言葉。この時シオンはシオンなりに、本気でスターク家に貢献しようとしていたのだろう。でもその感情の根源は、自分が良いことをしていると思いたい、存在証明をしたいという欲望だったのではないか。その欲望に気を取られて、父ベイロンが本当に船を提供してくれるのか深く考えられていない。そして、父ベイロンからスタークを裏切るよう命令されると裏切ってしまう。シオンにとって、スターク家を裏切ったとしてもグレイジョイ家の一員として存在証明ができればそれでよかったんだと思う。その存在証明に気を取られて、本当はシオンが大切にしたかった、スターク家との絆を自ら壊してしまう。自分の存在に対してコンプレックスがあると、それを埋めるために自分のためにならない行動を取ってしまうという事実を、シオンは僕たちに教えてくれている。

[43:41]
ロブ「母上は明日 南へ出発してください」
キャトリン「なぜ私が…」
ロブ「レンリーとの交渉です」
•なぜロブはスタニスではなくレンリーと交渉しようとしたのか疑問が残る

[45:48]
サーセイ「彼女(アリア)の捜索に軍を送らないと 大軍をね あなたがお祖父様に頼めば…」
ジョフリー「王は頼まない 命じるんです」
[46:48]
ジョフリー「父上は他の女を孕ませたのでは?何人 落とし子を…」
(サーセイ、ジョフリーにビンタする。ジョフリー、周りの人間が見ていないかを気にする)
ジョフリー「今のは 死罪に値します 二度とやるな 許さない」
•王になる者としての振る舞いを母サーセイから求められて育ったジョフリー。それはありのままの自分を母親に受け止めてもらえないということでもある。だから彼は王という偶像に依存して、王になりきることでしか生きられない。母にビンタされた時、彼が最も気にしたのは、周りの人たちからどう見られるかだった。そして彼が王としての偶像に固執したことで、最も期待に応えたい相手だったはずの母サーセイとの間に亀裂が入っている。
•サーセイはサーセイで、意外にもロバート王の王妃としてのプライドが高く、ロバートに多くの落とし子がいることを指摘され激昂してしまった。愛情があったはずの母子が、互いの立場に固執して仲違いしていると思うと悲しい。

[全体の感想]
•自分の判断を過信するスタニス、驕るピーター、浮き足立つシオン、立場に固執するジョフリー。彼らを見ていると落ち着いて冷静に生きていくことの難しさを突きつけられる。人は自分が正しいと思わなければ生きていけないのだろうか…

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